ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

ナノ粒子で環境・機能材料を創る(生命科学部 石垣隆正研究室)

  • 2010年10月18日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

<生命科学部は2008年開設。4年生の所属は工学部物質化学科、院生の所属は工学研究科物質化学専攻>

2010.10.18
地球にやさしい無機合成や、ナノ構造材料の研究を推進

近年、原子や分子のスケールであるナノメートル(10-9 m)単位で研究するナノテクノロジーが大きく注目されています。「私の研究室では、環境にあまり負荷をかけないプロセスで、新しいナノ構造無機物質を創製することを中心に研究しています」と石垣教授。「さらに、ナノ粒子を高機能材料として使うには、高度分散と構造化がキーになります」と話します。高度分散したナノ粒子材料は、省エネルギー照明として普及し始めた白色LED(発光ダイオード)に用いる蛍光体や、高速道路のETC(電子料金収受)システムの電磁波吸収体、1台の携帯電話に250個はいっているほど小さなセラミックチップコンデンサにも活用され、産業を支えているものです。

研究室は石垣教授以下、4年生から院生、ポスドクまで20人が所属。液中レーザーアブレーション(液中で高エネルギーのレーザーをターゲットの材料に照射する方法)やソノケミカル(超音波化学)プロセスによる「ナノ粒子合成」、「ナノ粒子の分散とコーティング」「カルシウム系化合物の水溶液からの析出形態の制御」など、各自が研究テーマを決めて日夜研究を推進しています。

野嶋浩人さん(修士1年)の研究テーマは「酸化チタン微粉末の液中分散における分散剤分子量の評価」。超音波エネルギーを用いて、「分散剤の酸化チタン粒子表面への吸着や切り離しを課題に、諸条件を変えながら、液中分散の最適条件を見つけるため試行錯誤しています。ナノ粒子を用いるメカニズムはとても面白いですね」と話します。

9月初旬には、環境応用化学科の他研究室と合同で2泊3日の夏合宿を行いました。交流を深めるとともに自分の専門外の研究発表などを聞き、多様なアプローチ、着眼点などについても意識を新たにしました。

  • ディップコーター(ナノ粒子をコーティングする装置)のセットアップ
  • 日々、研究に注力する石垣研究室の皆さん

「外研」では最前線の研究者とともに先端研究

液中レーザーアブレーション法による物質合成実験

液中レーザーアブレーション法による物質合成実験

石垣研究室では小金井キャンパスのほか、石垣教授が本学就任前に勤めていた独立行政法人 物質・材料研究機構(略称:NIMS、つくば市)でも研究を展開しています。NIMSは材料科学分野で、発表論文の被引用数が世界で3位(トムソン・ロイター社による最近5年間のデータ)と先端研究で名高い研究所です。「外研」班の、学生や院生たちは、NIMSのプロフェッショナルな研究者とともに、高性能な実験装置を用いて研究を進めています。

週に4回、NIMSに通っているという関根圭佑さん(修士1年)は、『AlN(窒化アルミニウム)にMn(マンガン)を添加した蛍光体ナノ粉末の合成と焼結』を研究テーマにしています。「NIMSでは、最先端の生の情報にも触れられ、研究者の方々との交流から視野も広がります。蛍光体を高密度に焼結すると、今までにない蛍光体利用デバイスの開発につながります。焼結体の透過率をアップすることが現在の課題です」と研究に夢中になって取り組んでいます。石垣研究室では月に一度、全員で集まって各自の研究の進捗報告を行いますが、他の学生・院生の研究報告にも「必ず質問をする」ことを意識しているのだそうです。

意欲的な研究室の雰囲気に、4月から研究に着手した4年生も、すっかり馴染んでいます。高校時代から無機化学に興味を持っていたという中島麗子さん(4年)は、Nd:YAGレーザーを用いた液中アブレーション法でアルミナ(酸化アルミニウム)ナノ粒子合成を研究しています。「石垣先生やポスドクの方々に親切に相談に乗っていただいています。先行研究の英語論文なども読み、知識やアイデアを高めています」と目を輝かせます。

「ナノ粒子を用いると材料のバリエーションは出やすいものです。資源に恵まれない日本では、ありふれた元素で高付加価値の環境・機能材料を創っていくことが重要です」と石垣教授は力を込めます。