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【ライサポ】ライサポが聞く!図書館インタビュー 第4回(特別編) 経済学部卒業生 渡邉 瑞江様

  • 2021年12月14日
  • 新入生
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「図書館には、勉強している人たちのいる空間に触れるために行っていました」
経済学部卒業生 渡邉 瑞江(わたなべ みずえ)様

 「図書館をどう使ったらいいかよくわからない」と思ったことはありませんか?図書館の使い方や大学生へのおすすめ本をライブラリーサポーターがインタビューする企画の特別編として、法政大学の卒業生の方にお話を伺ってきました。インタビューに応えてくださったのは経済学部OGの渡邉 瑞江様。2002年の大学卒業後は民間企業に就職し、現在はアロマグッズを扱う会社を起業されています。ライブラリーサポーターが、学生時代の多摩図書館の使い方、大学生へのおすすめ本などをお聞きしました。

渡邉様(写真上) OGの方にお話を伺う貴重な機会となりました。

1.来歴

——自己紹介として、今何をされてるかと大学を卒業されてからどのように仕事をされてきたかを教えてください。

渡邉 2002年に卒業してまずNTT データシステムズ(現:株式会社 NTTデータビジネスシステムズ)という会社に入社して、主に開発をしていました。財務システムの取り扱いをしていて、6年ぐらい勤務していました。ですが、 SEという職業柄やっぱり24時間体制で、体力的にも厳しかったので、その後 NTT 系列の労働組合に移って事務の仕事をしていました。ちょうどその頃結婚と重なったので、1回ちょっとやってみたかった商社に行きました。三井物産なんですけども、そこにリクルートさんを通じて、派遣業務で1,2年くらい働きました。その時はもともと財務システムを取り扱っていたこともあって財務部で働きました。その後、妊娠をきっかけにお仕事を辞めて主婦をやっていました。今はちょっと子どもが大きくなったので、これまでの業種とは全然違うアロマ業界で、一人でのんびりとお仕事をしています。
お店は2017年から始めて、最初はオンラインでやっていました。ちょうど昨年ぐらいから百貨店さんとかからお話をいただくようになって、”ポップアップ”っていう期間限定の販売があるんですけれども、そういうところに置かせていただくようになりました。業務委託とか、たまに店舗に立ってお客様とやりとりをして販売をすることもやっています。主にはオンライン業務で、日々作ることが楽しいです。
卒業してから最初はSE業界だったんですけども、自分の中で振り返ると、いろんな業界を経験出来たなと思います。

——アロマ業界に興味を持ったきっかけは何かありますか?

渡邉 主婦業だけをずっとやっていると、それまでの社会と断絶されるわけですよね。それでちょうど4~5年前、ちょっと余裕が出てきたときに、ちょっと社会と関わりたいなと思ってきました。今もだと思うんですけど、けっこう女性の間で習い事って流行っていますよね。習い事があって、そこに行って何か資格を取ったらお教室を開けますよとか、そういうビジネスシステムが出来ていると思います。
 そういう中で自分は教室をやるつもりはなかったんですけれども、習いに行って、趣味がてら、いろいろやってみようかなと思ったのが2つくらいありました。その中のひとつが、アロマストーンづくりだったんです。教室とかはそんなにやるつもりはないんだけれども、もともとSE業界にいたので、オンライン販売だったらもしかしたらちょっと出来るかなって。そこでまた社会とのつながりが出来るかもしれないなと思って、主婦業プラスちょっと何かを初めてみたいと思ったのがきっかけですかね。
 あともう一つが、私の子どもが男の子2人なんですよ。なので、家の中とか、食事したあとはテーブルの下とかも公園みたいにすぐ散らかって。女の子とかだったらまた違うと思うんですけど、本当に何かボーイズで、家の中がめちゃくちゃだし、いろいろ怒鳴ったり、片づけなさいとかをすごく言っているんです。だから女子的な作業もやって、自分のストレス軽減とか、そういう別世界を作りたかった、というのもありました。

