ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

変化する社会と建築(デザイン工学部 建築学科 大江新研究室)

  • 2011年01月24日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2011.1.24
新しい変化にこたえる都市計画

大江教授の「建築・都市計画研究室」(修士2年7人、修士1年9人、学部4年10人)では、周辺地域との関連性や自然特性、歴史特性などに着目しながら、社会や技術の急激な変化を視野に入れつつ、さまざまな新しい要求に対応しうる都市と建築の計画手法を研究しています。「ここ数年は特に『東京22世紀』という大きなテーマを設定。人口減少や財政縮小、地球温暖化などの構造変化を意識し、学部生や院生たちと考察してきました」と大江教授。「これまで膨張する一方だった大都市東京では、望んでも得られなかった隙間やゆとりだが、これからの人口減少社会の中では、やっとそれがかなえられる段階に入ってきました。ひたすら大量の自動車を効率的に流すための広い道路も、車線を減らしてそこを人や自転車の空間へと変えて行くことが可能なのです。また大雨で浸水しやすい下町や河川沿いの低地帯を、水鳥や芦の生える湿原公園に戻して行くことも夢ではありません」と続けます。

夏前はサブテーマについて個々のリサーチを実施。夏合宿でそれらにもとづく建築提案のコンセプトを各自発表、10月までに3グループ間で具体的な提案のまとめを行い、表紙デザインの競作も経てやっと報告書が完成しました。“情報化”班として研究に取り組んだゼミ長の足立祐也さん(修士1年)は明るいムードメーカー。「研究への真剣な取り組みに加え、皆仲よくイベントにも熱心な研究室です」とゼミの魅力を語ります。学部4年時には、住戸間のコミュニケーションを重視した集合住宅を提案し、卒業設計をまとめました。「若者と年長者が交流できる下町の温かさがコンセプトでした。皆が1ケ月ぐらいゼミ室に泊まり込み、充実した体験でした」と続けます。

現4年生は、今まさに卒業設計の真っ最中。徹夜可能な小金井キャンパスで日夜奮闘しています。卒業論文で扱った内容を設計に活かそうとする学生も多く、どんな作品ができあがるか楽しみです。

  • 大江教授と明るく仲が良い院生たち
  • 含蓄に富む大江教授の指導を受けながら研究

アイデアと熱意が拓く建築の可能性

市ケ谷キャンパスの名建築55・58年館をフィールド調査

市ケ谷キャンパスの名建築55・58年館をフィールド調査

熊谷浩太さん(修士2年)が仲間と試みた研究テーマは「timber city project」。既存のオフィスビルの上層部にtimber(木材)を用いて増改築を施すというコンセプトです。大江先生からは『社会変化に応えうる建築を意識しなさい』と教えられているという熊谷さん。「今、都市は窮屈です。ビルなど既存の建築を減築し、木造で増築することで、サステイナブルな温かみを目指しました。市ヶ谷田町校舎の上部に約1800平米の木造共同作業スペースを設置するプロジェクトも作成しました」と模型を手に熱く語ります。JR東日本に就職が内定。街や地域に根ざした駅空間の設計に存分に腕を振るいたいと張り切っています。

一方、狩野輝彦さん(修士2年)は“オフィスにおける外部空間のあり方”に着目しました。「息苦しさをなくしてそこに居ることを楽しめるように、バルコニーに連続するvoid(空洞)のスペースを盛り込みました」と狩野さん。Voidのある穴あきチーズのような建物はユニークなデザイン。「ビル風対策も意識していますが、なにより街の様子を眺め、そして外から眺められることで刺激を受けながら仕事に取り組むオフィス環境を提案しました」と強調します。建築学生たちは皆、“ポートフォリオ”という制作集を作って就職活動でアピールに務めます。大手設計事務所に内定した狩野さんのポートフォリオにも、あふれんばかりの情熱がこめられていました。

計画系研究室のなかでも、大江研は都市レベルのマクロな視点から、個々の建物や部屋などミクロな視点までを意識した広い視野の研究に取り組めるのが魅力だと、院生たちは話します。「自分からテーマを見つけられる人が研究を高められるのです」と大江教授。それぞれの夢を描く学生たちに分かりやすくアドバイスします。