HOME > 法政大学について > 法政大学の歴史 > HOSEI MUSEUM > 2011年度 > Vol.42 法政大学多摩キャンパス図書館所蔵 カント研究叢書「Aetas Kantiana」


Vol.42 法政大学多摩キャンパス図書館所蔵 カント研究叢書「Aetas Kantiana」

2012年03月22日

カント研究叢書「Aetas Kantiana」

Vol.42 法政大学多摩キャンパス図書館所蔵 カント研究叢書「Aetas Kantiana」

Vol.42 法政大学多摩キャンパス図書館所蔵 カント研究叢書「Aetas Kantiana」

近代において最も影響力の大きい哲学者の1人であるイマヌエル・カント(1724~1804)。
本学では、1960年代にベルギーのブリュッセルの出版社から刊行され、久しく入手不可能となっていたカント研究叢書「Aetas Kantiana」の復刻版、全264点を所蔵しています。
この叢書は、カントが最も精力的に著作活動を行っていた1790年代を中心に、当時の知識人が発表したカント関連の著作を集めたものです。一般的には、カントの学徒である哲学者フィヒテや新カント派が知られていますが、これまであまり光のあたらなかった同時代のカント信奉者やその周辺の哲学者、反対派を取り上げています。

有名なところではドイツのユダヤ人哲学者で、文通によりカントと交流を深めていたメンデルスゾーンの著作がある。あまり知られていない当時の知識人、ベルク、ハイデンライヒなどの珍しい著作も収蔵

有名なところではドイツのユダヤ人哲学者で、文通によりカントと交流を深めていたメンデルスゾーンの著作がある。あまり知られていない当時の知識人、ベルク、ハイデンライヒなどの珍しい著作も収蔵

アダム・スミス『国富論』のドイツ語訳者として知られる哲学者のガルヴェ、同じくスミス経済学をドイツに導入しようと尽力したヤーコプ、フィヒテと論争したシュミート、カントの弟子で晩年には反対派となったヘルダー、ポーランド・ユダヤ哲学者のマイモン、近年再評価されドイツ哲学の巨人と称されるニコライなど著者は50~60人。宗教、政治、哲学、経済、国際関係とジャンルも多岐にわたります。カントの思想が当時の社会でどのように受け止められていたのかを包括的に知ることができる資料です。
著者らの立場は経験論哲学などに基づくモラルセンスを重視する者と、合理主義的な理性を重視する者の大きく二派に分けられます。カントが打ち出した個人のモラルセンスに依拠した世界市民社会という理念は非常に革新的なものでしたが、18世紀プロイセン(ドイツ)の絶対王政下では政治的に危険な思想でもありました。民衆側の立場から熱狂的に称賛する記述がある一方で、激しい反対論や、国家の検閲を意識して反対を唱えるような内容も見受けられます。

ドイツの詩人ハイネは「フランス人が政治の世界で成し遂げたことを、カントは精神世界で成し遂げた」と評しました。1789年にはヨーロッパ全土に影響を及ぼしたフランス革命が起こっています。カントが大きな衝撃を受け、その推移を見守っていたことは間違いありません。民衆が自由を求め、世界が大きく変化していく、そうした状況と同時進行でさまざまな主張が展開されていることも興味深い点です。
少し視点を変えると、混沌とした世界情勢の中で目指すべき政治体制とそれを支える思想哲学についてどんな考え方があるのか、という現代にも通じるテーマが見えてきます。

(右)カントと交流のあったことでも知られる哲学者クリスチャン・ガルヴェの著作。中段に著者名、下部に出版された年、1798が入っている。(左)18世紀に出版された原本を複写し製作された文字通りの復刻版。書体やレイアウトなども当時と同じである

(右)カントと交流のあったことでも知られる哲学者クリスチャン・ガルヴェの著作。中段に著者名、下部に出版された年、1798が入っている。(左)18世紀に出版された原本を複写し製作された文字通りの復刻版。書体やレイアウトなども当時と同じである