ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

ゼミは寄港地(社会学部 中筋直哉ゼミ)

  • 2010年11月29日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2010.11.29
正統派ゼミスタイルで社会学的視点を培う

「人びとの局所的で多様な生活の営みがあり、そのパーツが絡み合って成り立っているのが社会です。学生たちにはまず、それを総体的かつ具体的に把握する社会学的視点を培ってもらいたいと思っています」と中筋教授は語ります。中筋教授が専門とする地域社会学は、地域社会の構造と変動を分析する学問分野、マジョリティ(多数派)からの視点とマイノリティ(少数派)からの視点を交差させるなど、複眼的な視点があってこそ深い理解が可能です。

ゼミの大きなテーマは「地域社会の構造分析」です。授業は学年別に実施。基礎力を養うために、2年次には、社会学の基本概念に関する文献をテキストに講読を行っています。3年次には地域社会学の専門的なテキストを用います。いずれも、座学とディスカッション中心の地道でオーソドックスなゼミスタイルですが、常に熱く学問を語る中筋教授に触発されつつゼミ生たちは意識を高めていきます。3年次の秋口からは順次、卒業論文のテーマ構想発表と討論を行い、4年次の執筆に備えます。

11月中旬の授業では3人が構想発表しました。ゼミ長の竹川昌宏さん(3年)が考えているテーマのひとつが『限界集落と都市』。 限界集落(過疎と高齢化が進み、地域社会の維持が限界に達している集落)という言葉の提唱者である大野晃氏や元テレビ記者の曽根英二氏の著書を参考文献にし、フィールド調査も模索中です。「社会学は枝葉が広いのが特徴です。自分が今まで“経験”として感じてきた常識がゆらぎ、更新されるのも興味深いところです」と竹川さん。「2005年を境に日本は人口減少社会に突入しています。限界集落と都市との関係、また都市部での限界集落化している地域の考察などを含め、広く過疎について考えたい」と意欲をみせます。

  • 校外見学で中央区郷土天文館を訪れた際に佃島大橋で記念撮影
  • 3年生のゼミメンバーたち

皆で知識を共有、フィールド調査も活用

妻籠宿での夏合宿でフィールド踏査

妻籠宿での夏合宿でフィールド踏査

“ゼミは寄港地”。中筋教授は、ゼミ生たちに、よくそう語るのだそうです。社会という大海原に一人で漕ぎ出そうとしている学生たちに週1回のゼミを、知識や議論という“食料や水”を補給する場として活用してほしいと願う想いからです。ゼミ生たちの発表時は静かに耳を傾けている中筋教授ですが、討論時には、参考文献や研究者名などを続々とそらんじ挙げながらアドバイスし、ゼミ生たちを触発します。

同じくゼミ長を務める三輪めぐみさん(3年)は「フランクで懐が広い先生の下、皆で知識を共有できるのもゼミの魅力です」と話します。北海道浜頓別町へエコツーリズム調査で訪れた経験から、まちおこしなどにも興味を抱き、卒論テーマに予定しているのだといいます。「課題発表でも、やろうと思えば、どこまでも深く追求できます。世の中の見方にとらわれずに、事象を自分自身としてどこまで深く捉えられるかが、社会学の面白さです」と続けます。地域社会学のゼミだけあって、首都圏以外の出身学生も多く、京都府出身の三輪さんもその一人です。

また、「理論や著名学者を卒論のテーマに取り上げる学生もいます」と中筋教授。2年次からのゼミ活動を通じ、学生が次第に成長する様子を優しく見守っています。

年間2回程度、土曜日などを利用して皆で「校外見学」に出かけます。昨年はパルテノン多摩博物館(多摩市)と国立ハンセン病資料館(東村山市)、今年は東京都中央区のタイムドーム明石(郷土天文館)を訪れました。このほか、今年は夏合宿を兼ねた長野県の馬籠・妻籠宿でのフィールド踏査なども行いました。時には、岩手県八幡平市、熊本県人吉球磨地域などを研究フィールドとする中筋教授の調査にゼミ生が同行することもあるそうです。