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理工学研究科修了生の論文がElectrochemistry誌の2023 BIMONTHLY MOST DOWNLOADED PAPERSに選出

  • 2023年06月20日
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本研究科電気電子工学専攻修了生の加藤えみりさん(笠原崇史研究室)が筆頭著者として執筆し、Electrochemistry誌に掲載された論文が、2023年3~4月のBimonthly Most Downloaded Papersの第3位に選出されました。

本論文では、発光補助ドーパントを添加した新規電気化学発光性(ECL:Electrogenerated chemiluminescence)溶液を調製し、これまでに笠原研究室で作製手法を構築してきたマイクロ流体デバイスを用い当該溶液の発光特性を評価しました。発光性分子としてはECLで最も研究されている材料の1つである黄色蛍光を示すテトラセン誘導体(ルブレン)を用い、補助ドーパントとしてはルブレンより酸化しやすく、極端に還元しにくいジスチリルベンゼン誘導体(DPAVB)を添加しました。デバイスの電気特性を評価した結果、輝度、発光効率、デバイス寿命ともに大幅に向上できることが明らかになりました。特に、発光効率はこれまで報告されているルブレンのECLの研究の最高値(4.50 cd/A)が得られ、分子の光化学特性、電気化学特性およびフロンティア軌道の観点から発光過程を考察しました。

ECL素子は、発光性溶液を2枚の電極(陽極・陰極)で挟むだけの極めて簡易な構造を有した自発光素子です。電圧印加により生成した発光性分子の酸化種(ラジカルカチオン)と還元種(ラジカルアニオン)とが衝突し、分子が励起状態になり発光が得られます。しかし、実用化されている他の自発光素子(LEDや有機ELなど)と比べ性能が劣っており、その改善が求められていました。従来のECL溶液は主に、単一の発光性分子を有機溶媒に溶解し調製されてきました。本研究では溶液中のラジカルカチオンとラジカルアニオンの生成バランスを改善し、効率的に両者が衝突できるように、補助ドーパントを用いた新しい溶液を検討しました。今後さらに、ECL素子の高輝度・高効率発光手法を発展させることで、溶液の流動性を利用した、新たな形態のディスプレイデバイスへの応用が期待されます。

電気電子工学専攻・笠原崇史研究室ではデバイス作製および材料開発の両方の観点からECLの研究を進めています。

・受賞者
加藤 えみり(電気電子工学専攻修了生)
笠原 崇史(理工学部電気電子工学科准教授)
 
・誌名
Electrochemistry, 91(4), 047002 (2023)

・受賞日
2023年5月12日

 ・受賞名
2023 BIMONTHLY MOST DOWNLOADED PAPERS (Ranked 3rd For Electrochemistry FROM MARCH TO APRIL 2023)

・受賞論文名
Bright yellow electrogenerated chemiluminescence cell using a rubrene solution doped with an emitting assist dopant

・備考
電子ジャーナル

リーフレット「理系学部で学ぶみなさんへ -大学院進学の5つのメリット-」

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