ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

グローバル化と政治(国際文化学部 大中一彌ゼミ)

  • 2009年12月14日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2009.12.14
講演会や他ゼミとの勉強会などの活動も

大中准教授ゼミでは「グローバル化と政治理論」を大きなテーマに、複雑化する国際政治やその背景にある思想を幅広く学んでいます。国際文化学部では、スタディ・アブロード(SA)という独自の留学制度で全員が留学を経験するだけに、毎週のゼミ授業では実体験を交え、多くの国の政治に話が及びます。

“若くて、爽やか”とゼミ生から慕われる大中先生は、専門のフランスの政治や思想のみならず、さまざまな具体例を学生に示します。「自文化と他文化への知的好奇心を高めて、自分だけのテーマを見つけてほしい。そのため、学生にはあえてウィル・キムリッカの『現代政治理論』のような、何百ページもある文献を読ませています」とゼミ生に大きな期待をかけています。

今年度は、特に移民問題や多文化時代の市民権などに関する参考書を輪読。11月中旬の授業で『他者の権利 外国人・居留民・市民』(セイラ・ベンハビブ著、法政大学出版局刊)のレジュメ発表を行った濱地淳平さん(4年)は「著者とは異なり、自分は『移住と国境を越える正義』において、配分的な尺度の占める割合が非常に大きいのでは、と思いました」と感想を記しました。ゼミでは、発表者だけでなく、全員が随時、カードにさまざまな感想を記しディスカッションを弾ませます。大中先生は「本を読んで知識を身に付けるのと同じぐらい、課題を発見し発信する力が社会では大切」と学生たちに伝えます。

大中ゼミではまた、法学部や経済学部など学内他学部のゼミとの勉強会を随時実施。10月下旬には、日本国内の外国人労働者研究を専門とする首都大学東京の丹野清人准教授を招き「内なる国際化と日系デカセギ労働者」という演題でミニ講演会も開催しました。外国人労働者の現実や移民論議など、日本で進展する“内なる国際化”を討議、大中ゼミからも学生二人が発表を行いました。発表者の一人で、研究者を目指し大学院に進学する渡邉広海さん(4年)は「昨年夏ぐらいから文献を読み進め、準備していました。ほかのゼミとの交流も大いに刺激になりますね」と話します。

  • 夏合宿で記念撮影
  • 10月下旬に開催したミニ講演会でのゼミ生の発表の様子

ゼミ学生それぞれの「グローカル」な体験と考察

ゼミ授業中の新聞発表。関連事項をインターネット検索し討議を深めます。

ゼミ授業中の新聞発表。関連事項をインターネット検索し討議を深めます。

大中ゼミの名物の一つは、「新聞コーナー」です。これは、毎週のゼミ授業時に、外国の新聞や日本の地方紙から毎回記事を一人一つずつ自由に選び10分程度の発表を行うというもの。11月中旬の授業でもイギリス、ドイツ、アフガニスタンなど多彩なニュースが報告されました。この10月に念願だったケニアを訪問した須崎絵理奈さん(3年)が選んだのは、電力不足に悩むエチオピアとケニアが送電連携に関して世界銀行へ380万ドル規模の支援を要請した記事。「現地での交流はとても楽しいものでした。訪れたことで、ますます興味がわきました」と目を輝かせ、情勢をウォッチし続けています。

一方、2年次のフランスへのSAを経て、「異なった国籍や文化をもった人々の調和や、そこで生じる問題について、さらに専門的に学んでみたい」と現在、パリ第7大学社会学部に派遣留学中の小倉慶子さん(3年)は社会学や人類学、文化人類学、移民問題、哲学の授業などを履修しています。「こちらでは多民族、多文化社会を実感しています。パリ第7大学では古典を読んで小論文を書くことが非常に多いので、大中ゼミでの経験はとても役立っています。授業で日本の移民問題や国籍問題についても、発表したりすることがあります」と話します。

また、張 子渓さん(4年)は自らの国籍(中国籍)を「SAでイギリスのリーズに留学した際の現地でのビザ延長手続きであらためて自覚し、国境や移民問題などの関心を深めました」と話します。日本国籍者には求められない手続きでした。積極的な発言と明るさで、いつもゼミをリードする張さん、卒業後は「事実を掘り下げた署名記事が思い切り書けるから志望しました」という経済誌記者の道を歩みます。日本と中国、そしてイギリスで学んだ言語や社会についての知識を生かしながら、ジャーナリストとして力を発揮してくれることでしょう。