ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

面白いと思ったことは何でも研究テーマになります、抽象概念の可視化をデザインする(情報科学部ディジタルメディア学科 雪田修一教授研究室)

  • 2013年02月05日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)
「回り道した人ほど面白い、迷ったら苦しい方の道を選べ、どんな時も豊富な人生経験から的確なアドバイスをくださる」と慕われる情報科学部長も務める雪田教授と、個性を生かした研究を進める学生たち

「回り道した人ほど面白い、迷ったら苦しい方の道を選べ、どんな時も豊富な人生経験から的確なアドバイスをくださる」と慕われる情報科学部長も務める雪田教授と、個性を生かした研究を進める学生たち

雪田研究室は1~3年生12人、4年生11人が所属し、主に数学的抽象概念を可視化し推論を助ける技術を研究しています。コンピューターに自動的に問題解決させるシステム開発が世界で進められる近年において、反対に、人間自身が考える思考を助けるためのこの分野。雪田教授は「人工知能も課題解決を導くという意味で重要な研究ですが、人類にとっての問題は人間自身が解明しなければ真の解決とは言えません」と同分野の研究意義を示唆します。

研究では主に次の3つをテーマにシステム構築を行います。(1)本学入試問題(数学)を題材にして、その解答について多角的な思考方法を促す「数学的抽象概念の可視化」(2)和声学や対位法を用い、音楽の主旋律に合わせた伴奏としての和音を検証する「音楽データ処理」(3)映画やゲームなど目的や種類に応じた最適な通信環境を考察する「映像配信のアーキテクチャ」。12月11日(火)の授業では卒業論文の提出を目前にした4年生が、関数の図や3D画像、プログラミングのソースコードなど、詳細技術の最終的な方向性を確認しました。

12月11日(火)の授業にて

12月11日(火)の授業にて

しかし、研究においては技術以上に課題設定が難しいという学生たち。確率問題の解答支援システムを開発する音揃圭馬さんが「“ユーザーにとってのわかりやすさ”を考えることに最も注力しました」と言うと、音楽データ処理に取り組む鈴木真夏璃さんは「無数に作り出せる音楽をパターン形成する条件の設定に苦心しました」と研究ならではの難しさを話します。それらを受け、白川淳太さんは「道筋をつけて考えることができるようになりました」。さらに、大手重電メーカーの内定を獲得した丁楠さんは「社会に出てからすぐに生かせる技術も身に付けられました」と言い、国内最大手のポータルサイトサービス企業に就職予定の富野千里さんは「研究を進めてこられたのも、無事に就職が決まったのも、いつも優しく指導してくださる先生のおかげです」と加えます。

「研究にあたっては『何を専門化させるのか』『将来は何者になり、そのための研究として何をどのように進めるのか』に悩む人も少なくないのではないでしょうか。そんな時はぜひ私の研究室を訪ねてください。やりがいのある人生の選択肢を、できるだけ多く提示してあげたいと思います。勿論、既に決めている研究テーマを深めたい人も大歓迎です。学部生であっても国際学会で研究発表できるチャンスもありますよ」(雪田教授)

多様な未来につながる情報科学の数理学研究

白川さんがマセマティカでのプログラミング(左図)により作成した大学入試問題(数学3A)の学習支援システム(左から2番目図)。マセマティカでは他にも様々な推論のための可視化ができる

白川さんがマセマティカでのプログラミング(左図)により作成した大学入試問題(数学3A)の学習支援システム(左から2番目図)。マセマティカでは他にも様々な推論のための可視化ができる

「研究室の学生に研究内容も人生もなるべく多くの選択肢を提示してあげたい、と話すのは、実は私自身もいろいろ回り道をしてきたからです」と言って優しく微笑む雪田教授。雪田教授は大学在学時は物理学、大学院では数学、卒業後は情報科学、その後めぐりめぐって数学と情報科学を掛け合わせた研究に行き着いた経験から、研究室でも幅広い内容を取り扱っているのだそうです。

現在、主軸となっている(1)「数学的抽象概念の可視化」は、マセマティカという数式処理システムにてプログラミングなどを行いながら、数学的推論をグラフ化・対話的可視化させるシステムを開発する研究です。大学受験勉強時、考え方のアプローチを変えることで苦手だった数学を得意科目にした経験を生かしたいと雪田研究室を選んだ白川さんは「方程式自体を理解できれば、一つひとつの問題は謎解きみたいに面白くなります」と数学への熱い思いを語りながら充実した研究成果を披露(右画像)。また富野さんは「マセマティカは3D画像の作成などさまざまな機能を有しているので、楽しみながら学べますよ」と話します。

同じくマセマティカを利用して研究が進められている(2)「音楽データ処理」は数学的理論構造と情報処理学を半々に、(3)「映像配信のアーキテクチャ」は情報処理学を中心的に学ぶことができます。中高時代、吹奏楽部に所属していた鈴木さんは「楽器ならすぐ音が出せるのに、ソフトだと一つの音符からプログラミングで指示しなければならない」と、笑いながらその複雑さを表現。映像に関心の高い丁さんは、「ユニキャストのデータ送信量」の検証を通じて、JavaやC言語を習得しました。

「音楽、映像、ゲームなどに興味がある人はもちろん、『数学を専門にして将来の就職は大丈夫かな』と心配している人も安心してください。本気でやったものはすべて自分の強みになります。卒業生には、IT企業、メーカー、ゲーム会社、財団法人、大学院進学、その他いろいろな人がいます。本当にやりたいことを見つけて探究しましょう」(雪田教授)