ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

翔け コンクリーマン(デザイン工学部 都市環境デザイン工学科 溝渕利明研究室)

  • 2009年11月09日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

<デザイン工学部は2007年に開設。4年生の所属は工学部都市環境デザイン工学科>

2009.11.09
研究・実験が責任力とプライドを培う


住居など身近な建物のみならず、道路や橋など社会基盤の建設に欠かせないのがコンクリート。溝渕教授研究室では、そのケア(ひび割れのメカニズム解明)や、環境にやさしい新しいコンクリートの研究などに取り組んでいます。「テーマは与えますが、実験や解析は計画段階からリーダー役の院生と4年生が自ら考え、協力しながら行います。共同作業や役割分担が、学生たちの自己責任意識を培っています」と溝渕教授は話します。

『マス養生下でのコンクリートの力学的特性』に取り組んでいる田丸大輔さん(4年)は「公共性が高く生活に直結しているのが、この分野を志した理由。成果を社会に生かしたいと実験を行っています」と話します。溝渕教授が説くのはコンクリートの匠であり、温かきハートを持ったドクターでもある“コンクリーマン”のプライド。学生たちには着実にその意識が芽生えています。

このほか、コンクリートが固まる際のひび割れ発生のメカニズムの研究や、コンクリートを破壊に至らしめる塩害が進行している箇所を探るための電磁波レーダーを用いたコンクリートの塩分量推定技術の研究、コンクリートの直接引張強度試験などにも取り組んでいます。

学部生たちを優しくリードする室野井敏之さん(修士1年)は「みんな、頑張っていますね。学科の中でもうちは最も研究室に詰めているのでは」と胸を張ります。室野井さんたち院生の、高い自己管理意識は学部生にとってもお手本になっています。また、研究には夢中になって取り組みますが、オン・オフをうまく切り替えるのも研究室の伝統。気さくな性格で“宴会部長”を自負する荒川卓也さん(4年)も「報告会後など区切りには、打ち上げやバーベキューを毎回行う、仲よく結束のある研究室です」と笑顔を見せます。

  • コンクリートの直接引張試験の実験風景
  • 日々研究に打ち込む溝渕研究室

環境に貢献するコンクリート

立体視能力を高める鉄筋模型と3D CAD図

立体視能力を高める鉄筋模型と3D CAD図

CO2削減など環境への配慮が世界的に叫ばれています。土木技術においても、環境に貢献するさまざまな技術開発とアプローチが試みられていますが、そこで問題となるのがコスト。いかに優れた環境技術、施工技術といえども、コストに見合わなければビジネスとして活用はされません。溝渕研究室では材料としてのコンクリートの可能性を追求し、その能力を高めるためのさまざまな研究を進めています。

例えば、製鉄過程の副産物である高炉スラグのセメントへの混入。その高炉スラグの微粉末を用いたコンクリートの強度特性をテーマにしている河野薫さん(4年)は「圧縮強度などを測るためさまざまなコンクリートの供試体を作ります。いいデータが取れた時はうれしいですね」と笑顔で話します。男社会と思われがちですが、学科では、河野さんのほかにも多くの女子たちが、伸び伸びとものづくりに取り組んでいます。

一方で、竹内直也さん(4年)が取り組んでいるのが、コンクリートを利用した水質浄化。「アンモニアやリン酸を吸着する『人工ゼオライト』という物質を材料に用いたポーラスコンクリートを水質浄化に役立てようという試みです」と竹内さん。汚染度の高い河川での実験も近く予定しているそうです。

このほか、溝渕研究室では鉄筋のミニュチュアキット(1/24スケール)を考案し市販化しています。「最近の学生は図面から立体像を読み取るのが苦手です。鉄筋コンクリートの構造は複雑。模型を使って組むことで立体視能力も高まります」と溝渕教授。ものづくりの楽しさを伝えるため、オープンキャンパスでも活用しているこのキットは高校生からも好評です。バーチャルソフトとの相乗利用など研究室ではさらなる活用法を探っています。