ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

フィールドワークと実証的分析(経済学部 西澤栄一郎ゼミ)

  • 2010年09月06日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2010.09.06
飯田市をフィールドに環境を考察

環境政策を専門としている西澤教授。ゼミ(4年生12人、3年生7人、2年生9人)では、環境問題の調査とその解決策の提案を軸に活動しています。2008年からは毎年夏に、長野県飯田市でフィールドワークを実施。そのテーマは08年が同市の展開する、農家に泊まり込みで行う援農制度「ワーキングホリデー」の実態調査、09年が、国が選定した環境モデル都市である同市の温室効果ガス削減に向けての行動計画の諸方策の考察でした。

「農家での宿泊と農作業は今振り返っても貴重な経験でした。実家では自家消費用野菜を作っているのですが、商品として出荷する野菜作りは、まったく異なるものでした」と話すのは埜口水奈美さん(4年)。一方、「昨年は市民アンケートも行い、市民の皆さんの意識の高さに驚きました。ゼミで考えた改善案の報告会などを地元のマスコミに取材していただいたのも、いい思い出です」と前ゼミ長の名倉慶典さん(4年)も振り返ります。

3年目となる今年は、8月下旬に2年生と3年生が飯田市にフィールドワークに出かけました。テーマはシカなどの野生動物による農林業への被害です。ゼミ長の市川直人さん(3年)は「春休みの合宿時に皆で話し合ってテーマを決めました。飯田市の農業課や林務課の方に何度も電話し、問題点の把握に努めました」と話します。前期の授業では、関連書籍を読み進めリサーチも行いました。授業中だけでなくサブゼミでも経済学的視点を盛り込んだ討論を重ね理解を深めました。シカの生態を知るために日本獣医生命科学大学の先生にも話を伺いました。フィールドワークで食害の現状など自らの目で調査体験し、農家からヒアリングしてきたことを咀嚼、検討し、学生なりの視点を盛り込んだ提言をまとめ、後日ご協力いただいた飯田市などに報告する予定です。

  • 下水処理場の調査
  • 飯田市役所へのヒアリング

学生を成長させる現場での調査

現地調査の宿泊先にて

現地調査の宿泊先にて

「とにかく現場に行き、地元の方々と触れ合うことで学生は変わります」と西澤教授。「ヒアリングやアンケートなど学生にとっては慣れない体験ですが、身一つで飛び込んで、社会の役に立つことを意識しながら自ら取り組むことで、大きく成長します」と続けます。フィールドワークやその事前調査を通じて、環境政策に携わり第一線で奮闘する行政担当者と接することで、行政の役割の大きさを実感し、行政に携わろうと考えるようになったゼミ生も少なくないそうです。08年のワーキングホリデーに参加した学生のなかには、農林水産省や農協などに就職した学生もいます。

「温暖化をはじめとした環境問題に興味があり、フィールドワークに行けるのでこのゼミを選びました。実態調査などとても面白いものでした」と話すのは下鍛冶梓さん(4年)。ゼミの結束は強く、本学の三浦セミナーハウスで実施する春合宿も、「とても楽しかった」と笑顔を見せます。今年度の副ゼミ長の高貫ひとみさん(3年)は「先生は私たち学生主導のゼミを優しく見守ってくださっています。少人数ですので、一人ひとりの相談にも丁寧かつ的確に答えてくださいます」と話します。

4年次には、集大成として卒業論文を作成します。池田陽さん(4年)は風力発電をテーマにした卒業論文の作成を進めています。「海外や東伊豆町のケースを考察しています。否定的な視点も取り込んだ論文にしようと思っています。先生からは『論理的に説明が大切』と時に厳しく指導いただくこともあります」と話します。フィールドワークを2度体験した4年生たちには、批判的精神と実証的な分析力が培われているようです。