2.学生時代の図書館での過ごし方

——学生時代に渡邉さんがどんな風に図書館を利用されていたのかを聞かせていただけますか。

渡邉 大学で今もやりとりしていて仲の良い親友がいたんですけども、その子と二人で、とっても大学が大好きで、授業がない日も行くくらいだったんですね。それで、多摩キャンパスって一回キャンパス内に入ると、それこそ俗世と離れますよね。離俗的な空間っていうか。二人で言っていたんですけど、「市ヶ谷じゃなくて良かったね」って。「市ヶ谷だったら多分買い物にも出てたし、いろいろなものに刺激を受けていたかもしれないけども、あの空間だったからこそ心身共にゆっくりできて良かったね(笑)」って。多摩キャンパスは大きいので、円芝だったり、Vブリッジだったり、いろんなスポットがありますよね。
 その中で図書館っていうのも、自分がいろいろ移動出来るひとつのスポットでした。あと学食もそうでしたね。そういう中で、移動してそこで自分と向き合うというか、別の空間に行くことで別の自分を感じるというか。図書館って学食とかと違って、基本は本が大好きな人がいたりとか、いろんなスペースで本を読んだりとか、勉強している方が多かったので、どっちかというと知的な自分になりたいというか、そういう空間に触れたい時に行っていました。どちらかというと遊びに行っていたというか、そういう人たちの空間に触れに行っていたっていうのが大きいです。本を借りにという目的ではなく、一番の目的はそういう雰囲気に触れたいとか、そういうイメージで行っていました。

——図書館独自の空間というか、そういうところに惹かれてという感じだったんですね。そのころあまり本が第一ではないっていうことですが、でも大学時代にこんな本を読んだなーとか、そういう印象に残った本みたいなのってありますか?

渡邉 あります。いくつかあるのをまとめて来ました。いろんな友達の薦めとかで、理解はしていなかったんですけれども、その当時よく読んでいたのが、村上春樹さんの『ノルウェイの森』『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』とかです。とっても本好きの人がいたので、ちょっと感化されて読んではいたんですけれども、独特の世界観があるし、その時の自分は、今読んだらちょっと違うかもしれないんですけれども、その世界に入るのが結構難しかったなーと。やっぱりその作家さんの文を書く構成とか文の書き方とかは特徴があるなっていう風に思っていました。
 その時はそれをいっぱい読んでいたのと、あともう一つ、図書館で何の本を読んでいたかというと。読んだうちに入らないかもしれないんですけれども、『地球の歩き方』のコーナーがあったかと思います。そこに行くのが大好きでした。その頃はまだコロナとかなかったので、そこで興味が出たものを開いて、それをもとに旅行をしていたというか、そういう感じですね。例えばフランスとか東欧とかヨーロッパとか読むと、その中の観光スポットもですけれども、特にヨーロッパとかだと史実に基づいた何か美術史とか美術館とかに興味がありました。
 例えばマリー・アントワネットとかだったら、その人に関する本がたくさんあったので、借りて読んでいたっていう感じですかね。マリー・アントワネットに関する本にしても、本によって視点が違って、そういう中で一番印象にあるのが、処刑の時の遺言書のエピソードですかね。そういう視点の本を読むことで歴史の裏側というか、そういうこともすごく分かりました。あとブレゲというブランドの時計のことをご存知ですか?ある世界的に有名な時計があったんですけれども、それをマリー・アントワネットが死期の近くに注文したそうなんです。それは手作りのぜんまいのもので、完成まで何十年もかかるものだったんですね。なので、それがマリー・アントワネットの死後何十年か経った後にようやく出来上がったそうなんです。でもそれって、今から考えるとそんなに昔でもないことなんですね。その本の中で出て来ていたブレゲという会社は今もあるんですけれども、「その節はマリー・アントワネット様に大変お世話になりました」ってそのブレゲの方がおっしゃるくらいなんです。それを聞くと、歴史って過去の大昔の物語に見えるんだけれども、ちゃんと話は現在に繋がっているというか、そういうものを感じます。話が飛んでしまったんですけれども、ひとつの人物に関する本でも、何冊か取って、いろんな視点で書かれたものを読んだりというのは多かったです。
 あとそれにプラスして、美術史ってありますよね。それも多分置いてあったかと思うんですが、そのコーナーに行って本を開いたりというのもありました。
おおまかに言うと、作家さんが書いた物語に対してその世界に入って読むこと。それともうひとつが、きっかけは『地球の歩き方』なんですが、そこから派生した歴史上の人物とかにアクセスして、そこの歴史とかその人物を知るっていうようなことをして、その世界観を楽しんでいる感じでした。大枠で考えるとそんな感じです。

