ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

身体表現論(国際文化学部 鈴木晶教授ゼミ)

  • 2011年12月05日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)
鈴木教授(前列中央)と、ゼミ生たち

鈴木教授(前列中央)と、ゼミ生たち

人生を豊かにする表象文化研究
“「こころ」と「からだ」を総合する”をテーマに、鈴木ゼミ(通称「晶ゼミ」)では身体を題材にした文化芸術を研究(表象文化論)しています。ゼミ活動は、書籍や論文の輪読、美術・演劇を鑑賞した上でのディスカッション、自由なテーマでの個人研究発表の3つを行う本ゼミと、学生主体で映像を制作するサブゼミを主に実施。鈴木教授は、「表象文化は人生を豊かにする学問。ゼミ生には長い人生のために、表象文化を通じて社会と自分を見つめてほしいと思っています。だから、社会に出てすぐに生かせるスキルを身につけたい学生には合わないと思いますが」と笑って話します。

11月11日(金)の本ゼミでは、『映像学原論』(ミネルヴァ書房)第六・七章の輪読と、個人研究発表を行いました。
輪読では、はじめに今回担当だったゼミ長の平野駿(4年)さんが、映像批評はそれ以外の批評と比べて特異性が高いことを説明。鈴木教授が、音楽やシナリオなど映画は様々な要素が含まれているからこそ批評自体も複雑化している構造を解説し、ゼミ生たちは映画批評について考察しました。
個人研究発表は、森勇平さん(4年)と加藤麻美さん(4年)が経過報告。「子供の嘘の発達と認識」を研究する森さんは、子供が嘘をつく原因と習得方法を調査発表し、鈴木教授は思いやりから出る嘘など、嘘のパラドックスについて指摘。「外に向かうメディア、内に向かうメディア」をテーマに、携帯電話によるコミュニケーションスタイルの変化を報告した加藤麻美さん(4年)の研究では、うつ病の増加や資本主義経済の人間生活への影響にも話題が展開しました。

11月11日(金)の本ゼミの様子

11月11日(金)の本ゼミの様子

「先生がいつもおっしゃるのは“当たり前のものを疑ってみる”こと。先生としてもクリエイターとしても尊敬しています」と口を揃えるゼミ生たち。宮内こなつさん(3年)は「人生を豊かにしたいと思ってこのゼミに入りましたが、他にも学べることも多い」と話し、平野さんは「仲間との協調や議論を通し、社会性や社会構造、人間の本質まで学べます」とコメント。また、留学先の海外でアートに囲まれた人々の暮らしを目の当たりにしたことをきっかけに晶ゼミに入った秋山黄菜里さん(4年)は「経済や経営など実務的な研究をアピールする学生が多い中、映像制作は多くの企業に良い印象を持っていただけました」と就職活動のエピソードを語り、ゼミ生は「学生生活を充実させたい人はぜひ晶ゼミに来てください」とメッセージを送ります。

映像制作を通じ、人間を知り、コミュニケーションの本質を学ぶ

11月下旬のサブゼミ。12月6日(火)の学会発表に向け、映像チェックや編集に励む

11月下旬のサブゼミ。12月6日(火)の学会発表に向け、映像チェックや編集に励む

「大学時代を振り返った時、“これをやり遂げた”と言える何かに取り組みたいと思っていました」と高校時代を振り返って話す吉野詩織さん(3年)のように、大学生活を映画制作に掛けているゼミ生たち。機材の種類や撮影手順など仲間同士で教え合って、シナリオ作成、演技、撮影、音声録音、編集といった映画制作に関わるすべてをゼミ生全員が担えるようにし、年末に開かれる学会での発表(※)を目標に、サブゼミとして毎日のように映画制作に取り組んでいます。

今年制作しているのは、健康を望むあまりに自殺してしまう「健康自殺」と、体験談しか描けない小説家が執筆のために死を選ぶ「小説の男」の、2つの物語が交差しながら進む作品。シナリオを作成したゼミ長の平野さんは「ただ“楽しかった”というだけでなく、多様な価値観が混在する今の社会で、鑑賞者に自分なりの幸せとは何かを考えるきっかけにしてもらいたい」と作品の意図を話します。

人の死生観を映し出すテーマなだけに、制作上の困難が少なくない現場。しかし、映画への情熱の中に自分たちの作品を客観視する冷静さを兼ね備えることで順調に制作を進めるその秘訣を、今泉一輝さん(4年)は「他にも映画制作を行っているゼミはありますが、晶ゼミは批評に重点を置いているため、“見せる”映画、“見てもらえる”映画とはどのようなものなのかを常に意識できているのだと思います」と語り、また、五十嵐晋平さん(4年)は「カメラの使い方から映像の概念まで、ゼミで先生に教えてもらえることもあります。今日のゼミでも“批評も納得されるだけのクリエイティヴィティが必要”というのは大きな学びでした」と話します。

「ジェスチャーも含め、コミュニケーションは人間社会の基本です。その意味で、表彰文化は人間を学ぶ学問でもあるのです。知識だけでは得られないものをこのゼミで得て、それが今後の彼らの人生に少しでも役立てば嬉しいですね」(鈴木教授)

※12月6日(火)午後にボアソナード・タワーで開かれる国際文化学部の学会にて、鈴木ゼミの制作映画が発表される予定です(晶ゼミの映像上映は16時05分~16時35分、於BT0300)。入場無料で見学自由。「興味をお持ちの方はぜみ見に来てください」(ゼミ生一同)