ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

社会教育・生涯学習論(キャリアデザイン部 佐藤一子教授ゼミ)

  • 2012年06月19日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)
「尊敬できる優しいお母さんのような存在」と慕われる佐藤教授(前列中)と、ゼミ生たち

「尊敬できる優しいお母さんのような存在」と慕われる佐藤教授(前列中)と、ゼミ生たち

自己形成の実験場としてゼミを創り、社会教育学を検証

「キャリアデザイン学部らしいゼミと言えるかもしれません」と語る佐藤一子教授。キャリア形成を考える際、その根幹ともなる生き方や社会の在り方といった学問領域・社会教育学について、佐藤ゼミではその実験場さながらに学生が創り上げ、研究しています。第1回目に自己紹介を行い、次3回程度で社会教育学概論を学んだ後、テーマ別の班に分かれてグループワークをする、という1年間の大きな流れを佐藤教授が決める以外は、すべてゼミ生主体。担当の割り振りや合宿先の決定はもちろん、議論の活性化や研究深化のための協働もゼミ長を中心に進めています。

そのため学生のゼミに対する姿勢は、穏やかながらも常に意欲的。5月16日(水)もゼミ長の木田龍一郎さん(3年)が司会を務め、ワークショップ形式で『現代社会教育学』(佐藤教授著)の文献講読を行いました。担当の山口恵理奈さん(3年)が文献をもとに生涯学習の現状報告と課題提起をすると、「ノンフォーマルな教育とは何か」「生涯学習と社会教育とはどのように違うのか」など次々に質問が飛び出しディスカッション。さらに議論は「ゆとり教育の実態」「画一的教育による雇用のミスマッチ」へ展開し、識者として佐藤教授の見解も示されるなど、文献講読第1回目として幅広く生涯学習における政策課題を浮き彫りにさせました。

5月16日(火)のゼミ授業の様子

5月16日(火)のゼミ授業の様子

就職活動真っ只中にも関わらずできるだけゼミに出席しようとしている理由を「社会に出ても役立つから」と口にする4年生たち。佐藤ゼミはゼミ開始以来4年間、就職内定率100%を実現し、かつ「ボランティア論」を研究し区役所に入職した後、防災課職員として被災地に派遣された経験を地元の街の防災対策に生かしている人や、「グリーンツーリズム」をテーマに取り組み国内最大手の航空会社でキャビンアテンダントになった人など、ゼミでの学びを社会につなげた卒業生や大学院生を輩出しています。
また、「雰囲気もとてもいいんですよ」というのは矢内美花さん(3年)。「何でも多数決で決めるようにしている」と前ゼミ長の磯川尚人さん(4年)が話すように、調和を大事にしている佐藤ゼミでは「少し失敗してしまっても、温かく迎え入れてもらえる」と松田俊介さん(3年)。「尊敬できる優しいお母さんのような存在」と青木優佳さん(3年)が言い表す佐藤教授の温かい指導の下、ゼミ生は自らゼミを創り上げ、研究に励んでいます。

アクション・リサーチで社会教育学の真髄に迫る

2月の春合宿 in宮城県石巻市

2月の春合宿 in宮城県石巻市

個々人の技術習得や文化的自己形成から公的教育機関・民間教育事業者の検証や地域コミュニティの創造といった社会構造まで、幅広い考察が必要になる社会教育学。佐藤ゼミでは歴史や社会情勢などを踏まえた俯瞰的な分析を行う一方、「今の自分とはどのように関わっているのか」ゼミ生一人ひとりが常に課題を自らに引き寄せて考えていることも特徴の一つです。その論法ともなっているのが「アクション・リサーチ」。現地に赴き、自ら参加して調査する研究手法です。

既存団体への参加にとどまらず、仲間とともに自ら地域コミュニティを立ち上げたのはゼミ長の木田さん。地元の世田谷で子供たちを集め、自然体験をさせたり、青少年の意見を集めて自治体に反映させたりしています。佐藤教授のもとで社会教育の学問体系を学び、実践と理論との相互作用で研究。「自分が社会教育で育てられたから、将来は育てる側の人材になりたい」と社会教育者を目指しています。

アクション・リサーチを取り入れているのは、個々人の研究だけではありません。今年2月の春合宿では、東日本大震災被災地ボランティアを経験した谷口明生さん(4年)と高畠孝平さん(4年)の提案で宮城県石巻市を訪問。まだ復興途上であるため地域コミュニティへの参加はかないませんでしたが、被災地域の見学や震災を経験した各組織の代表者などから話を拝聴しました。「震災から1年足らずにも関わらず、地域活動を復活させようとしている青年団の方の熱意に感動した」と話す谷口さんは、組織構造面から考察していた「コミュニティ創造」の研究に、人のメンタリティという新たな視点を加えるきっかけになったと言います。

「私がするのは方向性を促し、時に気づきを与えるだけ。ゼミ生には自ら社会教育の面白さをつかんでほしい」と佐藤教授。その思いを受け取っているかのように、ゼミ生たちは「個を尊重し的確なアドバイスで導いでくださるから、前向きに研究に取り組めます」と話します。