ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

国際法から世界平和を考える(人間環境学部 岡松暁子ゼミ)

  • 2010年01月25日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2010.01.25
ディスカッションが全員の能力を高める

岡松准教授の専攻は国際法。特に国際原子力法や環境法の履行確保などについて研究しています。国際法とは国際社会の秩序を維持するための主権国家同士の取決めです。グローバル化した現代社会における国家間の争いは武力紛争だけではありません。政治、経済、文化などさまざまな分野で日々、大小の摩擦や利害の対立が起こっています。近年、“サステイナビリティ”が一つのキーワードとなって大きな注目を浴びている環境分野ももちろん例外ではありません。ゼミでは、国際法、国際環境法の基礎理論を学び、判例研究を通してリーガルマインドを身に付けながら、国際平和や環境問題等を幅広く考えています。

11月下旬の授業で、『国際環境法における国家の管理責任』についてのグループ発表をしたのは山口真次さん(3年)、鈴木英里奈さん(2年)、金澤成さん(2年)の3人。多国籍企業による環境損害の事例を取り上げ、企業の民事責任と国家の責任の関係、さらには近年の国家環境法における国家の管理責任の具体的内容や課題について発表した後、いつものように皆でディスカッションを行いました。

国内法とは異なる特色を持つ国際法。岡松先生は、ゼミ生たちの理解を確かめるように、優しくかつ論理的にリードします。「岡松先生の説明は分かりやすく、興味は深まるばかりです」と話すのは積極的に討議に加わった金澤さん。一方、鈴木さんは「環境は今や国際的な課題です。私にとってゼミは環境を学ぶ上での幹であり軸。枝葉をもっと伸ばしていきたい」と意欲を語ります。「ゼミは自分が成長できる場」と話す山口さんは「国際環境法は世界のルール。大国による一極化であってはいけません」と語気を強めます。

  • 夏合宿で記念撮影
  • 中身が濃く、積極的なディスカッションを行う授業

緊張感ある授業と、基礎力を培うサブゼミ

研究室で勉強会。時には岡松先生が学生たちに、おいしい紅茶を振る舞うことも

研究室で勉強会。時には岡松先生が学生たちに、おいしい紅茶を振る舞うことも

岡松ゼミでは文献講読や判例研究などが中心の週1回の演習のほかにも、サブゼミを随時行っています。サブゼミでは、外書や関連時事ニュースを読み解くのに必要な英語力を養うために、英語の専門書を講読したり、戦争、人権や環境問題を扱った映画やドキュメンタリーの鑑賞、関連の新書などの書籍を読んでディスカッションする読書会など、発言力や文章力を培う盛りだくさんの内容で、ゼミ生の好奇心とやる気に応えています。

「学生には、『諸問題への関心を深め、自ら解決法をさぐり考えること』『準備、勉強した上で、根拠のある自己主張をすること』を強く求めています」と岡松先生。「問題解決能力を身に付け、将来それぞれが社会で活躍する場で存分に発揮してほしい」と期待をかけます。岡松ゼミ以外の選択肢はなかったと話す嘉門小百合さん(2年)は「先生にはいつも、『少し背伸びをするくらいの向上心を抱きなさい』と教えられます」と目を輝かせます。

4年生は卒業論文に取り組みます。岡松ゼミ初代ゼミ長でもある荒田亮平さん(4年)のテーマは『国際環境法における予防的アプローチの今後の展望』。“予防的アプローチ”とは、環境に深刻なまたは回復し難い損害を及ぼすおそれがある場合には、原因と損害の因果関係が科学的に十分証明されない状況でも、予防措置をとることを可能にするという考え方です。「気候変動枠組条約に着目し、先進国、発展途上国の双方の立場から考察しています。今後この考え方がどのように発展していく可能性があるのかを提示したいと思っています」と話します。

中身が濃く緊張感のある90分のゼミの後は、「いつも心地よい満足さを感じます」とゼミ生たち。オン・オフは巧みに切り替え、休み時間には談笑の輪が広がります。オフィスアワーなどに学生たちが研究に関する質問や相談などに研究室を訪れることも多く、今年の先生の誕生日には、ゼミ生がサプライズでケーキをプレゼントし祝ったそうです。