お知らせ

本学の学費についての考え方

  • 2020年05月15日
お知らせ

法政大学の学生の皆さん、並びに保護者の皆様へ

本学の学費についての考え方

法政大学総長
田中 優子

今回のコロナウイルス感染症の拡大、緊急事態宣言の長期化は、学生の皆さん、保護者の皆様の日々の生活にもさまざまな形で影響を及ぼしていることと思います。不安や困難を抱えながら授業に参加している学生が多くいることも承知しております。
4月以来のキャンパス入構制限が長期化し、キャンパスにおいて学生と教職員が集い、語らい、学び合う機会を設けられずにいること、そしてアルバイト減などの経済的打撃があることに、教職員一同、たいへん心をいためております。
現在、こうした状況も背景として、学費の減額および返還を求める声が、学生の皆さんの一部から挙がっています。そこで、本学の学費について、そして学生支援について、本学の考え方ならびに取り組んできましたことについてお伝えいたします。

本学は、このコロナウイルス感染症の影響で、大学での学びをあきらめ退学せざるを得ない学生を、決して生み出さないこと、すなわち学びを継続し卒業を延ばさない、2020年度を「失われた学年」にしないことを最優先にしたい、と考えております。

本学でまずおこなったことは、学部・大学院における学費の延納制度をお知らせすることと、個々の事情に合わせて使うことのできる多様な支援の発足でした。通信環境の整わない学部生・大学院生への機材(Wi-Fiルーター、パソコン)の無償貸与や通信環境整備費用の補助、家計急変学生奨学金(給付型)の強化、緊急支援奨学金(給付型)の新設、学内雇用の拡大、緊急対策奨学基金の新設、これらの取り組みについて、4月24日にお知らせし、5月1日に具体的実施方法を示しました。その一部は申し込みがはじまっています。これからも、このコロナウイルス感染症の影響で退学せざるを得ない学生を生み出さないよう、学生やご家族の状況推移を見きわめながら、必要な支援をおこなっていきます。

また、本学ではこれまで使用してきた授業支援システム(Learning Management System)をリニューアルし、今春から新たに「学習支援システム」として利用開始すべく準備を進めておりましたので、これを用いて可能な限り早く授業を始める方針で、オンライン授業の試行も含め4月21日というかなり早い時期に授業を開始しました。
その開始に向けては、学生の皆さん全員が支障なくシステムに同時アクセスもできるよう、大学サーバーの緊急増強を大がかりにおこないました。同時に、本学では「学習支援システム」を補完する機能として、以前からG suite for educationを機関として導入していましたが、それに加え、より充実した双方向型オンライン授業のツールとして、複数のシステム(Zoom,Webex)を緊急に機関として導入し、この連休明けから学生・教職員ともに利用開始しました。
これらの情報システムは(その一部にまだ構築途上のものもありますが)、学生の皆さんが教育を“受ける”ためだけのものではなく、皆さん自身がコミュニケーションの主体としてこれらの道具を活用し、現在の環境の下で難しくなっている課外活動も含めて、学生生活全般を新たな手段で実現できる条件を提供するものでもあります。

さらに、本学ではすでに図書館の年間予算の約三分の一がデジタルの書籍、雑誌、データベースの充実にあてられており、図書館はインターネットを介して調べ物や文献調査ができ、かなりの本を読むことができるようになっていますので、そのことも新入生、在学生それぞれに向けて周知しました。この大きな制限下で、できることを示し、学生と教職員が可能なことを共有・推進していくことが、何よりも大切だと考えています。

感染拡大の防止が社会全体として最優先の要件となるなかで、全ての授業をオンライン授業に切り替えていくことになりましたが、本学ではこれまでかなり長期にわたってオンライン・オンデマンド教育についての準備・試行を始めておりました。なぜなら、大教室授業等をそちらに移行することにより少人数教育を充実させ、オンデマンドで受講した内容を議論で深める(反転授業)など、オンライン・オンデマンド化が、今後の教育に果たす役割は多大だからです。オンライン・オンデマンド授業が対面授業、とりわけ大教室授業に劣るとは考えておりません。むしろ個々の学生が課題に応じて複数回のレポート等を蓄積していく方法は、学生・教員双方にとって、今後のより充実した授業方法に向かう、重要な体験になると考えております。

以上のことをふまえ、本学の学費についての考え方をお伝えいたします。

大学は学費を半年ごとに納めることになっていますが、現在の大学制度は、学部は4年間かけて124単位以上を履修し、学士号を取得する制度です。修士号は2年、博士号は3年で学位を取得できるよう、制度設計されております。いま最も影響を受けている実験・実習授業についても、一時的中断はあっても在学期間全体で実施していくものと位置づけており、なにより大切なのは、学生が在学期間を通して学び、卒業・修了することであると考えております。学費は、その期間全体の費用(総額)を学期数で等分して納めていただいているものです。また学位の信頼性を保持し、さらにそれを高め、卒業生が生涯にわたって社会的信頼を得られる大学であるための費用であり、その中には、一時的に入構・入館はできなくても図書館の図書・資料を購入し続けることや、施設設備の更新を継続することも含まれています。一科目あるいは一日きざみで割ることができる仕組みではありません。

大学は長い期間にわたって、広く世界や社会と連携しながら、その時代の先端の教育、研究を進めるために、強固な基盤を築いていく必要があります。入学した学生たちも、卒業していく学生たちも、大学が長期にわたって築いてきた基盤の恩恵を受けて学び、卒業していきます。学費は、そうした長い期間を見据えた考え方で納めていただき、大学の将来にわたる基盤を築いていくものでもあります。数多の卒業生たちがもたらしてくれた蓄積に支えられて、新型コロナの時期に遭遇した学生たちが、その経験を活かして学び、この時期ならではの成果を生み出していけるよう、本学は全力を尽くします。
どうか学生の皆さんも、ご自身の在学期間全体を見渡し、また卒業後の歩みを考え、この不自由な時間を未来に向けての有意義な時間に変えていくために、教職員とともに試行し探求してくださるよう、お願いいたします。

以上