お知らせ

総長から皆さんへ 第1信(4月13日) あなた自身の言葉をみつける旅に出てください

  • 2020年04月13日
お知らせ

あなた自身の言葉をみつける旅に出てください

新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が4月7日に政府より発出され、4月10日には東京都から、1000㎡を超す大学に対して、5月6日までの「休業」が要請されました。法政大学は校舎で言えば約45万㎡の面積を持ち、土地で言えば約115万㎡の面積を有していますので、この対象に入ります。
 

■新入生と在学生の皆さんへ
すでに4月1日以降の学生証交付、ガイダンス等を取り止め、学生たちには自宅待機をお願いしました。この状況のもと、新入生を含む在学生の皆さんはどこでどのように日々を過ごしておられるのか、たいへん気がかりです。家におられるかた、首都圏以外の実家に戻っているかた、東京に出てきて一人暮らしをしておられるかた、様々かと思います。とりわけ新入生は誰もが、まだ一度も法政大学のキャンパスに入れないまま、今後もしばらくは、キャンパスへ入構することができない日々が続くと思われます。

先生方も職員の方たちも、4月1日に皆さんを迎え、入学を祝い、言葉をかわし、履修方法をお伝えすることを、大切な時間だと考えていました。在学生たちも新入生に部活動やサークル活動を紹介する準備をして待っていました。その時間を、実際のキャンパスで共有することは、しばらく出来なくなりました。

そこで今はまず、WEB上で法政大学の様々な空間と歴史を旅してみませんか? 総長として皆さんに、デジタル上で大学をご案内します。

たとえば以下は、法政大学の歴史を豊富な写真資料とともに案内しているサイトです。私も「新入生へのメッセージ」の中で、法政大学が3人の20代の若者たちによって作られたことを述べていますが、さらに詳しくわかります。
https://www.hosei.ac.jp/hosei/daigakugaiyo/daigaku_shi/
(実は、これ以上に豊富な内容をもつ本学初のミュージアム「HOSEIミュージアム」が既にデジタル上ではオープンしていますが、その話はまた次回以降に。)

以下のサイトでは、在学生たちがいかに多様な方法で学んでいるかがわかります。
https://www.hosei.ac.jp/kyoiku/tayosei/

以下には、ポータルサイトの使い方や、ノートの取り方、レポートの書き方など、非常にたくさんの情報がつまっています。
http://www.hoseikyoiku.jp/lf/handbook/
 
私のお勧めはもうひとつあります。「今こそ、読もうと思っていた本を読む」ことです。私は法政大学に入った時、うれしくてしようがありませんでした。「これで自由に本が読める!」と思ったのです。そのとおりの日々を過ごしました。まだ図書館に入れないのが申し訳ないのですが、青空文庫などWEB上で、無料で読める本があります。無料の電子書籍も有料の電子書籍も多数あります。本を注文して届けてもらうことも、もちろんできます。図書館に入ることはできませんが、統合認証IDで図書館のWEBに入り、様々な調べものをすることができます。図書館では、こんな素敵なご案内もしています。ぜひ活用してください。
法政大学図書館 2020年度学生向け特設ページ「家で使える図書館サービス」
https://www.hosei.ac.jp/library/important/article-20200407135253/

何のために本を読むのでしょうか? それぞれの特別な体験や、そのときの気持ちや、考えたことなどを書き、語る、「自分の言葉」を持つためです。今、つらい気持ちでいる人が多いと思います。しかし皆さんは、人間の歴史上の特別な体験をしているのです。どういう毎日ですか? どんな気持ちを抱いていますか? 正確な情報を得るために何をしていますか? そういうことを、記録してみませんか。

私が大学一年生の時に授業で知り、心をゆさぶられた本があります。石牟礼道子が書いた『苦海浄土』です。誰も予想していなかったことが起こった時に、原因のわからない病、いわれない差別など現実に起こっていることと、その当事者たちの心の中の言葉の両方を記録した名作です。現実の観察と内面への想像力、両方が必要であることがよくわかる作品です。第一部だけでもいいですが、第三部まで読むと、事態を社会的な主張にまで共につなげていく、人と人の連帯の力が見えてきます。この第三部の実体験から、『春の城』という島原天草一揆の小説が書かれました。

これは、皆さんへの手紙の第一号です。これからも、キャンパス入構禁止やオンライン授業期間が続く間は、原則として週1回月曜日に、皆さんにお便りをしようと思います。読書案内もしていきたいです。さあ、あなた自身の言葉をみつける旅に出てください。

■教職員の皆さんへ
 この困難な、今まで経験の無い状況下で、WEB上で学生に少しでも良い授業を提供しようと試行錯誤して下さっている教員と職員の皆さんのご努力に、心から感謝いたします。授業支援システムを私もずいぶん利用し、助けられました。今春新しくなった学習支援システムも、大いに役立つはずです。まずはそこから始めて下さい。なにより学生とのコミュニケーションを優先してください。完璧な講義をめざすのではなく、いま学生に言葉で何を伝えたらよいか、それを考えそこから始めてください。大学は交流の場です。自由という広場です。たいへんなご苦労をなさっておられると思いますが、教える、教えられるという関係を超え、人として学生に言葉を伝える場を、まずは作ってくださるよう、なにとぞお願いいたします。この経験と、この数ヶ月で創り上げる新しい方法は、必ず今後の教育に新しい地平を拓いていきます。

2020年4月13日
法政大学総長  田中優子