ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

財産法上の諸問題の研究(法学部法律学科 宮本健蔵ゼミ)

  • 2012年02月21日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)
宮本教授(中列中央)と、ゼミ生たち

宮本教授(中列中央)と、ゼミ生たち

1本の道筋を導き出し、民法における諸問題の最適解を論証

所属する2年間で民法(財産法)の全体を総合的に学べる宮本ゼミでは毎週、輪読により財産法上の諸問題を研究しています。ゼミ生は事前に、主要なテーマに関する判例および学説が載っているテキストを読み込み、関連する判例や文献を収集・分析して時代背景や社会的動向も考慮しつつ判例が導き出された根拠を探り、自分なりの解を推論。ゼミ当日、各自が自らの見解を論証しながら討論を進め、民法への理解を深めていきます。2年生にも関わらず司法書士の試験に挑むほど民法に興味を持つ山本瑞貴さんは「法律は社会のルールであると言われますが、特に民法は私たちの生活に深く関わっているから面白い」と語り、副ゼミ長の松井裕さん(3年)は「民法の研究を通じて人間の本質も学べます」と話します。

12月13日のゼミの様子

12月13日のゼミの様子

12月13日(火)のゼミでは、昭和30年6月2日と昭和29年8月21日の「動産引渡請求事件」に関する最高裁判決をもとに、民法178条(動産物権変動の対抗要件)について考察しました。当該事件に民法178条が適用されるにあたり、動産物権の種類と同条の適用の有無の確認や、動産譲渡担保および即時取得の有無とその証明責任をめぐって活発に議論。さらに、近年の法改正によって考えられる今後の判決への影響についても話し合いました。「二次的に関わる条文にまで目を向けて全体の関連性を把握しなければならないところが難しいポイントです」と松井さん。着眼点を間違えれば妥当な帰着に至るのは不可能。しかし「論拠に行き詰っても宮本先生がヒントを与えて導いてくれる」のだと田澤康平さん(3年)は言い、ゼミ長の宮川文彦さん(3年)も「議論が憲法論議にまで波及しても最後は必ず判例に立ち返る。一本の道筋を見つける研究を積み重ねることで、実感を持って論理的思考力が身につくのを感じられます」と話します。

高度な専門的議論が繰り広げられる分、事前準備の量も少なくない宮本ゼミですが、「半年も経てば慣れますし、どのように効果的に事前研究を進めるかも良い学びになっています」とゼミ生たち。「何事にもメリハリを持って取り組む人が多いのだと思います」という大塚ゆりえさん(4年)に続き、ゼミ見学の際に同じエンターテインメント系サークルで一番華やかだった先輩が巧みにディベートしている姿を見てあこがれ、宮本ゼミに入ったという目黒有実子さん(4年)は「遊ぶ時は遊んで学ぶ時は学ぶ、その方が格好よくないですか? 宮本先生ご自身がそういう方」とコメント。ゼミ生たちが自主的に学ぶ姿勢は、週4回ジムで身体を鍛え、研究・教育とプライベートの両方に熱意を傾ける宮本教授の下、養われているようです。

国家Ⅰ種合格者、法曹、大手民間企業の内定者を続々輩出

学ぶ時には徹底的に学ぶ宮本ゼミは、夏合宿でも7コマ分ものディベートを行う

学ぶ時には徹底的に学ぶ宮本ゼミは、夏合宿でも7コマ分ものディベートを行う

「“全体の関係性をつかんで実質的な価値判断をし、問題の本質を見極めて理論構成の上、最適解を導く”という研究過程は、法律学に限らず社会のあらゆる分野で役に立ちます。学生には、この“一歩掘り下げて考える”思考力を身につけてほしいと思っています」と宮本教授。教授の思いを着実に受けて思考力を磨いてきたゼミ生たちは、就職難と叫ばれるにも関わらず、学んできた成果を存分に発揮できる未来を掴んでいます。

見事、国家公務員採用Ⅰ種試験に合格したのは大塚さん。「合格できたのは宮本ゼミのおかげです。試験の一つである民法の専門論文作成では日頃の研究成果をそのまま生かすことができましたし、ゼミ研究に限らず、先輩方に参考書の選び方や苦手科目の克服法まで相談にのって頂きました」と話します。今年度のみならず、宮本ゼミはこれまでも法曹界・公共機関・民間企業へ優秀な人材を多く輩出。OB・OG会も定期的に開催しているため、就職に強い土壌が伝統的に培われてきているのです。地方公務員として就職予定で、2年生の時に既に行政書士の資格を取得した宇田川健太さん(4年)も、就職活動においてゼミ研究が大きく役立ったと考える一人。「暗記以外の論文作成や面接は、日頃どれだけ考えられているかが顕著に表れてしまう部分で、かつ、一人では対策が難しい部分。ゼミでディベートを重ねたことで、鍛えることができました」とコメント。さらに、業界最大手の証券会社に内定を獲得した目黒さんも、「就職後は営業職に就く予定ですが、有効な資料の探し方、相手を説得するための理論構成、自分の意図を正確に伝えるための話し方など、ゼミで培ってきたことは就職後も生かせると感じています」と、宮本ゼミでの学びの多さを改めて振り返ります。

「法曹界に進む人ももちろん少なくありません」と弁護士を目指す松井さんは言い、「進む道だけでなく宮本ゼミのメンバーは個性も豊かなので、将来の道が決まってない人でも参考になる先輩がきっと見つかると思います」と大塚さん。自己実現と社会貢献を同時に叶えられる法曹を大学入学当初から志し、2年次から宮本ゼミに所属する宮川さんは「ゼミには3年から入る人が多いですが2年から入るのもオススメです。その分、将来の模索や思考力の鍛錬など早くから準備ができますから」と後輩にアドバイスします。