男女共同参画ニューズレター

男女共同参画ニューズレター vol.5-2

男女共同参画ニューズレター

東京大学では2022年度から、女性リーダー育成に向けた施策「UTokyo男女協働改革 #WeChange」に取り組まれています。(文部科学省科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(女性リーダー育成型)」の採択事業)

本チームでは、この取組推進役である、林香里 東京大学理事・副学長をお招きし、取組の背景や問題意識、具体的内容や課題についてお話いただく機会を、2023年11月22日に設けました。当日は40名が参加し、中央大学、関西大学の関係者も参加されました。以下は講演会における林先生のお話の概要です。

東京大学「UTokyo 男女協働改革 #WeChange」の取組

林 香里 東京大学理事・副学長

「UTokyo男女協働改革 #WeChange」の始動

藤井輝夫現総長は、「多様性と包摂性」を大学の理念として打ち出し、現在、役員13名中、女性は5名(理事では10名中女性4名)いる。これは東京大学にとって画期的なことであった。他方で、女性教員の占める割合はいまだ15.2%で、女性学生の比率も学部・大学院合わせて全体で24.6%であり(いずれも2023年5月段階)、課題は多い。

東京大学は、2022年に「ダイバーシティ&インクルージョン宣言」を発出し、「UTokyo 男女協働改革 #WeChange」を始動した。約4万人の大学での意見とりまとめは容易ではなかったが、「パブリック・コメント」を集め、「対話集会」を重ねて1年以上かけて策定、決定した。結果的に、宣言を皆で共有することができてよかったと思う。

宣言発出時に開催したシンポジウムでは、こうした事業ではこれまであまり登場することがなかった財務担当理事等も参加し、全学挙げての取組であることを強調した。

動画URL https://youtu.be/y5Bvt7CyVtk

また東京大学は「30% Club Japan」(取締役会を含む企業の重要意思決定機関に占める女性割合の向上を目的とした取組)にも参加し、大学ワーキンググループのチェアを務めている。他大学と協力しながら上場企業と協働した産学協働の取組を実施している。

30% Club Japan https://30percentclub.org/ja/

 

「UTokyo男女協働改革 #WeChange」が掲げる3つの目的

目標Ⅰ 男女協働改革への基盤整備―マジョリティ側の意識改革― 

ジェンダー平等は、マジョリティ側の意識改革なしには進まない。学生に対してはジェンダー・ジャスティス啓発の取組(関連科目の授業の新設等)を行っている。また、教職員には、2023年度から全教職員必修のジェンダー・エクイティ研修を開始。受講率が低い部局には働きかけも行う。また「無意識のバイアス」確認シートを作成、全部局に配布し、人事選考時の利用を呼びかけている。さらに役員、部局長、事務長といった幹部に全員必修で研修を実施した。

目標Ⅱ 院生からシニアまでのシームレスな女性研究者のキャリアアップ

ジュニアからシニアまで、様々な女性研究者への支援プログラムを策定した。要件を満たした論文投稿者への研究費支援、研究チームリーダーの育成、意思決定の場における女性増加を目的にした女性教員向けの「幹部養成」研修も試行的に実施した。

目標Ⅲ 女性教員の加速的増加

女性教員の増加には、部局の意識が重要となる。そのため、本部では、部局に対して様々な支援を行っている。たとえば、女性教授、准教授を採用した部局に一定期間の人件費支援をする、あるいは女性教員の増加が著しい部局には更なる加速を期待し、若手女性教員の人件費を一定期間支援するなどの施策を講じている。

また各部局ごとに「女性人事加速5カ年計画」を策定してもらい、その進捗状況報告、情報や課題共有を目的に、定期的に意見交換会も行っている。特に、採用が難航している部局には、副学長3名で部局の執行部を訪問して意見交換も行っている。

数値としては、女性の教授・准教授増加率を過去10年の2倍とし、2027年度末までに女性教員比率を25%に引き上げるのが目標だ。

 

学内の反応

応援の声は驚くほどある。これは大学のガバナンス、経営にかかわる全学的課題だという意識が徐々に醸成されつつあり、執行部も団結するようになってきた。藤井総長が取組を強力に推進している姿勢も大きい。

他方でわずかだが、逆差別ではないか?といった声もあり、それには丁寧に応えることが大切。また、新規で採用された女性研究者の側には、自分は女性だから採用されたというコンプレックス(インポスター症候群)を抱く場合もあり、ここも執行部がしっかりと説明、応援することも大切。部局や研究分野により事情が異なることや、アンコンシャスバイアスの存在など、これからの課題は当然まだまだある。

 

なぜダイバーシティがよいか。

自分は、ダイバーシティの尊重をすることによって、こんな良さが生まれると考えている。

・透明化:まわりに常に説明を必要とする他者がおり、決定過程が透明化される

・想像/創造力:異なる人による異なる発想が生まれる

・安全安心:だれもが働きやすい職場をつくり、仕事のパフォーマンスが上がる

・活性化:ダイバーシティは楽しい!