総長メッセージ

東日本大震災から9年目を迎えて

2020年03月11日

総長メッセージ

2011年3月11日の東日本大震災から9年がたちました。ご家族を亡くした方々、現在もなお避難や不自由な生活を余儀なくされている方々に、あらためて、心よりお見舞い申し上げます。

昨年2019年10月には、台風19号により全授業を休校し、大学の施設を閉鎖せざるを得ない、という出来事がありました。大きな被害を受けられた学生と保護者の皆さんにも、お見舞い申し上げます。本学は引き続き震災への対応とともに、気象災害への対応にも気を緩めず、また被害を受けた学生が学修を継続できるよう、支援していきます。

また現在は、新型コロナウイルスの感染拡大に収束の見込みが立たず、大学は危機対策本部を立ち上げ、その都度の対応を決めております。やむなく2019年度学位授与式と2020年度入学式を中止といたしました。この経緯のなかで、やはり学位授与式・入学式ができなかった2011年を思い返し、再び深く心に刻むこととなりました。

東日本大震災の時に起きた残念な出来事もまた、今の私たちへの大切な教訓です。原子力発電所事故による放射能から避難したご家族や子供たちに対し、差別的な言葉が向けられることもあり、その傷はいまなお続く不自由な生活とともに、過去になっていない場合もあることでしょう。今、新型コロナウイルスに対応した医師や看護師らが職場内外で不当な扱いを受け、その子供たちが差別にさらされています。また日本では中国人の、欧米では日本人を含む東洋人全体の排除と差別が広がっています。

差別は突然起こるものではありません。法政大学はダイバーシティ宣言をしました。学生、教職員には、日ごろから自分の中の差別感を意識化し、他者への配慮に満ちた言動を心がけて欲しいと思います。世界はもはやひとつの社会として動いています。力を合わせるほか、生きる道はありません。差別と排除はその道を塞ぎ、世界を壊すものです。東日本大震災の記憶を胸にいだき、本学のダイバーシティ宣言にあるように「多様な価値観を有する市民が助け合い、互いの望む幸福を実現できる社会の構築に向けて」行動していきましょう。

法政大学総長 田中優子