多摩図書館2階 『地球の歩き方』コーナー 電子ブックでもご利用いただけます。

——その広がり的なものでいうと、図書館ってすごく関連の書籍とかがありますよね。

渡邉 豊富ですよね。自分の生活で味わいたい五感を刺激してくれるものはたくさんあると思うんですけど、そのきっかけのものが図書館はいっぱい置いてあると思います。

——今の学生はあまり本は読まないって、よく言われます。インターネットの普及もあり、図書館でいろいろな物を探してみることがなくなっているのでは、とよく聞くのですが、そのあたりいかがでしょうか。

渡邉 私もその問題点を伝えたいなぁと思って考えてきました。やっぱり図書館よりもスマホとかの情報の方が断然情報量も多いし、そういう物って日々新しくなっていくので、そこはやっぱり図書館は勝てないなって思ったんですよね。例えば昨年のこの時期くらいに自分がちょっと思ったことがありまして。コロナが流行り始めたじゃないですか。コロナが流行って、ペストの時代との類似というか、同じような感染症なのでそれに関してインターネットで探すと結構な数の記事とか本が出てきたんですね。最近はやっぱり私も紙ベースよりもスマホで読むことの方が多いので、それをスマホでずっと読み漁ったんです。そうすると、その中でニュートンがちょうどその時期に生きていたっていうことが分かりました。ニュートンは万有引力を発見して、近代科学の礎となった人ですけど、万有引力発見のきっかけはペストによるロックダウンだったそうなんです。ニュートンはペストの時代にイングランドの大学にいて、やっぱりロックダウンになって、したいことが出来なくなったらしいですね。当時は今の時代とは全然違って、もっと沈黙のロックダウンだったと思うんですけれども、そういうところで、多分集中して思考をしていたんだと思うんです。そういう中でニュートンは万有引力を発見したっていう風に書いてあって、すごいなぁと思ったんです。それはスマホからの情報だったんです。だから、『図書館に行かなくても簡単に情報を得られる』というのは本当だと思います。でも、図書館の本を手に取ることで、スマホで得た情報に新たな気付きが得られることもあるんです。
最近は移動図書館が近くの公園とかに来るのでたまに寄ったりしてるんですね。そこにもペストの本とかあったのでちょっと見たりしてるんです。それで思ったのが、図書館で手にする本の良いところは、10年前とか20年前に書かれたものにも出会えるということです。その本が執筆された時代の臨場感を味わうことができる。その臨場感を拾って、スマホで得た同内容の記事と比較することができる。そして、比較したことで出てくる自分なりの考察を導き出すことができます。昔の人がその時代の視点で書かれたペストを読むことで、今自分が持っているペストとかコロナに関する思いや考えとミックスすることが出来る。俯瞰的に情報をつかんだり、思考することが出来るなって思ったんです。図書館の良いところっていうのは、同じ本であったとしても、ネットで今探すことが出来る新しい情報でなく、もっと昔に書かれた情報を得られる点だと思います。図書館には図書館の良いものがあると思います。

——時代の積み重ね的なものをもっとアピールしていけたら、利用者さんも増えるのかなっていうことを今考えながらお話を聞いてました。

渡邉 そうだと思います。最新のものの提供っていうのは、やっぱり弱いのかなって思うので、昔からのものを推す。今のものと比較してっていうか。そういうのも良いかなって思いました。

