ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

CGの未来(情報科学部 ディジタルメディア学科 池戸恒雄研究室)

  • 2010年01月18日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2010.01.18
ハードウエア、ソフトウエアの両面からCGを極める

映画やゲームなどの映像制作に欠かせないものとなったCG(コンピュータ・グラフィックス)。池戸教授研究室では、視覚的に現実と区別できないほどのリアリティーを表現するCG描画手法や、仮想現実に応用するために映像を実時間で処理するCGプロセッサの開発設計を研究テーマにしています。特にCGプロセッサの構造設計に関しては世界でも数少ない研究室で、2002年には大学発ベンチャー企業「ディジタルメディアプロフェッショナル」を創設し、この会社は現在20億円を超える投資により次世代CGプロセッサや3DグラフィックスIPコアなどの実用化を進めています。このように研究室では理論研究だけでなく研究成果の産業化も同時に取り組んでいます。コンピュータによる映像表現という先進的で刺激的なテーマと、情報科学部が提供する1年から3年次まで続けて参加できるプロジェクト科目を通して、学生たちはハードウエア、ソフトウエアの両面からCG技術を深く学んでいます。

普段は、現実感と高速処理をテーマに各自がそれぞれの研究を進めていますが、毎週一度実施するゼミ授業では、担当者が個々の研究分野から自由にセレクトしてきた国内外の論文を発表した後、池戸教授や出席者を交えてディスカッションを行います。話題の映画やゲームソフトのCG表現法やこれからの映像クリエーターとして必要な知識なども話題となります。

このゼミ授業は、研究室所属の大学院生や池戸教授の指導で卒業研究を進めている4年生のみならず、CG研究に高い関心を抱いている下級生にも門戸が開かれています。「今年は学部の2年生からも参加者がいます。学年を問わず意欲ある学生ほど何をやったらいいか悩むもの。問題は自分で乗り越えなければなりませんが、先進的な技術論文や、ほかの学生のテーマから触発されることは多いはず」と池戸教授は話します。12月中旬の授業では、鳥の羽根のCG化に関する論文を取り上げました。羽根の生物学的な構造考察から、フワフワ感を出すためのスプライン曲線(複数の制御点を設定した滑らかな曲線)の工夫など、熱のこもった議論が行われました。

  • CG映像の質感表現(毛、半透明、金属)
  • ゼミ授業の様子

次世代を常に意識した開発

裏磐梯合宿で記念撮影

裏磐梯合宿で記念撮影

池戸研究室では、CGのなかでも、色、質感、屈折、反射など物体の物理的な特性を考慮して描くレンダリング(描画技術)を研究の領域としています。よりリアル(自然に近く)でリアルタイムに表現できるCGアルゴリズムの開発や、それを実装するハード開発が主な目的です。「今、処理できるプロセッサがなければ、自ら開発すればいい」というのが研究室の基本姿勢だと池戸教授は力を込めます。多数の特許も取得、研究室で常に“次世代”を意識する開拓者精神を培った多くの卒業生がCG映像分野の第一線で活躍しています。

4年生は一年間をかけ、それぞれのテーマで卒業論文・制作に取り組みます。三堀千尋さん(4年)のテーマは「牡丹花弁の質的表現」、瀬下裕介さん(4年)のテーマは「漆器の反射光のモデル化」です。二人とも研究職を目指して、大学院進学を決めています。華やかで、美人を例える際にも用いられる牡丹。「開花時期の映像などを参考にしましたが、花の迫力を出すのには苦心しました」と話す三堀さんは、Webなどで調べ、池戸研究室で学びたいと考え本学に入学したのだといいます。「描画の専門知識がなければ、思い通りのCGを作れません。池戸先生のもとで基礎から多くの知識を学ぶことができました」と振り返ります。

研究室は和気あいあいとして、建設的な雰囲気だといいます。「先生は、個々の学生のテーマに詳しく相談に乗ってくださいます。私はプライベートでも先生の会津のお宅に6度もお邪魔しています」と笑顔で話す瀬下さん。「CG制作は、自分の成長が目に見えて分かる喜びがあります。将来は映像やCGの研究に携わりたい」と夢を描きながら学ぶことで、着実に実力を付けています。