開発や経済格差、人権、民族紛争、領土問題と、さまざまな課題を抱えるアジア地域。吉村ゼミは、アジアにおける諸問題を政治・経済・文化・環境なども含め考察しています。
4年生の市川さんの卒業論文の研究テーマは「中国少数民族の教育政策と言語」。実際に朝鮮系中国人の留学生にヒアリングをし「全国統一的な教育制度の下、少数民族の言語とアイデンティティーをどう維持するか。教育や経済の格差、その背景となる政治体制と政策…構造的に問題をとらえることが大切です」と、市川さんは研究意義について語ります。
多角的考察のもとになっているのは、2~3年次の研究体制。年度初めに2・3年生混合の班を組み、春学期はアジア社会に関する知識を広く習得するためにテキスト輪読や時事問題プレゼンテーション、秋学期はゼミ論文を中心にテーマを掘り下げる個人研究を行っています。
「2年生の研究・発表も責任は3年生。指導的役割を担うことで、チーム運営はもちろん、社会への幅広い視点をもって自分の研究を進めるようになりました」という3年生の後藤さんは夏のマレーシアでの英語研修に続き、来年度は大学の派遣留学制度でフランス留学の予定です。
2年生の久野さんは「先輩の指導と班の仕組みで課題の要点を的確につかめ、期待以上の学びができています」と目を輝かせつつ、「はじめはついていくのがやっと。今年は早くも指導する立場ですが」と笑います。
「一人ひとりが主体的にゼミ活動に取り組むことで、各課題に対して当事者意識を持ち、グローバルな視座を築いてほしいと思っています」と吉村教授。
栗田さんは最近、実際にグローバルなゼミの学びを実感する経験をしました。「社会学部SAプログラム(※1)のカナダ留学で“もっと日本の魅力を伝えたい”と思ったのをきっかけに参加した11月の日米学生交流プロジェクト(※2)で、米国の学生と教育格差について議論しました。世界では民族や宗教にも関わるこの問題について日本の事例を挙げながら深く話し合えたのは、ゼミでの成果だと感じています」
同プロジェクトの派遣学生は、「社会学部研究発表会」「多摩国際交流フェア」等でも帰国報告を実施。
現地でも帰国報告でもユーモアを交えた印象的なプレゼンテーションをした山崎さん。「吉村先生の指導のおかげです。ゼミでの学びは社会学部SAの中国留学や多摩ESS代表の仕事でも生かせ、プロジェクトの“日米学生交流”という趣旨や、国際社会問題の構造など、隠された本質を見抜く重要性に改めて気付かされました」。将来は日本と海外との懸け橋になりたいと、山崎さんはさらに志を強くしています。
(初出:広報誌『法政』2014年度1・2月号)
※1:学部独自の短期留学制度であるスタディ・アブロード(略称SA)プログラム
※2:国際交流基金主催の日米学生交流のための「KAKEHASHI プロジェクト」。社会学部と法学部の学生23人が派遣。吉村ゼミからは市川さん、山崎さん、栗田さんの3人が派遣学生に選ばれた。詳細は2014年12月8日付本学ウェブサイト「ニュース」に掲載