3.古典文学からの広がり

渡邉 あと思ったのが、私が昔読んでいたマリー・アントワネットとかそういう時代のものだと、その当時だったから、私は海外に向けて行動が出来たんですけれども、コロナの影響で今は出来ないですよね。今だと例えば移動図書館で見ることが出来るのが、宮沢賢治の作品で『セロ弾きのゴーシュ』とか『注文の多い料理店』とかたくさんあると思うんですけれども、そういう図書館だからこそある、古典的な物語とかはよいなって思ったんです。それをもとに、読むだけでも良いんだけれども、私2016年まで夫の転勤の関係で仙台にいたんですね。そこは岩手県の近くだったので、宮沢賢治の生家とか、「宮沢賢治記念館」とかがあったんですね。なので、そういうものを読んだうえで、そういうところに行って五感で感じるというか、そういうことをすることで、本だけじゃなくて、そこから広がるものを感じるっていうのが結構昔から好きだったんです。
 今だったら何が出来るかなって思った時に、ちょうどさっき調べたんですけれども、宮沢賢治も石川啄木も同じ岩手県の人で、東京にもいらっしゃっていたんですね。だから生家とか、何とか館とかあるみたいなんです。近くなのでそういうところにちょっと行ったりとかっていうのは全然出来ると思って。なので、本をきっかけにそういうとこに行くと、特に若い皆さんとかだと、そこから世界が広がって、将来やりたいお仕事とかそういうのに繋がったり、きっとするだろうなって、羨ましいなって思ってます。いろんなことが出来るな、そういう感じの図書館の使い方っていうのが、良いかなって思います。

4.自己啓発本を読んでみて

渡邉 あとは、社会人になって自己啓発本っていうのも好きで読んだりしています。例えば、ここ1,2年で読んだのが、『世界のエリートがやっている最高の休息法』ですね。そういうのを読んだりとか、『Think clearly』も結構ベストセラーになったかと思うんですが、そういうのを読んだりとか。そういうのはやっぱり友人とかから触発されて、良いかもしれないって思って読むんですけど。多分そういう自己啓発本とかだと、多摩の図書館とかでも置いてあったりしますよね。この年齢だから私が読みたくなるのか分からないですけど、印象的には10年、20年前よりも、若い人も含めてそういう自己啓発本、どうやって生きていくと心地よくなれるのかとか、そういうものに関しての本が多くなった気がするんですね。たぶんこういう時代だからこそ、そういう題材を求める人々っていうのが多いかなっていう気がしました。自己啓発本って20代の方はどうなんですかね。学生さんとか、多く読まれているのかなって考えます。

5.世界との繋がりを感じる日記

渡邉 あともう一つ、私がすっごくここ1~2年はまって読んでいるのが、辻仁成さんの「Design Stories(デザインストーリーズ)」っていう、本にはなってないんだけれども、日記を含めたものです。辻さんって今フランスで暮らされていて、そこで作家活動とかミュージシャンの活動とか、あとお料理が上手なのでそういうものとかをいろいろこなしながら、子育てもしながら、その内容がずっと日記に書かれてるんです。でそれを私は日々読んでるんです。ほぼ毎日更新されるので。そうすると、辻さんの作品自体は私読んだことないんですけれども、作家さんなので、日記一つとっても、日々にこんなにドラマティックなことがあるんだろうかっていうような、とっても心惹かれる内容のものが、配信されてくるんですよ。それで、文庫本になってないのかなって調べたんですけど、文庫本になってないみたいなんですね。なので自分的には残念だなって思うんですけれども、それこそスマホで読むしかない。だからそういうのも読んでますっていうのを伝えようと思いました。図書館にもそういうのがあったら、そういうのをペーパーで読めるのがあると、自分が今学生だったらそれに飛びつくかなって思いました。元からある本じゃなくて、今発信されている作家さんのものですね。それを読むことで世界は繋がってるんだって、今こっちはお昼だけれども、向こうはこれから朝ですかね。7時間差くらいですかね。そういうのも感じるし、辻さんはNHKさんとやり取りがあるみたいで、やっぱり何かと日本と繋がっているので、それを読むことでやっぱり世界は繋がっているんだって意識することが出来たりします。そういうのはとても楽しいですね。

