ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

環境経済学(人間環境学部 國則守生教授ゼミ)

  • 2012年02月28日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)
12月20日のゼミの様子

12月20日のゼミの様子

経済学の視点から、根本的な環境問題解決に挑む
國則ゼミでは持続可能な社会実現のための環境経済学を勉強しています。経済的手段を用いて環境問題解決に向けた各課題を考察するため、経済学を基礎から学んでいることが特徴。ゼミ活動は2年生と3・4年生に分かれ、2年生は経済学の基礎を輪読により習得し、3・4年生は輪読による環境経済学の基礎に加え、応用として各テーマによるディスカッションも実施、さらに4年次は卒論制作にも取り組みます。また、ゼミ活動をより活発化させるため、発表に慣れることを目的に2年生各自が5分間で自由なテーマの考察を発表する“5分プレゼン”や、2、3年生合同で、3年生が2年生に経済数学の基礎を教えるゼミ生だけの自主的活動もサブゼミとして行っています。

12月20日(火)の3・4年生のゼミでは、今年テキストとしている『環境経済学入門』(C・D・コルスタッド著)の中から「リスク減少の価値」を輪読しました。輪読は担当者が要約を説明後、担当以外のゼミ生が疑問に思ったことを随時質問し、ゼミ生全員が話し合って疑問を解決していくスタイル。今回はリスクを減少するために人々がどの程度支払ってもよいかを考える支払意思額を使い、“期待余剰”と“オプション価格”という2つの尺度について発表担当者である久保山さん(3年)から紹介されました。紹介を受けて、古屋さん(3年)による“経済余剰”の復習や、そもそもオプションとは何かといった基本的な議論から始まり、環境リスクに関する今回の2つの尺度の差異はどこにあるのかについて、五十嵐さん(3年)による数式の解釈を皮切りに、いつものとおり全員参加型で、徹底的な議論が行われました。さらには、取り上げられている事例が現実の環境問題に対してどのようなインプリケーションを持っているのかなどについても活発な質問と議論が展開され、テキスト5ページ分の内容を対象とした90分はあっという間に過ぎていきました。

経済学の理解促進のため、3年生が2年生に数学をレクチャーするサブゼミも開催

経済学の理解促進のため、3年生が2年生に数学をレクチャーするサブゼミも開催

本質的なものを求め、その応用も積極的に考える姿勢で環境経済学を学んでいるゼミ生たち。「難しい」と口を揃えつつも、古屋さんは「部分的な対症療法ではなく、根本的に環境問題を解決する必要性を感じたら経済学の基本の理解は欠かせませんから」と話し、遠藤さん(2年)も「日本全体にとっても国内企業各社にとっても、これからの持続可能性のために必要な分野」と環境問題を研究する意義を述べます。「先生も先輩方もわかりやすく教えて下さるので無理なく学べます」と話す村井さん(2年)に続き、鈴木さん(3年)が「学んでいくと、新聞の環境関連記事を読んでいても経済学的に実現可能か否かがわかるようになって楽しいですよ」と話すとゼミ生全員が首肯。奥深い環境経済学に確かな手応えを感じながら勉強を進めているようです。

ゼミ仲間との忌憚ない意見交換で、自らもゼミも進化

「排出取引」についてディベートした夏合宿

「排出取引」についてディベートした夏合宿

活発なゼミ活動をしている國則ゼミ。しかし、「ゼミが始まった当初は先生がご提案くださった内容をただこなすだけで、『何か質問は?』と聞かれても言葉を発することすらできていなかった」と、ゼミ生は昨年の年度初めを振り返ります。2009年度に國則教授がサバティカル研修を迎えたため、國則ゼミは1年のブランクを開けて2010年度に再開。現3年生は2年生であった昨年から、國則ゼミ再開後の1期生としてゼミを創り上げてきました。

硬直した雰囲気に変化をもたらしたのは、ゼミ中に発せられた“こんなのはゼミじゃない。もっと有意義な活動をしたい”という一言。「熱田さん(3年)が輪読の最中に突然言い出した時は驚きましたが、みんな思っていたこと。良いきっかけを作ってくれました」と大坪さん(3年)。鈴木さん(女性)(3年)は「運営方法を見直したことで、ディスカッションの仕方が劇的に変わりました」と説明し、熱田さんは「何よりも“自分たちが決めたことなのだからやり遂げよう”という責任感が生まれたと思います」と言います。さらに「今年から社会人学生の江口さん(4年)がゼミに入ったことも転機の一つになりました」と鶴岡さん(3年)。夏のゼミ合宿では、『排出(権、量)取引』について研究する江口さんが調査の一環として予定していた東京都庁への質問の内容についてグループディスカッション。「論文作成のための資料の集め方や争点の深め方を知ることができましたし、後日、都庁への訪問に同行させてもらったことで社会での対応も体験できました」と熱田さんは言い、一方の江口さんも「一人では気づけなかった視点が得られましたし、皆の熱意に後押しされて研究内容をより深めることができました」。ゼミ長の萩原さん(3年)は「卒論というゼミ活動としての最終目標が見えたので、来年はサブゼミを学年複合のグループディスカッションにするなど、新しい取り組みも始めたい」と早くも今後を見据えています。

自主的なゼミ活動を積んで問題発掘・解決力、プレゼンテーション力、チームワーク力などを身につけ、いろいろな学校生活で順調な滑り出しを見せているゼミ生たち。「私たち成長できたのは、自主性を尊重して何でも話し合える雰囲気を作ってくださり、また、必要な時はいつでも相談にのってアドバイスをくださった先生のおかげ」と口を揃えます。
「ゼミは自分が持っていない知識や経験、視点を仲間から教えてもらう場、プラスの影響をお互い積極的に及ぼしあう場です。私も含めて、それぞれが無知の知に気づき、成長できるゼミでありたいと思っています」(國則教授)