ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

アメリカを考える(国際文化学部 栩木玲子ゼミ)

  • 2010年06月28日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2010.06.28
合同ゼミで、映画を素材に異文化衝突を考察

日本とは異なる文化や社会背景を持つアメリカを、栩木教授のゼミでは親しみ、理解しながら、同時に日本との関係や類似性をさぐっていきます。授業でのアプローチは、映画やテレビ番組、音楽、小説などを見、聴き、読むことから始まります。感受性豊かなゼミ生たちを「大いに刺激しつつ、学生自身が問題を見つけ出し、解決していく、その過程をサポートするのが私の役目です」と栩木教授は話します。ゼミ生はメディア・リテラシーを身につけるともに、自分と他者の違いを認め、自ら考える力を養っていきます。

6月初めには、学生の発案で同じ国際文化学部の佐々木一恵准教授ゼミと一緒に、“合同ゼミ”を行いました。2つのゼミを合わせた計約50人の3、4年生たちが取り組んだのは映画『クラッシュ』。多民族国家であるアメリカを描いてアカデミー作品賞を受賞したこの映画は、異文化衝突を考えるのに恰好の題材です。差別や偏見、異なる価値観や言葉の壁、異文化の壁が生むやり切れない幾つかの悲劇…。一見独立しているかに見えるそれらの事件は、アメリカ社会という人種と文化の坩堝の中で、複雑に絡み合って描かれています。

国際文化学部では、2年次後期に全員がSA(スタディ・アブロード)プログラムに参加し、世界各地への海外留学を体験します。留学時に実感したコミュニケーションの難しさや、文化のすれ違い体験なども交えて、二つのゼミの学生たちは、映画を起点とした熱い討論を繰り広げました。作品選定も含めて合同ゼミの準備・運営に深く携わった市来廣佑さん(4年)は「大人数でしたが、いくつかのグループに分かれ、いろいろなことを語り合えました。映画を題材にした討論は佐々木ゼミの皆さんにとっても新鮮な体験だったと思います。実り多いゼミ間交流になりました」と成果に満足気です。

  • 学生に混じって語り合う栩木先生(右から4人目)と佐々木先生(左から3人目)
  • 合同ゼミの様子

それぞれのアメリカ

意見が飛び交うゼミ授業の様子

意見が飛び交うゼミ授業の様子

市来さんのSA留学先はアメリカのMICHIGAN STATE UNIVERSITY。留学中には、研究テーマとの関連で興味を持っているミシガン州のデトロイトを訪ねました。「ホームレスなどの現状を見て、『なぜこんなことになってしまうのか』と疑問に思ったことが栩木ゼミでアメリカを深く学ぼうと思ったきっかけです」と話します。

一方、ゼミ長の木村将大さん(4年)のSA留学先はUNIVERSITY OF CALIFORNIA,DAVIS。「日系アメリカ人をテーマにしています。カリフォルニアには本当にたくさんの日系の方がいました。実際に行ってみなければ実感できないことです」と話します。栩木先生は、決して自分たちの考えや意見を否定しないのだとゼミ生たちは言います。「そして、文化、社会などのさまざまな事柄はリンク、つながっているのだと教えてくれます。さらに、学生たちがやりたいといえば、自由にやらせてくれます」と木村さんは話します。

通常のゼミ授業やサブゼミでは、大所帯を生かした活発な活動を行い、レポート発表やグループ討論を通してプレゼンテーション能力やコミュニケーション能力を培います。このほか、先生の自宅でのポットラック(持ち寄り)パーティやハロウイン、クリスマスなど折々のイベントも盛んです。

「アメリカについての正しい知識を得るだけではなく、その知識をもとに日本に暮らす自分自身をも相対化する、そんな”応用力”も身につけてほしいと思います」と栩木教授はゼミの目的について話します。SAでアメリカ以外の国に留学している学生も少なくないため、ゼミでのディスカッションは多岐にわたるそうです。年度ごとに提出されるレポートは時流を反映するようで「ヒップホップと黒人文化」、「アメリカにおけるセレブ文化の考察」など今風のテーマを追いかける学生も増えてきています。