6.ベルサイユ宮殿無人ツアー

渡邉 ちょうど昨年の今ごろはコロナで、ベルサイユ宮殿とかそういうところは人っこひとりいない状態だったんですね。その時に辻さんの友人で、日本の小さなトラベル会社の人が、辻さんに無人のベルサイユ宮殿を案内するツアーをやりましょうって言って、それが日本でも配信されたんですよ。それを私はたまたま知っていたんですけれども、全然違う友人から、コミュニティが違う友人3人からも同じことを言われたんですよ。「今度辻さんがそういうことをやるけど知ってる?」って、「とっても良いツアーみたいだから楽しみだよね」みたいな風にお話をもらったんですね。だからそれを聞いて思ったのが、全然違う3人から話をもらったっていうことは、やっぱり「類は友を呼ぶ」なのかなって。「ルイトモ」っていうじゃないですか。それを感じました。
 今日逆にお聞きしたかったんですけど、その話ってご存じでした?辻さんがベルサイユ宮殿の中を無人ツアーした企画があったこと。たぶんこれってコロナになってなかったら実現しなかった企画なんですね。私はそれを申し込んで見られたので良かったんですけれども、圧巻でした。「鏡の間」とか本当に人っこ一人いないところに、ナビゲーターの方と辻さんだけの空間で。もちろんナビゲーターの方がいるんで、ベルサイユ宮殿の中の一つ一つの「間」を説明していただいたりしたんですけど、そういうことが出来きて楽しかったです。ちょっと伝えたいなって思いました。ご存じでしたか?

——存じ上げなかったのですが、もし知っていたらすごく体験したかったなと今思いました。

渡邉 本当ですか?!そういう「情報化社会」だからこそ、そういうことに触れることが出来ると思います。そういうものを図書館でも知ることが出来たりとかすると、枠が広がったり、自分の世界が広がるかな。自分がもし大学生だったら、そういう企画とか「そういうものがありますよー」ってことを知っていたら、楽しいだろうなって思いました。

7.情報化社会の中の図書館

——現在進行形で今起きてる出来事とかが、リアルタイムで図書館を介して伝わるみたいな感じでしょうか。

渡邉 やっぱりどうしても情報化社会だし、そこには抗えない。古典的な図書館っていうのは、それはそれでとても素晴らしい役割があると思うんですけれども、それにプラスしてすごく早いこの社会と一緒に情報を提供できるような、そういうものがあると、自分が学生だったら嬉しいかなって思います。

——関係あるか分からないですけど、私も好きな作家さんがいて図書館に行くんですよね。でも図書館って新刊の本はほとんど置いてないというか、どうしても書店の方が早い。なので、書店で見てそれを何か月後かに図書館で見るみたいなことが多かったりとか。サイン会とかの情報も、どうしても図書館だけ行ってると追いつけないっていうのはあると思います。似てるかは分からないですけど、そういう意味でリアルタイムっていうのはすごい大きなポイントなのかなって思いました。

渡邉 本当にそう思いましたね。本当に本が好きな人は言わなくても行くじゃないですか。言わなくても探すし、そういう本を取ってくれると思うんです。でもそうではない学生とかには、付加価値というか、そういうものを提供する。これから就活とかいろいろされるだろうし、卒論とか書く場合のいろいろな材料にもなったりすると思うので良いかなと思います。

——図書館の良さって、おっしゃっていたように宮沢賢治とか、ちょっと昔の作家さんを読める点にもあるけれども、それだけじゃなくて、新しい付加価値入れていくっていう、二つの視点。二つのものが同時にあると、より図書館の魅力が高まるのかなって思うんですけれど。

