ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

「多文化共生社会」実現に資する研究(キャリアデザイン部 山田泉教授ゼミ)

  • 2012年02月14日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)
山田先生(前列中央)、神吉先生(後列右)と、ゼミ生たち

山田先生(前列中央)、神吉先生(後列右)と、ゼミ生たち

個をぶつけ合い磨く、多文化共生研究

山田ゼミは「多文化共生」という大きな概念のもと、経済や教育、文化、民族とグローバル社会における幅広い問題を考察しています。すべての経験は学びであり、自発的な課題意識こそが経験を促す源になるという山田教授の考えから、ゼミ運営は学生主体。ゼミ生は今年度、年間テーマとして「脱グローバリゼーション」を掲げ、前期は『経済成長なき社会発展は可能か?』(セルジュ・ラトゥーシュ著)の輪読を行い、後期は3、4年生混合で2つのグループに分かれて研究活動に取り組んでいます。

多文化共生社会への障害の一つとして社会のグローバル化を挙げ、脱グローバリゼーションの解決策として脱経済成長社会(以下、脱成長社会)を考察しているゼミ生たち。12月上旬のゼミでは、教育グループは「脱成長社会での教育の在り方」を、経済グループは「脱経済成長下での真の豊かさとは何か」について、グループ研究の中間報告をしました。

12月3日のゼミの様子

12月3日のゼミの様子

「課題研究の発端は、世の中の技術は進歩しているのになぜ余暇が増えず、むしろ仕事が増えているのかということでした」と話すのは経済グループに属するゼミ長の中川沙緒里さん(4年)。油井啓美さん(4年)は「山田ゼミは社会人学生も所属しているため、ストレートで大学へ入学した学生だけでは得られない気づきを得られる」と説明します。さらに、多世代が所属する利点を「特に社会人学生の方々からは、客観的な事実に基づいた調査の上で現状分析と解決策提案をすることが重要といった、社会で正しいとされている道筋を教えて頂けることが勉強になります」と清水由起子さん(4年)。一方、社会人学生の伊勢仁志さん(3年)も「若い世代と話すことで凝り固まっていた意見が覆され、柔軟な発想ができるようになりました」と言い、若い世代との研究成果を感じているようです。

さらに、「ゼミ仲間のおかげで希望する企業への就職が決まりました」と話すのは赤穂育美さん(4年)。就職活動当初、ゼミ仲間に他己分析してもらい自分を見つめ直せたことで、即内定を獲得したと思います。「容赦ない指摘は、その時は身を切られるようですけれど」と笑います。

他者と意見を交わすことで議論の内容も思考力も磨いてほしいと考えている山田教授。2012年度、サバティカル制度を利用する山田教授の代理を務める神吉宇一兼任講師も「学生だからこそできる豊かな発想で社会を見つめてほしい」とゼミ生への思いを語ります。

学習意欲を刺激する夏の海外合宿

タイ合宿にて

タイ合宿にて

議論を活発化させる山田ゼミの取り組みは、学生主体のゼミ運営やグループ研究の採用だけではありません。最大の特徴は、夏に行われる海外合宿。今年は3泊4日でタイを訪れ、タイ商工会議所大学(以下、UTCC)の学生との勉強会を開催しました。互いの文化や大学生活、就職状況などについて発表するとともに、勉強会の後には伝統芸能や食文化を実際に披露。また、2・3日目にはUTCCの学生の案内で、バンコク市内をはじめ、山岳民族の住む村や離島への観光も楽しみました。

「文化の違いを目の当たりにし、今まで勉強してきた多文化共生をリアルなものとして感じられた」と話すのは、今回のタイ合宿が初めての海外旅行だったという市川祐介さん(3年)。勉強や就職の悩みなど同じ世代ならではの共通項があった一方、「成績評価の公表や進級の難しさなど、大学の学び自体にギャップを感じました」と瀧田靖子さん(3年)は言います。中川さんも「UTCCの方々の勉強意欲に圧倒されました。今回の勉強会はUTCCの皆さんが日本語クラス所属ということもあり全て日本語で行われましたが、より深く意思疎通を図るためにも私たち日本人も語学を学び、UTCCの皆さんに歩み寄る必要性を感じました」と振り返ります。また、伊勢さんは途上国と位置づけられるにも関わらず幸せそうなタイの方々と触れ合ったことで改めて日本社会を見つめ直し、「脱成長の研究は難しいですが、先進国ならではの幸せとは何か、日本社会の閉塞感をどのように打破できるか考えていきたい」とゼミ研究へのさらなる意気込みを見せます。

山田教授の人的ネットワークの下、タイに限らずアジアを中心とした海外大学と積極的な交流を図っている山田ゼミ。山田教授は「私は学生に学びの機会を提供しているだけ。主体的な学生ばかりのため、私が学生から学ばせてもらうことも多い」と言い、ゼミ生は「山田先生は自ら経験することが大切と考え、失敗するであろうことも“ともに歩む”という姿勢で敢えて見守っていてくださる。だから机上の空論ではなく、経験に基づいた思考力を身につけられます」と話します。