ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

比較文学の研究を通して自分の視座で問題を捉え自分の頭で考える力を養う(国際文化学部 前川裕教授ゼミ)

  • 2010年05月20日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

多様な意見を尊重しながら自分の視点を育てていく

前列(左から)田島知奈さん、村木由利香さん、前川裕教授、小阪彩奈さん。後列(左から)櫻井友里さん、鈴木麻莉奈さん、宮川佳奈さん、福住涼子さん(学生はいずれも4年生)

前列(左から)田島知奈さん、村木由利香さん、前川裕教授、小阪彩奈さん。後列(左から)櫻井友里さん、鈴木麻莉奈さん、宮川佳奈さん、福住涼子さん(学生はいずれも4年生)

前川ゼミのテーマは比較文学。でも、「比較」を足かせとせず自由に自分のテーマを見つけていってほしいと、前川教授は言います。

「日本文学を西洋文化との比較を通して読み解いていくのが私の専門分野ですが、比較文学の世界は幅広くて日本と西洋という単純な比較ではなく、例えば、文化という視点から小説を眺めても比較文学の研究になります。ですからある意味、何でもいい。学生には、自分の視点で文学と向き合ってもらいたいですね」(前川教授)。

それに応えるように学生たちは、「私は後期に芥川龍之介をビクトリア朝時代の耽美派の作家・オスカーワイルドと比較して発表しました」(宮川佳奈さん)、「私は、ゼミ活動を通して川端康成の思想世界に興味を持つようになり、今後は自分なりに追求していこうと思っています」(福住涼子さん)など、さまざまに興味・関心を追求しています。

ゼミ活動の中心はグループ研究。編成は3・4年生の混成だったり2人編成だったりと、さまざまな組み合わせで行われます。その活動から「どういう視点で作品を読んでいけばいいのかといった基本的なことから先輩に教えていただき、研究というものに対する視野が開けました」(櫻井友里さん)、といった体験も生まれています。

前川教授は学生に声をかけ、文学関連の資料館や寄席、劇場などへも足を運びます。しばしば映画鑑賞も行われます。村木由利香さんは「私たちが自分では選ばないような昔の作品を観ることができました。作品が制作された社会的背景を先生が解説してくださり、映画を通して時代が見えてくるような感じがして興味深かったです」と話しています。

ゼミの雰囲気は、和やかで活発。小阪彩奈さんは「ゼミの後は皆で食事に行くことも多く、何でも話せる楽しい仲間です」と話しています。教室の中では、「皆、普段はおとなしいけれど、発言の場ではしっかりと自分の意見を言います。そして自分と異なる意見にも耳を傾ける雰囲気があります」と鈴木麻莉奈さん。「自分と異なる意見を尊重する雰囲気の中で、文学には多様な見方があることが分かり視野が広がりました」と田島知奈さん。

「研究では先行研究、すなわち過去にどんな人が何を言ったのかを正しく踏まえて、どこからが自分の考えであるかを明確にすることが重要です。ゼミではそうしたプロセスを踏みながら、多様な意見を尊重しつつ、自分の頭で考える力を養っていってもらいたいと考えています」と前川教授は話しています。

(雑誌「法政」2010年5月号より)