渡邉 だからさっきの話に戻ると、まず宮沢賢治の本があって、文京区がゆかりの地みたいなんですよ。なので、そういうところの情報が一緒にセットであると、コロナだけど近いしちょっと行ってみようかなって思う。生家はどんな感じだったのかな、とかそういう風に興味が出てくると思うんです。多摩図書館にライブラリーサポーターの掲示板がありますよね。拝見させていただいたんですけれども、素敵な掲示板だなって思って。ああいうところって結構見ていないようで、目の端で見てたりしますよね。そこに情報があったら、学生さんが見た時に、「文京区のこういうところにあるんだ」って思って、その人なりに考えが派生するかなって思うんですね。なので、この本がおすすめですっていうだけじゃなく、それプラス今の自分のリアルタイムの生活とどう結びつけられるか、そういうものがあると結構私は興味がわきます。

——ただ一冊の本を置いてあるよりは、生活と結びつけられるようなとっかかりが一個あると…

渡邉 良いかなって思いましたね。本に興味を持ってもらうために。

渡邉 昔と違って今の方って本当に趣味が多様ですよね。今ちょっと思いついたのが、例えばK-POPは昔からですけど、今BTSっていうグループがあるじゃないですか。そういう情報があるとして、そうしたら、どういう本を引っ張ってこれるかって考えたんです。今は雰囲気的に友好的ではありますけど、昔の韓国と日本の歴史とかに興味がわいてくる人もいるかもしれないし、そうしたら、韓国のそういう本のコーナーがここにありますよとか。大学でコリア語選択のクラスあるってことは、その国に興味があってコリア語を選択したっていう方もいらっしゃると思うので、そこに結びつけるとか。K-POPとか日常で結びつきやすいものから引っ張ってきて、そういう本がありますって紹介すると、私自身はとっかかり易いかなって思います。

8.自己啓発本について②

——先ほど自己啓発本の話があったと思うんですけど、私はあんまり自己啓発本とかっていうのを読む方ではないんですが、読む方もいますよね。学校でも目立つところに置いてあるのを見る気がします。

渡邉 やっぱり興味がある方は読まれる感じですかね。イメージ的に、会社の一社員として働かれるのを目指している学生さんよりも、会社に入ったとしても管理系のところを目指しているような学生さんとか、あとは最初から独立を目指してる方が読んでる気がします。でもそういう方たちって、たぶん図書館に来ないと思うんですよね。そういう人たちは学校以外でのコミュニティというか、社会の中で…インターネットで注文したりとか、Kindleなどの電子書籍だったりとか、本屋さんで買ったりとかしてる方が多いと思うんです。だからもともと図書館が好きな方々に読んでもらうために、興味を持つようなプラスアルファのものと一緒にすると良いかなって思いました。

——私も図書館には行きますけど、全然読まないので…。自己啓発本って、失礼な言い方ですけれど、似たようなものが並んでいるみたいなイメージがあります。なので、選び方とか、どういうのから手に取れば良いのかとかが分かると、裾野も広がるのかなと今思っていたんですれども…。

渡邉 なんとなく思ったのは、選択肢はすごく多い方が良い気がします。そういうのこそピンと来たものを取って読んだりするので、これが良いですって言われると、どっちかというと昔の時代の「これが良いからこれをみんな読みましょう」っていう感じになりそうな気がするんです。ジャンルが違う物をたくさんそろえておくと、「この本はこういうのが特徴です」とか、「これは具体的な行動の仕方」とか「こっちは心の在り方にアプローチしてます」とか、何かちょっとずつ特徴があると思うんですけれども、そこをピックアップしてかつ選択肢がすごく多いと私なら見ます。3冊ぐらいでこれ良いですよだと、普通の本屋さんと同じ感じで、あんまり自分は見たくないかな。結構皆さん人に言わないだけで、どうやって生きていけば良いんだろうとか、そういうのを考えていたりすると思うんですよね。そういう人のために選択肢を広げてあげて、かつ特徴を出して案内をすると、「自分にはどれが合うだろう」って選ぶかなって。元々そういうものに興味がなかった人も興味が出てきそうだなって思います。

