ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

酸性雨・大気汚染を探る(生命科学部 環境応用化学科 村野健太郎研究室)

  • 2009年12月21日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

生命科学部は2008年に開設。学生の所属は工学部物質化学科

2009.12.21
定常的なモニタリングでデータを生かす

村野研究室では、大気汚染物質や酸性雨を定常的にモニタリング(捕集・化学分析)することで大気汚染のメカニズムを解明する研究を行っています。国立環境研究所の研究者として大気環境を研究していた村野教授が本学に着任したのは2008年4月。まだ2年目の新しい研究室で所属学生は4年生8人ですが、学生たちは知識と経験豊かな村野教授の指導の下、日々研究に励んでいます。

研究は「フィルターパックを用いた大気汚染物質のモニタリング」「酸性雨の捕集と化学分析」「パッシブサンプラーを用いた大気中のアンモニア・オゾン・二酸化窒素の捕集」「エアロゾル(空気中の微小液体・固体粒子)中のイオン種の測定」など、いくつかのグループに分かれて展開しています。モニタリングや定期的なサンプリングは小金井キャンパス内や近隣の小金井公園で行っていますが、失敗してしまっては、その期間のデータは2度と手には入りません。「定常的に行ってこそデータが生きる」と村野教授。データのバックアップのために、綿密なノート筆記も求めています。学生たちは、データの意義を心に焼き付け、装置の扱い方や計測法を共有し責任感を持って年間を通して測定を実施しています。

「専門知識はもちろんのこと、学生には、自ら貪欲に知識を増やしてほしいと思っています」と村野教授は話します。社会に出てから活躍する人材となるために、深い専門性と広範な一般知識を兼ね備えた“T型人間”になることを学生たちに薦め、講義や雑談のなかにも、頻繁に人生論を盛り込むそうです。「覚えることが苦手な人もいるでしょうが、忘れたらまた覚えればいい。覚える努力をすることが大事なのです」と強調します。

  • 結束強い研究室のメンバー
  • 導入されたばかりのイオンクロマトグラフ装置で分析

魅力あふれる研究とその意義

夏合宿中も一生懸命に学びました

夏合宿中も一生懸命に学びました

現在の4年生のうち約半数程度が来年度大学院に進み、研究を続けます。その一人、三好祐輔さんは「ここにいる時間が何より楽しい。まだまだ手探りのことも少なくありませんが、新たな研究のベースを作っているのが、なにより魅力です」と目を輝かせます。最初は十分ではなかったという測定機器も徐々に整えられてきました。最新のイオンクロマトグラフ装置も導入されました。来年度は11人の現3年生が加わることも決まっており、研究室の士気は高まっています。また、国立環境研究所や全国の大学との共同研究もこれまで以上に展開され、院生たちが外部のエキスパートの方たちと共同研究する機会も増えるそうです。

同じく大学院に進む及川正輝さんは、「気象や環境に興味が深く、この研究室を選びました。データからはいろいろなことが分かります。村野先生からはデータを総合的に判断し多面的に考察する視点を学んでいます」と話します。一方、「人間味があり面白い先生です」と話すのは山本慎之介さん。仲が良く結束も強い研究室では、忘年会など季節ごとのイベントも実施。北八ヶ岳で行った9月の夏合宿の山歩きでは「木々の立ち枯れの様子などを目にして研究の意義を感じました」と話します。

木々の立ち枯れは、酸性雨による土壌の酸性化が原因ともいわれています。また、アジア大陸からの大気汚染物質の越境流入など村野教授が研究してきたテーマなどにも、意欲的な学生たちの興味は膨らんでいます。「法政の学生たちの飲み込みの良さは、なかなかのものです。もっともっと積極的に食らいつき、自ら研究に取り組んで知識を増やしてほしい」と期待をかけています。