ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

高分子化学の最先端研究を通じ、社会還元できる研究者を目指す(生命科学部環境応用化学科 杉山賢次教授ゼミ)

  • 2012年12月04日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)
研究者として、恩師として敬慕される杉山教授(前列中央)と、学部生と院生がともに学ぶ杉山研究室の学生たち

研究者として、恩師として敬慕される杉山教授(前列中央)と、学部生と院生がともに学ぶ杉山研究室の学生たち

「いわゆるプラスチックです」と、研究テーマである高分子化学をわかりやすく教えてくれる杉山教授。電化製品や衣服など、今や日常のほとんどのものに使われているプラスチックにおいて、杉山研究室はその材料である高分子化合物(ポリマー)に関する最先端の研究に取り組んでいることが特徴です。研究の主な分野は、(1)液晶ディスプレイ等の電子デバイスに応用されている「π共役系ポリマー」、(2)コンタクトレンズの保湿成分や紙おむつの吸水体等に用いられる「親水性ポリマー」、(3)一定期間で自然に還る「生分解性ポリマー」、(4)フライパンのテフロン加工に代表される撥水撥油性を有する「含フッ素ポリマー」の4つ。3年次後期に専門分野の基礎知識を習得した後、4年次から大学院生とともに各自が興味関心に沿った研究を進めていきます。

10年先、20年先を見越した研究開発を実践する杉山研究室での活動時間は、月曜から土曜まで12時間以上に及ぶ日もある

10年先、20年先を見越した研究開発を実践する杉山研究室での活動時間は、月曜から土曜まで12時間以上に及ぶ日もある

「π共役系ポリマー」の領域において、青色に光る有機ELの開発に取り組んでいるのは深津亜里紗さん(4年)。既存の手法を用いても期待通りの結果をもたらすことは困難とされるこの研究で、新たな高分子構造を開発すべく挑んでいます。「化学実験は薬品の選定や量、手順など、どれか一つを間違うだけでも失敗に終わる難しさがあるのです」と解説する山田岳史さん(工学研究科物質化学専攻修士2年)は、新たな物質を開発すれば電子機器等の生産を大幅に効率化できるとされるフッ素系末端官能基化ポリマー(「含フッ素ポリマー」領域)を研究。9月には国内外の大学、大手化学メーカーの研究者も参加する高分子化学最大の学会で発表しました。生分解性ポリマーを考察する阿部辰哉さんも、学部4年生でありながら早くも学会発表を経験。「英語で作らなければならない発表用ポスター、わかりやすい伝え方など、すべてが勉強でした」。加えて、異なる性質の高分子化合物を融合させるブロック共重合体(「親水性ポリマー」領域)を考察するゼミ長の大川夏芽さん(4年)は、研究活動全体からも学べることは多いと話します。「杉山研究室は学生主体。真の課題をどう発見し設定するのか、解決ための糸口はどのように見つけるかなど、知識だけでなく将来役に立つ考え方を学べます」(大川さん)

化学薬品をどう安全に取り扱うか、薬品の選定、購入から管理を意識させることで、学生には研究を通じて社会還元できる人材に育ってほしいと考えている杉山教授。NASAからの委託メーカー内定者をはじめ、多くの学生を優良メーカーへ輩出しています。

人間力を育む多彩な課外活動

石垣研究室と合同で行った富士セミナーハウスでの夏合宿にて

石垣研究室と合同で行った富士セミナーハウスでの夏合宿にて

最先端の研究を独自の力で進める杉山研究室の学生たち。「はじめは研究課題の設定さえ、どのようにすればいいかわからなかったですし、実験においても失敗することの方が多い」と言いつつも、常に前向きな姿勢を保持。その理由は「研究室にいるだけで楽しいから」なのだと口々に話します。

杉山研究室では毎日の研究活動に加えて、ボーリングなど月1回のレクリエーション、各自が研究室内で立ち上げたテニス部・カメラ部・スイーツ部・自転車部など、豊富な課外活動を行っています。研究以外の趣味を通じて接する機会が多様にあることで、先輩や同級生の人柄の違う側面に気づくこともあるそうです。また、毎年恒例となっている石垣隆正教授研究室(無機合成研究室)との合同夏合宿では、研究分野の異なる人からの思わぬ質問で自らの研究を客観視することができたり、共通項がないと考えていた研究分野の人と相互解決の糸口を見つけたりすることもあるそうです。

「杉山先生は私たち学生が自ら成長できるよう、さまざまな仕掛けを施してくださっているのかもしれません」と大川さん。杉山教授は研究では学生一人ひとりに裁量を任せる一方、レクリエーションや課外活動に参加して自ら学生に歩み寄り、見守っていてくれるのだそうです。「高分子化学への興味だけでなく、この研究室に入ったのは杉山先生の人柄に魅かれたことも大きな理由です」とゼミ生たち。杉山研究室は2012年度で発足3年目ながら、生命科学部環境応用化学科で一番大所帯の研究室になりました。