——選択肢をいっぱい置いておく。それが出来るのは図書館のすごさかなって思います。書店だと売れ筋しか置けないですけど、図書館だといろんな視点から選書しなければならないっていうのもあると思うので、必然的にいろんな選択肢の本が揃えられる。これが図書館の良さかなって思いながら聞いていました。

渡邉 そうですよね。あとチャートみたいな感じで、「こういうあなたはこっち系が合いますよ」とか、「こういうあなたにはこういう本が良いですよ」みたいなのをちょっと示しておくと、選びやすくなる気がします。壁に貼ってあったら、立ち止まって楽しくチャートを見て、「こうなんだな…」とかやる気がします。

——ありがとうございます。ライサポとして図書館の魅力を伝えていくにはどうしたら良いかって考えてるところなので、その辺の視点とかもすごい教えていただいたなと思います。

9.大学生のうちに読むお薦め本

——今まではどういう本を読まれていたかとか、後はこういう風に本を読んだら良いんじゃないっていうのも教えていただいきました。改めて大学生という風に括って、社会に出る前に大学生のうちに読んでおいた方が良い本、タイトル、薦めていただくとしたら、何でしょうか?

渡邉 大学生だと自己啓発系ですかね。より社会に近い内容の方が繋がっていく気がします。私は途中までで読み切ってないんですけど、ピーター・F・ドラッカーってご存じですか?その人の本とかだと組織においても、自分の働き方においても、実践できそうな内容かなって思いますね。それこそさっき言った2冊の本『世界のエリートがやっている最高の休息法』『Think clearly』プラス、ピーター・F・ドラッカーの本ですかね。より社会に近い本の方が学生さん、特に4年生には良い気がします。

——逆に大学に入ったばかりの新入生とかだとまたちょっと違った雰囲気の本ですか?

渡邉 そうですね。海外に行けるのであれば、さっきみたいに歴史上の人物から始まってそれに関する本。美術史なんかも良いかなって思ったんですけど、1、2年生だからこそ文学ですかね。その世界に入り込めるような作家さんのものとかが良い気がします。
私の場合、アダム・スミス『国富論』とか経済に関する本とか、マルクスの本とかそういうのを真面目に内容をかみ砕いて読んだのは、卒業してからです。本当に興味がある人だったらきっとお勉強されるんでしょうけど、私はどっちかというとそうじゃない別の世界に入り込むのが好きだったので見てなかったですね。今になって読むようになったりもするので、やっぱり年代やその時々の生活スタイルによって読むジャンルって変わってくるなって思います。
 だから1、2年生はより没頭できるようなもの。新しい作家さんとかいらっしゃいますよね。芥川賞受賞作家さんとか、そういう独特な雰囲気のものとか。後はさっきの村上春樹さんみたいにコンスタントに活躍していらっしゃる方とか。後は、日本の古典文学とかだと学生生活中に没頭できるかなって。バイトの合間にでも出来るかなって思いますね。それで3、4年生になるとより社会を意識した、多分自動的に無意識的にそういうものを選びたくなるとは思うんですけども、より社会に近いものが良いのかなって。

——私の場合、授業聞いた後とかは授業の内容に触発されて、私は現代福祉学部なので社会問題の本を読む面もありますね。

渡邉 やっぱり何かしら自分の生活にリンクしてますよね。授業で習われたものをきっかけに図書館に行って選ぶってことだから、図書館はやっぱり人それぞれの何かきっかけになるところかなって思います。

10.図書館の外へ

渡邉 バイトにすごく打ち込んでいる人には、そういう人が取りたくなるような本とか。飲食店でマネージャーとかをしている人にお薦めの本とか、具体的に提示をすると取りやすくなるかなって思います。バイトをしていて普段本を読まない人でも、自分の生活にリンクしている内容の本だと「読んでみよう」ってなるかなって思いました。バンドとかをやってる人だったら、それに関するようなもの。図書館ってバンド向けの本とか少ないですよね?でも、バンドに紐付くような内容の本だったらあるかもしれない。そういう、普段図書館と縁が無さそうな人向けに音楽書の案内を書いておくとか。音楽の歴史とかありますよね。バロック時代とか、モーツァルトの時代とか。そこまで遡るかは分からないですけど、バンドも歴史とかあったりすると思うので、「こういう音楽のジャンルの本もありますよ」みたいなのを案内で分かりやすく書いておくと、「ちょっと目を通してみようかなぁ」と、本当に本が好きですっていう人以外でも取りやすくなるかなと思います。図書館の外とかに案内を置いておくと良いんじゃないですか。元々そういう人って図書館に入らないですから。

