男女共同参画ニューズレター

男女共同参画ニューズレター vol.3-2

男女共同参画ニューズレター

米国の州立大学に見る理工系女子学生のリクルートシステム

山下 明泰(生命科学部 教授)

 

わが国の大学の理系学部では、一部の学科を除いて専門教員も学生も女性比率が低いことは周知のとおりです。本学の理系4学部も例外ではなく、女性比率の改善には大きな決断が必要です。実は、女性の社会進出先進国の米国においても20年ほど前までは、同様な状況でした。本稿では米国の州立大学における理工系女子学生のリクルートの実例を概観し、本学が進むべき方策を考えてみたいと思います。

トリシア・ベリーさんはテキサス大学オースティン校のWomen in STEM(科学、技術、工学、数学の頭文字)のエグゼクティブ ディレクターとしてご活躍です。トリシアさんは同大工学部化学工学科の卒業生であり、総合化学メーカで技術者として活躍された後、母校の女子学生比率を改善するために、2000年に現職に就任されました。今回、本誌に寄稿をお願いしましたが、ここではその一部をご紹介します。トリシアさんが就任当時の同大工学部の女子学生比率は15%程度でしたが、7年後には当時の目標であった25%を達成し、現在では40%近い数値を記録しています。

 日本の1.8倍の面積を持つテキサス州全域から優秀な女子高生をリクルートする仕事は幅広く、高校訪問はもちろん、大学や州政府と掛け合って女子学生のための奨学金制度を作り、就職先企業との太いパイプを確保するなど、大変多忙です。そんなトリシアさんに、「STEM教育におけるジェンダーギャップを埋めるコツ」を伺ったところ、「高校訪問や学内、州政府との間では交渉力、計画を実行に移すには資金力」と当然の回答が返ってきましたが、これと並んで「自信に満ちたSTEMリーダーのコミュニティを作ること」を挙げられました。単に在学中の女性優遇措置ではなく、彼女たちが社会人として自信をもって活躍できるように、卒後ケアにも腐心することが、女子学生のリクルートを成功に導くには、当面必須のようです。

 「積極的優遇措置」はいわれて久しいですが、わが国では「逆差別」のそしりを受けて、うまく機能していないようです。「異次元」の構造改革は、ここでも必要に迫られているのかもしれません。