ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

数学のチカラ(経営学部 倉田俊彦ゼミ)

  • 2009年11月30日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2009.11.30
経営を数学で読み解く

経営学を学ぶ上で、重要なのが数学。企業経営上のさまざまなデータを計測・分析したり、あるいは数字としてのデータに新しい意味や解釈を見つけることができるのが数学のチカラです。倉田教授ゼミでは、線形代数や微分積分、離散数学、数理計画法などを駆使して、経営・経済の各分野の問題に適用を図っています。

大津香織さん(4年)が現在、試みているのが包絡分析法を用いた“日本の空港の効率性の分析”。包絡分析法とは、事業体などの意思決定主体の効率性を相対的に評価する手法。とても簡単に説明すると、インプット(投資)に対するアウトプット(成果、回収)の割合を比べる手法です。大津さんは、国内80空港の効率性を分析するにあたり、インプットに総面積や国内・海外発着回数を、アウトプットに国内・海外乗降者数、国内・海外貨物取扱量を設定し比較しました。乗降者や貨物取扱量の規模は成田や羽田などの大都市圏の空港が圧倒的ですが、包絡分析法に基づく分析の下では、地方管理空港でもある与那国空港がそうした大空港と対等の効率性を持っていることなど、興味深い事象が分かります。「倉田先生は優しく、自主性を尊重しつつ相談に乗ってくれます」と大津さん。黒板いっぱいに数式を記しながら、倉田先生と熱くディスカッションしていました。

ゼミには、苦手な数学を克服するために参加しているという学生や、外国からの留学生も学んでいます。韓国からの留学生、金泰源さん(3年)は「倉田先生の授業を取っていたのがゼミに入ったきっかけです」と、すっかり体得した日本語で話します。このようなさまざまな背景を持った学生の要望に応じて、基本的な分野の復習や、数学的なアルゴリズムを題材にJava言語を用いたコンピュータプログラミングも行うそうです。

  • 倉田先生を囲んで
  • 黒板いっぱいに図式を書き、熱い討論が行われます

スポーツをも分析する数学

BCCモデルでの効率値を説明するスライド

BCCモデルでの効率値を説明するスライド

「数学は内容を理解するだけでなく、それをどう活用するか考えるのも大切。ゼミでは考察を論理的に整理して、聞き手に伝えるという作業にも力を入れています」と倉田教授。各自の論文の中間報告などは、他のゼミ生たちにも、納得できるのもでなくてはなくてはなりません。工夫することで独創的な切り口も生まれます。

小澤清貴さん(4年)の研究テーマは「経営効率の測定手法に基づく十種競技得点計算の検証」。デカスロンと呼ばれる十種競技は、トラック競技(100m、110mハードル、など)のタイムやフィールド競技(砲丸投げ、走り幅跳び、など)の投てき、跳躍記録をそれぞれ点数化し加点することで勝負を競います。小澤さんは包絡分析法の中でもBCCモデルと呼ばれる手法を利用して、世界のトップ選手40人の記録サンプルを分析。全選手の記録のバランスから客観的に各選手の効率値を算出し、既存の式から得られる得点結果との比較や、種目間の得点計算の公平性などを考察しています。「高校時代に砲丸投げをしていたのが、考察のきっかけです」と小澤さん。「より多くの選手サンプルを加えたり、アルゴリズムの改善を行えば、さらに信頼度の高い指標が得られるのでは」とまとめています。

「一般教養科目で学ぶだけでは足りないほど数学が好きで、このゼミに入りました。」という足立孟さん(3年)は線形計画法に取り組んでいます。線形計画法は、オペレーションズ・リサーチ(経営戦略の効率を最大限に高める研究)に用いられる最も基本的な手法。複雑な問題をいくつかの一次不等式や一次等式で表し、制約条件のなかで利益(結果)の最大化を模索するものです。「経営の意思決定にもからむもので、学部の勉強に大いに役立ちます」と、数学の魅力に夢中です。