ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

政治理論(法学部政治学科 杉田敦教授ゼミ)

  • 2011年11月29日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)
杉田教授(前列中央)と、ゼミ生たち

杉田教授(前列中央)と、ゼミ生たち

多義的な社会すべてに通ずる政治を学ぶ
「“政治学”というと政党政治や選挙制度をまず思い浮かべる人が多いかもしれませんが、政治は人間の営みにおいてどこでも起こる活動。つまり、国家のレベルだけでなく、社会の中で、家族の間でさえ存在するのです」と語る杉田教授。杉田ゼミでは幅広いテーマについてのディスカッションを主に行っています。毎週金曜日に2時限連続(3・4限)で開催。3限はゼミ生が主体となりテーマ設定から運営まで手掛け、政治に関係する問題を数人ごとに議論するグループディスカッションなどを、4限は杉田教授がファシリテーターを務めての輪読を実施しています。

10月28日の3限は「代理母」をテーマに話し合いました。担当の班が概要・問題点・論点を説明後、各班のメンバーが均等になるように分かれてグループ構成。ゼミ長を務める井口沢さん(3年)のグループでは、西田彩乃さん(2年)が途上国の女性への負担など代理母をビジネス化した際の問題を提起すると、小泉和也さん(2年)は規制設定を提案。井口さんが国内裁判の事例を挙げ、代理母出産のための制度構築の前に民法を見直す必要性を述べると、石川愛梨さん(2年)は子供の国籍や帰属意識の問題へと話題を転回。本間達也さん(2年)は家族形態の複雑化や子供の心理作用の課題を提示し、さらにグループ内では同性愛者や非嫡出子への見解といった倫理観に話が及びました。タイムアップとなり、各グループの代表がディスカッションの内容を報告。ビジネス化にかかわる課題を話し合ったグループが多かったことを受けて、杉田教授は生命倫理にかかわる問題については倫理的な正当化可能性という論点も大きいと指摘しました。

10月28日3限のグループディスカッション風景

10月28日3限のグループディスカッション風景

同日4限は『支える―連帯と再分配の政治学(政治の発見 第3巻)』の第7章を輪読。世界の貧困問題について2名の米国哲学者の視点で対立的に書かれた同章に関し、はじめに担当者が概要を説明した後、事前にゼミ生が提出した感想をもとに論じ合いました。貧困対策は国内が先か、格差のより大きい国際的な平等化が先かという問題に関し、西田さんは先進国の多額な支援にも関わらず途上国の国民にまで支援が届いていない問題を挙げ、さらに脇屋夏未さん(2年)は資本主義の下でのアンフェアトレード(不公正な貿易)の問題点を指摘。大木智さん(3年)は格差問題は植民地時代の奴隷制度と関連すると述べました。今回の輪読は「貧困に苦しむ人たちを助けたいという思いは誰でもある。具体策こそが重要」との結論に至りました。

「最近は善/悪といった二元論で社会的課題を議論する傾向が高まっていますが、物事はつねに多義的です。ゼミ生には政治を身近に感じ、社会を多角的視点で捉えられる人材になってほしいと思っています」と杉田教授は話します。

個性の尊重・共生で、学びと遊びの楽しさが凝縮する夏合宿

夏合宿での輪読の様子

夏合宿での輪読の様子

社会における価値の多元性について日々学んでいるからこそ、個性を尊重し合う雰囲気があるのが杉田ゼミ。それは合宿でも表れています。

「普段のディベートも、激論を交わすというより、自らの意見を出し合うという感じですが、レクリエーションを行う時も団結して活発に何かをするというより、むしろ各自が自らの世界を楽しんでいます」と説明するのは、副ゼミ長を務める星萌実さん(3年)。「個性の強い人が多いのかもしれません」と続ける小泉さんが、しかし「各々が自分勝手に行動するのではなく、杉田ゼミもメンバーは互いを尊重し合って共生しているのです」と話すように、今年の夏合宿について聞くと、ゼミ生からは「前夜の飲みすぎで果実酒づくりに参加しそびれてしまった」「自分の手でうどんを作れることに驚いた」「バーベキューの時に先輩方と話せたことで杉田ゼミに溶け込めた」など、思い思いの感想が返ってきます。

毎年、春には3年生のゼミ論発表を兼ねて、夏は入ゼミした2年生を歓迎する意味も込めて、2回合宿を開催しており、今年の夏は2泊3日で秩父を訪れた杉田ゼミ。「しっかりゼミ研究にも取り組んでいますよ」と井口さんが話す通り、6コマ分ものディベートと輪読にも取り組みました。「社会の幅広い事柄に目を向けて考え、自らの意見を持っている人が多いので、杉田ゼミでの議論は面白い」と本間さん。井口さんはさらに「他のゼミの学生とディベートした際に、難しい問題に ついては“自分との関わりが遠いから考えられない”と言われて残念な気持ちになったことがありますが、杉田ゼミでは難しい問題や異なる意見に直面した時でも話し合いを止めることは決してありません。皆、考え続けることに意味があると思っているのです」とコメント。

ゼミ生たちは「どんな人も意見が言いやすいので、落ち着いてゼミ研究に取り組みたい人には特にオススメだと思います」と、これからゼミを選ぶ後輩にメッセージを送ります。