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新卒で地方銀行に入行し、25年にわたり勤務。本部および営業店のマネージャーも務めましたが、キャリアとしては経営企画をはじめとする企画畑が長く、新規事業や業務改善といった大掛かりなプロジェクトも経験しました。管理職やプロジェクトマネージャーなどの立場で部下と関わるうち、最終的に組織の活力をもたらし事業を成長させる原動力は「人」であることを実感しました。次第に後進の育成といった、人の成長を支援することに注力するようになり、取り組んできました。
転職を機に上京し、その後、かねてより考えていたキャリアコンサルタントの国家資格の取得を決意し、4年ほど前に取得しました。翌年にはキャリアコンサルティング2級技能士の資格を取得し、キャリアコンサルタントとして活動を本格的に開始しました。
同時期にキャリアコンサルタントとしてより高度な専門職を目指し、法政大学大学院のキャリアデザイン学研究科に、まずは科目等履修生として通い始めました。その中では、ビジネスキャリアに関する科目を履修するとともに、調査・分析手法など、研究方法についても理解を深めました。翌年から修士課程に入学しています。
法政大学のキャリアデザイン学研究科は、キャリアに関することについて体系的に学び、研究ができる国内で数少ない機関です。恵まれた環境の中でキャリアに関する知見を深めるとともに、研究を通して客観的根拠や判断能力、論理的思考力を高めたいと考えたことが、本研究科を志望した理由です。授業や研究の場などで、バックグラウンドの異なる他業種の方々と議論を重ね、共に研鑽する時間はとても刺激的で、「そういう視点もあるのか」など、新たな発見をもたらしてくれました。また、キャリアデザイン学の講義は全て興味深いものですが、さらに、法政大学では他研究科の科目の履修もできるので、自身の研究についてフィールドを広げることができるのも魅力の1つです。
修士論文の研究テーマは「地方における中高年齢者のキャリア選択に関わる要因について」です。社会環境の変化に伴いキャリアが長期化する中で、「地方」と「ミドルシニア」のキャリアについて問題意識を持ち、地方で働く50代を対象としてキャリア形成について調査・分析をしました。今回の研究で見えてきたのは、地方でのキャリアには、初期段階から家族との関係性や地域社会との関わりなどの影響が大きく、その後のキャリア形成においてもポイントとなっていること。したがって、ワークキャリアとライフキャリアの統合とバランスが重要であるということです。また、この研究について日本キャリア・カウンセリング学会で発表する機会をいただいたことは貴重な経験となりました。地方は高齢化や人口減少、人出不足など、日本が直面する課題が中央よりも深刻化しており、働く人々の環境は厳しいものとなっているため、今後も本研究をライフワークとして続け、実践の場に生かしていきたいと考えています。
キャリアコンサルタントとしては現在、大学生の就職支援から、社会人のジョブチェンジやキャリアアップに向けたリカレント教育の支援まで幅広く行っています。やりがいはやはり、支援を通して人々のキャリア形成に関われることです。これまでの中で印象に残っているのは、就職活動を進めることができず悩んでいた大学生の支援です。同級生など周りは順調に就職活動をしている中で、頭では分かっているつもりでも、なかなか一歩を踏み出せない状況でした。このような人は決して珍しいわけではありません。まずは相談者の話を聞き、考えていることを整理し、その上で進め方などを丁寧に伝えました。その後、見違えるように明るい声で「動き出すことができました!」と報告を受けた時は本当に嬉しかったですね。学生に限らず人は十人十色です。画一的な支援ではなく一人一人の状況や考えに応じたやり方を模索しながら誠実に向き合っています。
今後は、さらに研鑽を積み、大学院で学んだことや研究で得られた知見をキャリア支援の実践の場に生かしていきたいと考えています。特に、地方で働く人々の支援を通じて、地方の活性化の一端を担っていくことを目標と考えています。これらのことを実現するためにも、企業はもとより、法政大学をはじめとする教育機関や行政機関などとも密に連携しながら、さまざまな課題の解決に全力に取り組んでいきます。
(初出:『大学院入学案内2025』)
法政大学 大学院事務部大学院課
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