1冊の本との出会いが自分と未来を変える。
HOSEIブックレビューでは、本学の先生方より、「自分自身の形成に影響を与えた本」「未来を支える若者に読んで欲しい本」「学術領域関連で読んで欲しい本」をご紹介いただきます。
最後に、先生にとって読書とは?の質問にご回答いただいております。
第1回目は、経済学部の藤沢周教授よりご紹介いただきました。
なお、タイトル(書名)をクリックすると、本学図書館蔵書検索システムの書誌詳細画面に遷移します。
まだ10代の頃に、故郷の雪景色を見ていて「美とは何か」という沼にハマってしまった。そこから救い出してくれたのが、「無」を初めて言語化したこの本。
こんな獣のような感受性があるのか! どの作品も短く、日常を描いているだけなのに、まったく新しい風景がひらける。「日本文学史上の一奇蹟」といわれた短編集。
ヒトラーのためにポルノ小説を書く男。二つの時空を生きる主人公の物語は、混迷した現代をアグレッシブにあぶり出す。
「俺は書く」という、小説の中の一文に感動し、私も小説を書き始めた。
作家・開高健が、アマゾンで怪魚釣りに挑んだノンフィクション。森羅万象と戯れるのだ。
密林が、闇が、ピラルクーが、世界の秘密を開示していく。「書くとは野原を断崖のように歩くこと」とモノした作家の、超興奮的五輪書。
「秘すれば花」「初心忘れるべからず」「稽古は強かれ、情識はなかれ」……。能の大成者世阿弥のパフォーマンス理論の書は、人生指南の書でもある。
ジャパネット・タカタの社長も愛読している、らしい。成功の秘訣がここに。
「日本ノ文化トハ何デスカ?」と海外で問われたら、この一冊。弓道を軸に、禅をベースとした日本文化の深層の粋が惜しみなく披露される。
「的に当ててはならぬ」とは何か。これで、あなたも達人の域に。
日本近代文学の祖である詩人は、人間の心の、さらに内奥へと思索を深めた。「内部生命論」は圧巻。
芸術の源泉を求めた精神的冒険は、かなりリスキーなのだが、透谷のおかげで貴重な登攀ルートができた。その先は私たちだ。
近代の明度によって隠れたもの。そこにこそ世界の秘密があるのだ。と大文豪はマニアックな筆致で影や闇を徘徊する。
かなり変態指数の高い随筆の数々ではあるが、文学がじつは闇の光学なのだと気づく。畏るべし。
心の底。潜在意識。さらに底。阿頼耶識。
この言語ならざる位相に降りて、新しい知覚の扉を開けようとしたのが本書。
つまりは、人間の未知の可能性を探る秘術のような思索から、世界の真相が発見される。驚異の書物。
善悪正邪諸行無常。人間の底知れぬ深淵を覗き、圧倒されたいのである。