ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

スポーツなどソフト戦略による地域活性化についての調査研究(スポーツ健康学部 福岡孝純教授ゼミ)

  • 2012年08月21日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

「スポーツとは、“結び付け命を与える”ものである」

福岡教授(前列中央)とゼミ生たち

福岡教授(前列中央)とゼミ生たち

「近年、国家予算の医療福祉費が増え続ける中で、予防医療としてスポーツの重要性が唱えられるようになりました。しかし、人間の体が脳とそれ以外の身体機能との相互作用から成り立っていることを考えれば、スポーツは政治・経済・文化など人間の活動すべてを支えているとも言えるのです。体を動かせば、勉強もはかどるようにもなるんですよ」と福岡教授。大学においても詰込み型でなく、バランスある教育プログラムが必要だと考え、福岡ゼミでは輪読やディスカッション、フィールドワーク、イベントなど多彩な活動を行っています。

6月21日(木)のゼミ授業では、約1カ月後に迫ったロンドンオリンピックを見据え、「2020年開催予定のオリンピックは、どうすれば東京に招致できるか」についてディスカッションしました。3年代表の長村佳子さんが3候補地の各国情勢を比較した上で「原爆と東日本大震災による原発事故を経験したにも関わらず、すでに原発を再開した日本は稀有な国として注目に値する」と発言すると、上野雄大さん(2年)は「新鮮な目玉も必要」としてロボットを使ったおもてなしを提案。田中千絵さん(4年)は「環境問題も鑑みると既存設備を有効に生かす技術がある点で日本が優位」とコメントし、松元亮介さん(4年)が国民の関心を高める必要性を指摘して具体的なプロモーション方法も話し合われるなど、30人と大人数にも関わらず2~4年生ほぼ全員が発言する活発な議論が繰り広げられました。

オープニングで「人間とは何者か」という福岡教授の哲学講義もあった6月21日(木)のゼミ授業

オープニングで「人間とは何者か」という福岡教授の哲学講義もあった6月21日(木)のゼミ授業

「今日はスポーツに直結した内容でしたが、ディスカッションだけ挙げてもスポーツを基軸に“日中韓の関係”や“技術社会における人間の変化”など多面的なテーマに取り組んでいます」と教えてくれるのはゼミ長の禰宜田康代さん(4年)。「一見スポーツと関係ないように見えますが、すべてつながっているんです」と続け、長村さんは「福岡先生は、研究内容だけではなく、私たちゼミ生が一人の人間として成長できるよう支えてくださっています」と話します。

「スポーツは一部のアスリートのためだけではなく、すべての人のためにあるものです。技術文明の進展により社会における諸問題が単一的な方法では解決できない時代となった今だからこそ、これからの社会を支え、後世に命をつなげるゼミ生たちに、スポーツを広く深く学んでほしいと考えています」(福岡教授)

「オンリーワンになれ」

昨年6月に行ったノルディックウォーキング

昨年6月に行ったノルディックウォーキング

往復の道をノルディックウォーキングして舗装道路と砂浜とのウォーキングの違いを検証した茅ケ崎スポーツクラブ見学や、自然環境で機材を一切使わず“いかに生活や遊びをし、体を動かしているか”について考察したキャンプなど、実践型学習でもさまざまな取り組みを行っている福岡ゼミ。「スポーツと言うと、日本では武道に表されるように“忍耐を強いられるもの”とイメージされる傾向がありますが、本来ギリシャから生まれたスポーツとは遊び。ゼミ生には楽しく感じることで内側から発するものを大切にしてほしいと思っています」と、福岡教授は語ります。

「先日開催した『Slow World Cafe』(*)でのスポーツ観戦イベントは、200人以上の方々にご参加いただき盛り上がりました」と楽しそうに振り返るのは長村さん。「日本とドイツのスポーツコミュニティーの違い」をテーマとしながらも、中学時代に全国優勝し今も続けている陸上100メートル障害やイベント企画、小中学生への競技指導など課外活動にも積極的に参加し、多面的な研究を行っています。「キャパシティの広い福岡先生だから、スポーツを広く深く学べます」という長村さんは、スポーツの第一義的意味であるモチベーションを大切に、日本ならではのスポーツコミュニティー構築を考えたいと意気込みを話します。

「個の多様性を尊重してくださる福岡先生のおかげ」と就職活動について話す石田裕幸さん(4年)は、ゼミに所属しつつも長期にわたる海外インターンシップを実現できたことで、希望していた日本通運国際流通部門の内定を獲得しました。高校生の頃から政治経済に興味を持ち、国内財政支出が最大である社会保障関連費を減らすためには予防医療の要となるスポーツを研究したいとスポーツ健康学部に入学。研究を深めるうちにより世界に目を向けるようになったのだと言います。「毎週レポートを提出していたとは言え、9カ月間も授業に出られない状況を許し、支えてくださるのは福岡先生くらい。先生がいなければ、今の自分はなかったかもしれません」と、当時を笑顔で語ります。

「福岡ゼミはいい意味で方向性がなく、みな自由」と禰宜田さんは説明し、石田さんは「だから主体性も養えます」とコメント。「『とにかく努力してオンリーワンになれ』が先生の口癖なんですよ」(長村さん)

*『Slow World Cafe』は2011年5月、多摩キャンパス・エッグドーム2階にオープンした食堂。