ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

異文化コミュニケーション(国際文化学部 鈴木靖ゼミ)

  • 2011年03月22日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

アジアの視点から日本を考察する

鈴木靖教授ゼミでは、“アジアから見た日本”を大きなテーマに中国や台湾の映像作品や文献の分析、現地交流などを通じて比較分析しています。「他者(アジア)の立場、視点に立って自分(日本)を客観的に見つめ直すのがゼミの大きな目的のひとつ。常に相手の視点に立って考えること、そして可能な限り現地取材に行ってもらうことなどを学生に求めています」と鈴木教授は話します。

前期は、台湾のテレビドラマ「風中緋櫻」(全20回)をテキストにしました。このドラマは、1930年10月、日本統治下の台湾で起こった原住民による大規模な抗日蜂起事件、『霧社(むしゃ)事件』を背景とした社会派人間ドラマです。双方に多数の犠牲者を出した過酷な歴史のみならず、生活習慣や価値観、宗教観など異文化の衝突、葛藤などが描かれ、数々の教訓が内包された作品です。ゼミでは、中国語のできる学生たちが手分けして全編の“映像字幕”を作り、このドラマに込められたメッセージと、日台間の歴史認識のずれについて考えました。

後期の個人研究で、このドラマの悲劇の主人公である「花岡一郎」、「花岡二郎」という日本名を持っていた原住民の警察官をクローズアップしたのがゼミ長の木村早也香さん(4年)。2年次にSA(スタディ・アブロード:留学生以外の学部生全員が参加する海外留学プログラム)で中国・上海外国語大学に留学した語学力を生かし9月には約1週間、現地取材に出かけました。「(台湾語まじりの中国語での)聞き取りなど苦労しましたが、関係者の方はインタビューにも長時間、親切に応じてくださいました。鈴木先生には現地の関係者への取材依頼の手紙の書き方から添削いただきました」と振り返ります。気遣いと積極的なリーダーシップで、個性派ぞろいの少人数のゼミをまとめていた木村さんは、この研究成果を法政大学懸賞論文に投稿し佳作を受賞しました。

  • 個人研究の発表風景個人研究の発表風景
  • ディベートで論戦することもディベートで論戦することも

ICTを活用した研究も推進

長野県白馬のゼミ合宿で(2011年2月)

長野県白馬のゼミ合宿で(2011年2月)

木下雄介さん(4年)は「私はSAではイギリス・リーズ大学に留学しました。やはり、日本人ならアジアのことを知らなければと考え、このゼミを選びました。学生の意見を尊重してくださる先生の下で、楽しく学んでいます」と話します。卒業研究では、戦時中、日本が英国人を含む連合軍捕虜や現地の人々の犠牲の上に建設した泰緬鉄道について関係者の証言を調査し、これを戦争の悲惨さを後世に伝える、負の歴史として世界遺産に登録できないかと提案しています。また、鈴木教授は語学学習やコミュニケーションツールとしてICT(情報通信技術)を活用した研究も進めており、木下さんもe‐ラーニングの英語バージョン作成サポートも担いました。

ゼミ生の中には、この情報分野を調査研究テーマとしている学生もいます。今菜月さん(4年)は、(株)Lang-8運営の外国語学習者向けの相互添削サイトの研究をもとに、学生が自らの学習成果を蓄積、公開するためのSNS型e-Portfolioについて研究しました。「ICTを活用すれば外国語学習はより充実したものになります。またe‐ポートフォリオを就職活動で利用したり、卒業生の生涯学習の場として活用したいと考えています」。今さんも、この研究成果を法政大学懸賞論文に投稿し、入選しています。そして、その提案はいま国際文化学部独自のSNS型e-Portfolioであるfixiに結実しています。

ゼミ生の中には、本学の派遣留学生試験に合格し、第二の留学へと向かう人も少なくありません。「語学力や、ICTを活用し、歴史や相手の文化背景をきちんと理解しこそ、異文化コミュニケーションは成り立ちます」と鈴木教授。ゼミ生たちの自主的な学びと成長を優しく見つめ、しっかりと支えています。