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【大学院生インタビュー】光の散乱をシミュレートしてリアルなCGを(情報科学研究科 博士後期課程修了生 中本啓子さん)

  • 2024年06月06日
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大学院で先端的な研究を堪能 全ての先生が私の恩師です

専門分野を知るプロジェクトで研究テーマに出会う

物心付く頃から家族共用のパソコンがある家庭環境で育ちました。小学校低学年の頃にはパソコンゲームで自在に遊び、高校では文化祭のクラス展示で広報を務めた時に宣伝用のホームページを作成。今振り返ると高校時代に初めてプログラミングの楽しさを知ったように思います。もともと大学は理系を志望していましたが、CGの綺麗な画像を見るのが好きだったことから情報系に絞り、法政大学の情報科学部ディジタルメディア学科に進学しました。決め手は学生1人に1台のパソコンが与えられ、そのスペックがかなり高かったからです。

学部から大学院の博士後期課程まで、一貫してCG技術の研究に取り組んでいます。きっかけは「情報科学プロジェクト」です。これは情報科学部の特色で、1年次から学生が興味のある各教員の研究分野に触れることができる科目です。私はそこでCGを研究領域の1つとする小池崇文先生の研究室を知り、以来ずっと小池先生に師事しています。2年生の頃から研究室に入り浸っていたため、いつの間にか他の先生方の間でもすっかり有名な存在になりました。

 

情報科学研究科 情報科学専攻 博士後期課程2023年度修了 中本啓子さん

フォトリアルCGにおける半透明物体を研究

CGの中で私が扱っているのは、フォトリアル(写実的)なCGを描画するための研究です。人間の目やカメラは光を受容するので、光の挙動をシミュレートすることにより、フォトリアルな絵が作りだせます。

ただ、光を跳ね返すだけの物体であれば、反射によりこの色が見える、という1点について計算するだけで済みますが、光が中に入り、その内部で散乱と吸収が非常に多く発生する物体もあります。そうした物体を「半透明物体」と呼び、身近なモノでいうと人の肌やロウソク、お刺身もジュースも半透明物体です。近年のCG作品では、人の肌や飲み物、食べ物がよく登場しますが、内部で起こる光の散乱と吸収、すなわち「表面下散乱」の再現性は、半透明物体の見た目を大きく左右します。したがってフォトリアルCGのクオリティを向上させるには、表面下散乱の正確なシミュレートが必要です。アバターやアニメの映像はデフォルメされるものが多いですが、フォトリアルは物理的に正しい計算を求められるという違いがあります。

半透明物体の表面下で発生する、光の散乱をシミュレートするためのパラメータやモデルを適切に推定する。この研究は、学部だけで一定の成果を出すのは難しく、実際、私も基礎的な勉強に精一杯で、本当に触り程度しか学ぶことができませんでした。もっとこの分野を知りたい、研究を掘り下げたいと思ったのが大学院進学の動機です。また、学部でお世話になったティーチング・アシスタントの先輩たちが、どんな質問にも適確に答えてくださる姿に「格好いい」と憧れました。私もあんな風になりたいと思いました。

 

大切に育てられ先生方がみな恩師に

予想はしていたのですが、やはり修士だけでは満足できず博士後期課程に進学。学位審査会では小池先生はもちろん、専攻の先生方がこぞって応援してくださり、どの先生方も私の恩師です。研究環境としてはこれ以上ないほど恵まれています。

日本人学生が少ないのは、今、「IT人材」「DX人材」と目される人が新卒でも引く手あまたの存在だからです。私は理系を専攻する身として、大学院までが規定路線と考えていたため、学部の時に就職活動はしなかったのですが、同級生の多くは有名企業にも強く求められて、就職の道を選びました。一方、私は、まったく後悔しておりません。本来の「学術研究の場」として大学の先端的な研究を存分に堪能した日々は他に変えられません。

来春からグローバル企業の総合印刷会社で働く予定で、配属は今のところ未定ですが、CGやVRの領域に関われたらと期待しています。研究のほうは、計算速度を早めるために近似値を用いる一方で、フォトリアルの品質は可能な限り担保できるというレベルまで実現しました。しかし完璧なシミュレートの「究極体」にはまだ遠い状態です。再び戻る可能性もなきにしもあらずで、心の片隅にはその日を願う自分もいるように感じています。

(初出:『大学院入学案内2025』)

 

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