ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

アジアにおける社会・経済・政治問題(社会学部社会学科 吉村真子教授ゼミ)

  • 2012年01月31日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)
吉村教授(写真前から2列目の右から3番目)と、ゼミ生たち

吉村教授(写真前から2列目の右から3番目)と、ゼミ生たち

アジア研究を通じ、世界の中の日本とグローバル社会における自分を考察する

「グローバル化がさらに加速する中、次世代の日本を担う一人としてアジアへの理解を深める必要があると感じ、吉村ゼミに入りました」と話すのは、馬場景子さん(3年)。彼女は社会学部のSA(スタディ・アブロード)プログラムで米国に留学し、留学先でも日本人としてのみならず、アジア人としての意見を求められ、さらにアジア諸国について学ぶ必要性を感じたと言います。国際社会問題の視点からアジアにおける諸問題を政治・経済・文化・環境なども含めて幅広く研究している吉村ゼミでは、地球規模で社会問題を捉えるからこそアジアに目を向ける人や、グローバルな視点で日本を客観視できたことで国内の課題に向き合おうと試みる人も多く在籍しています。そのため2年生から始める吉村ゼミでは、2・3年生合同のゼミでアジアの諸問題を研究し、4年次の卒業論文でアジア以外のテーマを選ぶ学生もいます。ゼミ生はグローバルな視点で幅広い課題に取り組んでいます。

11月17日(木)のゼミ

11月17日(木)のゼミ

11月17日(木)の2・3年生合同のゼミでは、高校時代に留学した米国の経済格差に衝撃を受け、経済格差の大きい近隣国を研究しようと『韓国における脱北者の社会適応』に取り組む三輪卓也さん(3年)をはじめ、2年生8人が進級論文の中間報告をしました。アジア地域は多民族・多宗教が共存し、経済格差、民族紛争、領土問題などさまざまな課題を抱えているからこそ、議論も多角的な意見交換が不可欠。政治体制や民主化、国民統合やアイデンティティ、資本主義経済のパラドックス、当該国間だけでなく諸外国との関係性、さらに、論文での表現や語句の違いで政治的立場が異なることにまで議論が及びました。

「先生のご指摘は鋭くて深いから、研究が進むほど熱意を持って取り組むことができます」とこれまでを振り返って述べる三輪さん。熱意が行動を促し、長期休暇を利用して海外調査に行く仲間も少なくないのだと言います。また、池谷勇志さん(4年)は吉村ゼミで国内外の研究を深めたからこそ就職活動を成功させた一人。「先生がよくおっしゃるのは、問題を多角的に捉え、自分に結び付けて考える重要性です。途上国支援に興味を持ち入ゼミしましたが、そこから発展して卒論のテーマでBOPビジネスを学び、グローバル企業も多く拠点として構えている地元・静岡への貢献を通じて少しでも世界の役に立てればと思うようになりました」と、卒業後に進む地元銀行での意気込みを語ります。

就業力も身につく多彩な研究活動

サブゼミの様子

サブゼミの様子

「吉村ゼミはとても“お得”なゼミ。就業力も身につけられます」と馬場さんが話すように、プレゼンテーション力、コミュニケーション力、課題解決力、人を巻き込む力、リーダーシップ力などをも養える吉村ゼミ。その秘訣は、グループ体制によるゼミ運営と、その体制を生かした多彩な研究活動にあります。年度はじめの授業で2・3年生5~6人のグループで班を構成。吉村教授の下で行うゼミに、サブゼミと呼ばれるゼミ生主体による事前のグループワークを加え、主に次のような活動を実施しています。

年度初めに新聞記事を用い、2年生がアジアの時事問題について報告する通称“時事問題プレゼン”は、ゼミ生にとって緊張感あふれる課題の一つ。ゼミで初めて報告する2年生は課題発掘力やレジュメをまとめてきちんと報告する力を、3年生は2年生を指導して議論を進める力を、文献購読以上に問われるからです。多岐に渡るテーマが扱われるため、ゼミ生全員が後期の論文へ向けて多くの気づきを得られる機会でもあります。

1年間で1冊マスターする文献購読は、1つの班が1章分を担当し、毎週2章のペースで進行。担当班は要点をまとめレジュメを準備することだけでなく、サブゼミで事前にグループ内で議論してゼミで予想される争点を探り、必要な資料を準備します。ゼミの報告も含め、3年生の指導の下、2年生がレジュメの準備などを進め、2年生と3年生が協力して責任感を持って役割に臨みます。

ディベート大会は、学期末のまとめとなる一大イベントです。3つのテーマを設けて通常の班とは異なる3グループを編成し、各グループが肯定派と否定派に分かれてディベートし、聴講側となる2グループが審査にあたります。採点は論理性のみならずチーム体制やマナーも対象となるため、自らの社会性を客観的に見直す場にもなります。

同じ報告班の先輩の馬場さんは「2年生が私たちを信頼していろいろなことを相談してくれるから視点が広がり、専門分野への研究も深まります」と語り、後輩の三輪さんは「先輩と事前に議論を交わせるからこそゼミでもより多くの学びを得られます」とコメント。また、三輪さんは「吉村先生も時には厳しいご指摘をくださいますが、それは僕たちゼミ生に期待してくれているからこそ」と続け、ゼミ生は「研究を通じて先生の期待に応えたい」と話します。