ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

演劇を通じた文化比較で多文化理解・論理的思考力養成を図る(国際文化学部国際文化学科 竹内晶子教授ゼミ)

  • 2015年06月11日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)
前列左から、中田能子さん、竹内教授、大川紗季さん。後列左から、上村真琴さん、大塚菜央子さん。※学生は全員、国際文化学部国際文化学科4年

前列左から、中田能子さん、竹内教授、大川紗季さん。後列左から、上村真琴さん、大塚菜央子さん。※学生は全員、国際文化学部国際文化学科4年

「演劇と越境」をテーマに、オペラやミュージカル、歌舞伎、能といった演劇を国籍、文化、ジェンダーなど多彩な角度で考察している竹内ゼミ。ゼミ授業では、オペラや映画などの作品を鑑賞した上でディスカッションをしています。

「例えば昨年度は映画『シンデレラ』を扱いました」と振り返るのは、趣味の漫画とゲームを学術面からも分析したいとゼミに入った中田さん。「『意地悪な姉妹』を設定したのはなぜなのか、『いじめられるかわいそうなシンデレラ』に価値を見いだす人は誰なのか、と突き詰めていくと社会的背景が見えてくる。いつの間にか植えつけられていた先入観にも気づかされました」と学びの成果を語ります。

「演劇は音楽や美術などさまざまな要素で構成されているので、より多角的な視点を得られます」と続けるのは、クラシックバレエの経験を持つ大塚さん。「バレエと演劇の演出はどのように違うのか、それぞれの構成は? 原作からの変化は?と体系的にとらえ、比較して考えることが身に付き、日常生活のあらゆるものにも疑問を持つようになりました」と言い、卒業論文では日本の色彩感の変化について研究しています。

論文作成にあたっての個人面談は学期中数回にわたり、丁寧に行われている

論文作成にあたっての個人面談は学期中数回にわたり、丁寧に行われている

論理的思考力を養成するため、4年次の卒業論文を前に、竹内ゼミでは3年生も論文を執筆。昨年度はさらにアウトプットの新しい取り組みとして、創作活動も行いました。

大川さんは森鷗外の小説『舞姫』を題材に新作能を提案。「狂人となったヒロイン・エリスの、語られることのなかった気持ちを、歴史的・文化的背景を考慮し、ジェンダー論などを用いて論理的な分析を重ね、夢幻能と呼ばれる能楽ジャンルで表現しました」。同作品は竹内教授からも高い評価を受けました。今年度は舞踏や音楽も加え、学生たちだけで自作を演じてみるのが目標です。

「演劇は直接社会に結び付かない学びかもしれませんが、好きなことに思う存分に取り組んで、その後の人生を深めるきっかけにしてくれたらうれしいですね」と竹内教授。

上村さんは「好きなことを徹底できるゼミで個性豊かな人たちが集まっているので、自然と世界観を広げられますし、竹内先生が博識で多様性を受け入れ、ゼミ生の個性を引き出してくださるので、新しい自分も発見できました」と自身の変化を話します。「それに何より、居心地がいいんですよ」

9年目を迎えた竹内ゼミ。多彩な個が共生していることで、今年度もさらなる進化を続けています。

(初出:広報誌『法政』2015年度5月号)

昨年9月にゼミ合宿で訪れた愛知県岡崎市の味噌蔵にて

昨年9月にゼミ合宿で訪れた愛知県岡崎市の味噌蔵にて

同合宿では博物館明治村も訪問。呉服座において、普段は課外活動で客席から見るだけの舞台に上がり撮影した

同合宿では博物館明治村も訪問。呉服座において、普段は課外活動で客席から見るだけの舞台に上がり撮影した