ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

トランスナショナル・ヒストリー研究(国際文化学部 佐々木一惠准教授ゼミ)

  • 2012年08月07日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

「当たり前」を問い直し、一国史を越えた視点で文化と社会を考える

「凄いのに、凄さを見せないところがさらに凄い」と尊敬を集める佐々木先生(前列右から3番目)と、「個性が強いのに他者と協力できる子ばかり」と佐々木先生が温かく見守るゼミ生たち

「凄いのに、凄さを見せないところがさらに凄い」と尊敬を集める佐々木先生(前列右から3番目)と、「個性が強いのに他者と協力できる子ばかり」と佐々木先生が温かく見守るゼミ生たち

現在世界で起きている事象は、何に起因しどのような歴史を辿ってきたのか。異なる文化圏においてどのような影響を及ぼしているのか。立場が変わるとどのように見解も変わるのか。そして、今ここにいる私たちはこうした事象にどのように関わっているのか――。佐々木ゼミでは文化・社会・政治・経済などあらゆる問題を一国史の枠組みを越え横断的に考察する新しい学問分野「トランスナショナル・ヒストリー」について研究しています。

2012年度のゼミ活動は主に輪読を実施。6月20日(水)5限の授業では、概念理解としてのテキスト『グローバリゼーション』(マンフフレッド・B・スティーガー著)の「グローバリゼーションを論ずる視点」を学びました。

司会をゼミ長の中野駿さん(4年)が務め、この日担当の百々佳奈さん(4年)と松沼春佳さん(3年)が要約説明と疑問点を提示。佐々木先生も「それは逆に言うとどういうことになる?」「SA先の国ではどうだった?」など議論を促し、フランスのブルカ禁止法施行や日本の韓流ブームに関わるジェンダー問題から、EUの歴史的変遷、多文化主義が現在直面している問題まで議論が及びました。さらに、“多文化主義政策において、マイノリティとマジョリティの差異が強調されることで、逆に多文化共生が阻まれる可能性がある”といったさまざまなパラドックスを解き明かしました。

6月20日(水)のゼミ風景。何をどう学ぶかもゼミ生が決める学生主体の佐々木ゼミは、4年生2人が3年生1人をOJTすることも特徴

6月20日(水)のゼミ風景。何をどう学ぶかもゼミ生が決める学生主体の佐々木ゼミは、4年生2人が3年生1人をOJTすることも特徴

「佐々木ゼミのメンバーは自分を持っている人たちばかりなんですよ」と活発な議論が行われる理由について中野さんは話し、百々さんは「ディスカッションが激化しても雰囲気が悪くなることは一切ありません。むしろ皆、他者との違いを楽しんでいます」と加えてコメント。さらに百々さんによると、2年生後期で海外留学(SAプログラム)をする国際文化学部の中でも、佐々木ゼミには留学先の国が異なる学生が集まっており、実体験に基づく各国の状況を知ることができ、それが研究にダイレクトに生きているそうです。

「今日における諸問題を考える時、日本の枠組みの中で考えるだけでは見えないことがあります。世の中がグローバル化する今だからこそ、“日本では当たり前の価値観”をもう一度問い直して、文化的背景が違うことを理解した上でいかに他者と向き合い友好的な関係を築いていけるか、という問題をゼミ生には考えてほしいですね」(佐々木先生)

徹底的に学び、遊び、個を極める

公私ともに「個性は強いけれど仲がいい」とゼミ生皆が話す佐々木ゼミは飲み会も盛ん。世代を越えた交流もあり、北海道や中国地方から駆けつけるOB生もいるという

公私ともに「個性は強いけれど仲がいい」とゼミ生皆が話す佐々木ゼミは飲み会も盛ん。世代を越えた交流もあり、北海道や中国地方から駆けつけるOB生もいるという

オーストラリアやオランダなどさまざまな国で暮らしてきた経験から養った多角的視点でゼミ生から尊敬を集める佐々木先生。「佐々木先生の引き出しが多く、何にでも取り組ませて頂ける環境があるからでしょうか、ゼミ生はプライベートでも何かに深く取り組んでいる人ばかりなんですよ」とゼミ長の中野さんは話します。ゼミには、スレンダーで女性らしいのに空手の黒帯を持っている人や、カナダ出身でアイスホッケーをしている女性、ケニアで図書館を建てた人…と多彩な個性にあふれているといいます。

「留学準備で忙しく1年前に所属チームを退団してしまったのですが」と、12年間続けてきたアイスホッケーについて話す百々さん。志望する貿易関連の仕事に就くため、この夏から交渉力や説得力などビジネスに直結した学びを得られるカリフォルニア大学に派遣留学することが決まっています。「私も含めゼミは努力できる人が集まっていますが、それは先生がいつも支えてくれているから。留学も、先生のサポートなしでは叶えられなかったかもしれません」と、留学試験のレポートを何度も添削してもらったのだと振り返ります。

佐々木先生に相談し、ケニアでの図書館設立のために募金活動による資金調達の支援をゼミ生全員にしてもらった佐野友洋さん(4年)。インターンシップを利用してナイロビ(ケニア)に行き、算数を教えるなどの仕事のほかに、独力で図書館を設立しました。設立にあたっては図書館が継続的に利用されるシステムを構築しましたが、途上国の発展には自国主導による経済開発も不可欠だと改めて感じた佐野さんは、内定先の三菱商事で「今後は日本の国益に資するビジネスの一端を担い、途上国を含む世界に貢献したい」と話します。

ゼミ生紹介してくれた中野さん自身も学内外でクラシックを極める個性的な一人。3年生の山本祐人さんは「思い切り勉強したいと思い入ゼミしましたが、期待以上。大学時代に何かを成し遂げたいと思う人にもぴったりだと思います」と話します。

「異文化と触れ合うことで初めて、自分が日本で正しいと思っていたことがそうでないと気付き、また、トランスナショナル・ヒストリー研究にもつながります。そのきっかけになる海外留学が必修としてあるという意味では、国際文化学部ならではのゼミと言えるかもしれませんね」(佐々木先生)