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【ライサポ】ライサポが聞く!図書館インタビュー 第1回 社会学部 堅田 香緒里准教授

  • 2021年10月12日
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「図書館は大学の授業とは独立した空間。そこにしかない学びもきっとあると思います」
社会学部 准教授 堅田 香緒里(かただ かおり)

 「図書館をどう使ったらいいかよくわからない」と思ったことはありませんか?大学の先生はどんな風に図書館を使ってきたのか、図書館学生ボランティアのライブラリーサポーターがインタビューしてきました。
 第1回目は社会学部の堅田 香緒里先生。社会福祉学、福祉社会学、社会政策を研究テーマにされており、「福祉社会学Ⅰ・Ⅱ」や「社会調査実習」を担当されています。堅田ゼミに所属するライブラリーサポーターが、学生時代の図書館の使い方、大学生へのおすすめ本などをお聞きしました。

(写真右下)堅田先生。笑顔あふれるインタビューとなりました。

―――堅田先生が貧困問題について研究するようになったきっかけを教えてください。

堅田 私が16歳ぐらいの頃、ホームレスの女性と友人になったのですが、その人と仲良くなるにつれ、自分は普通に学校に通えて、家がある一方で、その人は家もなく仕事も無いということに対して、世の中が不条理に感じるようになってしまいました。そこから大学に行くというモチベーションを失ってしまい、思い悩んでいたところ、岩田正美さんという貧困研究者の本に出会って、社会福祉学で貧困の問題について考えることができるらしいということを知るんですね。
 そこでどうせ大学に行くのならば、そうしたところに行こうと考えて、当時一番学費が安かった東京都立大学というところの社会福祉学分野がある人文学部(現:人文社会学部)に入学しました。けれど、いざ入学してみると、社会福祉学で提供されている学びが、私が想像していた学びとは全く違っていて、貧困者をコントロールする、管理する、統治するとかそういう学問であるように私には思えて、大学にほぼ通わなくなってしまって。当時は、大学ではなく路上に通って、野宿の人たちと共に時間を過ごしたり、運動したり、支援したりしていました。そのままそうした生活をしようとしていたけれど、色々あって挫折して、大学にとどまることになり、今に至るというような感じです。

 

―――大学院生の頃は研究のために図書館などを利用していたと思うのですが、どのように利用していたかを教えていただけますか。

堅田 図書館には正直むちゃくちゃお世話になりました。ただ、学部生の頃は、さっきも言ったとおり、大学にあまり通っていなかったので、図書館もほとんど利用していませんでした。たまに、夏の暑い日なんかに、図書館は冷房が効いているので、寝に行ったりはしていましたけど。一転して、大学院生の頃はほとんど図書館に生息していました。アルバイトや授業、支援活動がない時はずっと図書館にいて、家にはほとんどいないという感じでした。
当時私が通っていた研究科の図書館は、実質24時間開放されていたんです。だから、本や論文を読むというだけではなく、ただぼーっとしたり、仲間とお喋りする場所としても使っていて、夜中12時を回っても居座っていることがたびたびありました。
 大学院生の頃は自由になるお金も少ないので、タダでずっといられていつでも利用できるうえに冷暖房もついている図書館は最高の空間でした。論文を執筆しているときなんかは、図書館にパソコンを持ち込んで、実質図書館で暮らしているよね、と言われたこともありましたね。
 他にも、法政大学にもそうしたサービスがありますが、学術書は院生にとってはとても高くて、なかなかおいそれとは買えなかったので、ほしい本があるときは、よく図書館に購入希望を出していました。また雑誌論文についても、当時はオンライン化が今ほど進んでいなかったので、購入希望を出して、最新の国内外のジャーナルを図書館に購入していただき、無料で利用させていただいていました。本当にありがたかったです。
 でも、図書館の使い方って本を借りたり読んだりするだけじゃないって思っていて。誰でもいつでも入れる空間である、ということの意味はすごいあると思います。『パブリック 図書館の奇跡』という映画では、「ホームレス」の人たちが図書館を占拠したりしていましたよね。多摩図書館だと、自由に使えるクリエイティブルームなどがあったりして、そこでゴロゴロしたりお友達とお喋りしたり、できますよね。図書館は大学の授業とは独立した空間じゃないですか。そこにしかない、学びと認識されないような学びもきっとあると思います。

多摩図書館3階のクリエイティブルーム(感染予防のため、現在グループでのご利用はできません)

―――大学生の頃はどのような本を読んでいましたか。

堅田 本ではないですが、『現代思想』という雑誌に載っているいろいろな論文を読むことが好きでした。小説で、ということでいうと、桐野夏生さんの本をよく読んでいました。特に『OUT』という作品は、深夜の工場で働いている4人の主婦の物語なんですけど、夫がギャンブラーで、お金を全部摩って借金がすごかったり、DVを受けていたり、介護が大変だったり、それぞれ課題を抱えていて、でも生きていくために工場でアルバイトをしているんですけど、そのうちの一人が夫を殺して物語がスタートするという内容で、ジェンダー的にも階級的にも面白い作品だと思います。私が最近書いた『生きるためのフェミニズム』という本の中でも『OUT』について少し触れています。

OUT / 桐野夏生著(市:1F文庫新書  /講談社文庫/き-32-3:S)

―――読書をする際に記憶するためにしている習慣などはありますか。

堅田 私は手書きで読書ノートをつけていました。ある段階からExcelやWordで読んだ本の管理をしているのですけど、やっぱり時代遅れかも知れないんですけど、手書きで読書ノートをつけていたときの方が記憶に残っています。EndNoteとか、法政大学の図書館でも提供しているRefworksのサービスとかもちょこちょこ使ってはいるのですが、なかなかうまく使いこなせずにいます。

 

―――最後に、学生に向けて何かおすすめの本はありますか。

堅田 「多摩キャンパス教員からのおすすめ本」のコーナーでも紹介しましたが、2019年に出版された『ぼそぼそ声のフェミニズム』という栗田隆子さんの本はおすすめです。多くの方にぜひ読んでみてほしいです。
 でも学問ということに関していうと、私は自分が感心を持ったものを読んでみるのが一番良いと思います。私の視野なんてすごく狭いし、人には様々な感性やこだわりがあると思うので、私のおすすめというよりは、自分自身が面白いと思うものに素直になって、いろいろ読んでみるといいんじゃないかなと思います。たとえそれが教員の人が薦めるものと違ったっていい。自分が面白いと思えることが大事だと思います。

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