ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

奥深さが社会学の面白さ(社会学部 斎藤友里子ゼミ)

  • 2010年08月02日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2010.08.02
「公共性」や「公平さ」から社会の成り立ちを考える

斎藤教授ゼミでは、“公共性”や“公平さ”にかかわる社会の諸問題を考えることを通して、ゼミ生たちの社会学的思考や想像力を高めています。2年次にはまず、関連する基本文献をいくつか輪読し、社会学的な基礎知識を養い、資料収集や調査などの手段についても理解を深めます。そして、2年次後半から3年次にかけて取り組むのが、グループ別の研究です。今年は3班に分かれ、後期の論文完成を目指しています。前期の授業では、ひとつの班がサブゼミなどで討議し、まとめてきたグループ研究の成果を報告。それを聞いた他の2班が質問を考え、発表班が答える形で行われています。斎藤先生の示唆に富んだコメントも議論を深化させます。

6月末の授業で発表した第1班では、全国学校図書館協議会が選出する中学生向けの必読(推薦)図書に見られる「正しさの変化」の考察に取り組んでいます。長年選出されてきた必読図書を年代ごとに読み比べることで、子どもたちに伝わる“人の生き方にみる正しさ”がどう変化してきたのか考察しようという興味深い試みです。この日は1998年の必読図書だった『ヨーンじいちゃん』という児童小説を題材に、同書に書かれた個性派で頑固者のおじいちゃんの“自分を貫く”生き方や、それに応じる“家族のありかた”を、チャート図を用いて整理し、どのようなエピソードが「自分を貫くことの大切さ」や「望ましい家族のありかた」を読者に伝えるのか,エピソードの構造を類型化しました。

「3時間ほどかけて、5人で話し合い分担してまとめました」と話すのは同班の鈴木直起さん(3年)。類型化にも知恵を絞りあったそうです。「自由なテーマに取り組めるのがゼミの魅力。斎藤先生から、もっといろいろなことを学びたい」と続けます。他の2班から出た「もう少し抽象化してみては」などの質問も生かし、枠組みを改善していくそうです。斎藤先生も、この日の発表について「かなり進みましたね」と褒めたうえで「この類型をもとに他の必読図書も分析することを前提に、類型の汎用性をあげることを検討するともっとよくなります」などとアドバイスを送っていました。

  • ゼミ冒頭の全体討議
  • 学生を刺激する斎藤先生のアドバイス

科学的な考え方を身に付ける

社会学に真摯に向き合う斎藤ゼミ

社会学に真摯に向き合う斎藤ゼミ

「世の中のさまざまなことを研究テーマにできるのが社会学の面白さ。学べないことはないほど、と言っていいほど幅広さと奥深さがあります」と話すのは高野大樹さん(3年)。対象や切り口は無限大。そこに、学生たちの発想やセンスが求められます。高野さんの班では1970年代?2000年代の小・中学校の“いじめ”に着目し、その質と構造の時間的変化や、事件諸例の比較分析などを行っています。

このほか、これまで、斎藤ゼミでは“再開発における公益”“国策施設をめぐる迷惑の構造”“マナーの発生と影響力の定式化”“公共広告から見る「社会問題」”“「プライバシー」の語られ方”など多様なテーマがゼミ研究や卒業研究のテーマとして取り上げられてきました。「ゼミ生たちには、社会学的思考を学ぶとともに,科学的な考え方や説得の作法をしっかりと身に付けてほしいと考えています。また,議論では,相手の疑問に対する応答の速やかさも求めています」と斎藤先生。厳しくも優しい斎藤先生のアドバイスを聞きながらゼミ生たちは、発言に責任を持つ意識も高めていきます。

班別に話し合い研究を進めるメリットを、蓬田荘一郎さん(3年)は「一人では偏った思考になることもありますが、皆で話せばさまざまな研究の方向性を見出せます。1年生のころ漠然としていた“自分のやりたいこと”も次第にはっきりとしてきました」と話します。多岐亡羊の広い専門領域のなかから、個々が目指すところを見つけられるのも、個性をぶつけ合うゼミ授業の効果なのかもしれません。

社会学部では指定科目を履修することで「社会調査士」という資格を取得することができます。斎藤先生が担当教員をしていることもあり、資格取得を目指しているゼミ生も少なくないそうです。