男女共同参画ニューズレター

男女共同参画ニューズレター vol.2

男女共同参画ニューズレター
 

性暴力のない大学を

佐伯 英子(人間環境学部 准教授)

 

 大学生活は高校よりも自由度が高く、ネットワークが広がり飲酒を含む交流の場も増えます。また先輩と後輩、教員と学生といった上下関係が存在する中で、大学や関連するコミュニティは性暴力の起こりやすい場ともなり得ます。実際にアメリカの疾病対策予防センター(CDC)は性暴力を公衆衛生の問題として捉え、特に大学生にとってリスクが大きいと述べており、イギリスの国家統計局も大学生はそれ以外の人々と比べて性暴力に遭う可能性が3倍であるというデータを発表しています。

 近年日本でも性暴力が社会問題として顕在化してきましたが、大学における性暴力防止についての議論はまだ進んでいません。学生による性暴力事件がスキャンダラスに報道されることはありますが、社会的な問題としては認知されておらず、研究も進んでいない現状があります。しかし、日本の大学生を対象とした調査でも、性暴力は存在すること、特に先輩から後輩へのケースが多く、サークル等の飲み会では飲酒と性行為の強要が起こりやすいことが指摘されています。また、被害者は圧倒的に女性が多い一方、2020年度の男女共同参画白書では男性被害者の23.5%が、「通っていた、もしくは通っている大学や学校の関係者」が加害者であったと答えたことからも、教育の場が性暴力の温床となり、その中で男性も被害者になり得ることが分かります。

 大学における性暴力には、暴力そのものの問題に加え、被害者が加害者を避けようとする中で授業等に出席できなくなり、休学や退学となる等、教育機会の喪失に繋がるという側面もあります。また、指導教員や共通の研究室の学生が加害者であった場合は学内での相談が困難になること、相談された教職員の理解が足りない場合は二次被害に繋がる危険もあります。

 性暴力の深刻さや性的同意の重要性は社会的にも認知されてきましたが、日本では多くの学校で包括的性教育が行われておらず、多くの若者が性に関する経験に必要な知識を持たないまま大学生になります。大学を性暴力のない誰にとっても安心して学ぶことのできる安全な場にするために、どのような取り組みが必要なのか真剣に検討する時が来ています。