——そうですね。なかなかゲートを入るっているのは…。

渡邉 そうですよね。ゲートの手前とか、そういうものがあると本当に活性化するし、多摩図書館ってきれいですごいなって思ってるんですよ。そういう人に入ってもらうと嬉しいですよね。なので、図書館の中じゃなくて外側に。おっきく分かるように書いてあったりしたら良いかなって思いました。

近くに学食もありますよね。だからメニューと一緒に横に貼らせてもらう。そういうのが結構重要だと思いますよ。意外と見ますよね。「こういうの買う人はどうぞ」とか「今週はこういうのに力を入れてます」みたいなのを学食の近く、何ならメニューと一緒に載せておくとか。そんな風にすると図書館に興味がない人も見るので良いかなって思いました。

——館外への進出ですね。たくさん話をしていただいて、すごく為になるというか、そういうやり方も良いかもしれないってすごく思いました。ありがとうございます。

渡邉 こちらこそありがとうございます。楽しくお話をして頂いてありがとうございました。

11.移動図書館を利用してみて

——今日伺ったお話の中で「移動図書館」というワードが出てきていたと思います。私は身近に移動図書館がないので、移動図書館をどうやって利用されているのか気になりました。

渡邉 普通に公立の図書館ってあるじゃないですか。その図書館が大きいワゴン車で回ってくれるんです。子ども用から大人用までのもの本を載せて来るんですけど、移動なので全部持って来れないからピックアップしてあるんですよね。だからむしろ話題のものとか、その季節にあったものとかが多い。あとは、事前に申し込むと持ってきてくれて、そこで借りられる。なので意外と便利です。近くの公園の中に1時間くらい停まっていますかね。日中なので学生さんとかだと難しいと思うんですけど。でも学生さんも学校のないときだったら使えますね。そういうシステムを私もここ2~3年で知ったんですよ。移動図書館っていうシステムもすごい良いなって思いました。

——私は司書資格のための授業の教科書で見たくらいで。後はこの辺だと日野市で移動図書館って導入されてはいるんですけど、実際に利用した方の話を聞くのは初めてだったので、ついつい質問をしてしました。

渡邉 良い感じですよ。来て広げてくれるんですよね。本当に良いものはゴザみたいなのを敷いて広げてくれるし。ワゴン車の中に入ると車内全部に本があるんですけれども、厳選したものなんですよね。図書館に行くと本があり過ぎると感じる人は、移動図書館みたいなちょっと小さいものから触れてみるとか。そうするとお薦めのものが基本入っているので良いと思います。多摩図書館でも何かそういうことをしたらどうですか?守衛さんのところまで降りる坂があるじゃないですか。あるいは、円芝あたりでそういうお薦めのを出しておくとか。でもそういった、そういうちょっと変わった試みとかをすると、人って「え?」って思う。それ自体は実行するのは厳しいとは思うんですけど、何かそういう目新しいものとかをすると、図書館の活性化にすごく繋がる気がします。

——円芝に本が置いてあったらすごく開放的な感じですね。青空図書館みたいな感じで。

多摩キャンパスの円芝(円形芝生)

渡邉 あっという間に噂になりますよ。あそこはみんな通りますよね。だから意外と良いかもしれないと思います。あそこは憩いの場ですごく良いので、月に1回とか。しょっちゅうは出来ないと思いますけど、そういうことをすると本当に図書館に行くことがない人も本にふれることが出来るし、情報だけでも得ることが出来るので良いかなと思いました。

——本日は良いお話を聞かせていただいて、ありがとうございました。