ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

優しい機械と人の関係(デザイン工学部 システムデザイン学科 小林尚登研究室)

  • 2010年08月23日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2010.08.23
自分で考え切り拓くものつくり

小林教授研究室では、インテリジェンスメカトロニクスを軸に、デザインやIT領域など幅広い観点から総合的な“ものつくり”を考察・研究しています。理系の研究室の多くでは教授の専門に準じたテーマで学生が研究を進めますが、「卒業研究に関しては私からはテーマを与えません」と小林教授。「これからの社会では、自分で考え切り拓いていく力が重要。興味と熱意こそが研究の原動力です。その意味でも学生自らがテーマを思いつくまで待ちたいと考えています」と続けます。学生たちは、4年生の夏頃までに卒業研究のテーマを定め着手します。

卒業研究の前段階として、研究室配属直後は、グループに分かれた課題制作で、発想力と協調性を養うそうです。今年は、“一本の針で時間を表す時計”や、“モーター制御で箒を立て続ける装置”を共同制作しました。「メカ系のことが学べるので、小林研究室を選びました。理論なども、もっともっと学びたいと思っています」と意欲を見せるのは池田浩太郎さん(4年)。「グループワークも多く、自発的かつ熱心に研究に取り組んでいる研究室です。私自身はフィードバック回路に興味があります」と鈴木惇夫さん(4年)も話します。

現在の4年生は、デザイン工学部の一期生。都心の市ケ谷で、時にゲストなどに招いた各分野のトップクリエーターの仕事にも触れながら学んできました。中学時代に美術部だったという吉田麻希子さん(4年)は「やりたいことは機械、デザインなど絞り切れないほどあります。失敗したときの軌道修正法など、先生の助言はとても、ためになります」と話します。経験豊富で優しい院生のサポートもあり、研究室はフレンドリーな雰囲気です。8月初旬には、夏合宿も行いました。

  • 夏合宿で集合写真
  • 研究室では建設的な会話の輪が広がります

専門性豊かな院生たちの研究

院生の坂さんは“能面”の研究を展開。モニター横は、顔の傾きを研究するモデル模型

院生の坂さんは“能面”の研究を展開。モニター横は、顔の傾きを研究するモデル模型

手探りでスタートする個々の研究テーマも、院生になると高い専門性を有してきます。楢原秀忠さん(修士1年)のテーマは“顕微鏡下のバイオ操作を支援するソニフィケーション(Sonification:音変換)システム”。顕微鏡を用いて、繊細なバイオ技術操作をする際、モニター画像や試料の変化具合・感覚などを周波数に変え、音で表わすことで、操作者である人による作業効率の改善や、より細やかで正確な操作を可能にしようという試みです。「修士課程ではより自由度の高い研究に取り組めています。人の意思を機械に伝えることで、人と機械のコミュニケーションをさらに高め、同じフィールドに立たせたいと思っています」と話します。

一方、坂 百里さん(修士2年)は、能面のバーチャルミュージアム制作に取り組んでいます。顔の傾きだけでも表情は変わるもの。ましてや能面は、複雑で様々な表情を内包しています。デザイン工学部では文系と理系を融合した研究も進めており、この研究も法政大学能楽研究所などと連携して展開しています。「昨年1年間はイタリア・ピサのサンターナ大学院大学に留学していました」と坂さん。現地の研究者と英語やイタリア語でディスカッションしながらの、「インターネット実験作業や研究はとても貴重な体験でした」と振り返ります。留学中はSkypeを用いて日本とも頻繁に連絡を取り合いながら研究を進めたそうです。

バイオや文化、社会、環境など幅広い分野を意識した、人に優しい機械やシステムの先端的な研究を能動的に行うことで学生や院生たちはテクニカルコーディネーターとしての資質を熟成します。最近では機械などの製造業のみならず、情報・通信業界などに進む卒業生も増えているそうです。