ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

源氏物語(文学部 日本文学科 加藤昌嘉ゼミ)

  • 2009年10月26日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2009.10.26
古典を読む愉しみ

加藤准教授ゼミでは、皆さんご存じの『源氏物語』を研究対象にしています。11世紀初頭に書かれた『源氏物語』は、全54帖(角川文庫で10冊!)の大長編恋愛小説です。その中から、今年度は、「玉鬘(たまかづら)十帖」と呼ばれる巻々の要所要所を略読しています。略読といっても簡単なものではありません。原文は、ほとんど平仮名だけで書かれており、句読点も濁点もかぎかっこも付いていないので、古文に慣れたゼミ生にとっても、これを現代語訳して分かりやすく解説するのは一苦労です。さらに、他の巻とのつながりや、場面のポイントなどを調べ上げ、レジュメを作って発表します。ゼミでは、その作業を3年生と2年生が二人一組になって行っています。

10月中旬の授業では、「野分(のわき)」の巻を取り上げていました。この巻の舞台である六条院(ろくじょういん)の建物の構造も、平面図を使って考察。さらには、主要登場人物である“紫の上”の呼び名の変化に注目して、「玉鬘十帖は、メインストーリーが書かれた後にスピンオフ的に作成されたのでは?」という説についても熱く議論していました。読めば読むほど魅力が増していくのが『源氏物語』。加藤准教授も、「もっと何か出てくるかも。これ、しっかり調べて卒論のテーマにしてみませんか?」とゼミ生たちに呼びかけます。

1年次に加藤准教授の講義を受講し、興味を抱いてゼミを志望したという佐々木駿祐さん(2年)は「先生は喋りもうまく、時に冗談を交えながら『源氏物語』の魅力を話してくれます」と話します。この日の発表者だったゼミ長の高山奈美子さん(3年)も「受験勉強の古文と違って、ゼミでの学びは想像力を膨らませてくれて、とても楽しいものです。女子が多いゼミなので、男子の入ゼミは大歓迎です!」と話します。

  • 学生の積極的な発表と討議でゼミ授業は進みます
  • 優しい加藤准教授が、源氏物語の魅力を学生に伝えます

それぞれの『源氏物語』

楽しく学んだゼミ合宿

楽しく学んだゼミ合宿

明るく、議論も弾むのが加藤ゼミの特徴。ゼミ生たちはそれぞれに『源氏物語』を読み込み、それぞれのロマンを胸に抱いているだけに、「あの描写が良かったね」などと、すぐ話の輪が広がります。「若紫」の巻が好きだという滝沢諒さん(3年)は「フランクな感じのゼミですね。結束も強く、食事会なども頻繁に行います。先生も積極的に参加してくださいます」と話します。

9月初旬には、三重県に2泊3日のゼミ合宿に出かけました。伊勢神宮や、平安時代の文化を体感できる《いつきのみや歴史体験館》《斎宮歴史博物館》のほか、帰途、名古屋にも途中下車して、物語絵巻の企画展を行っていた《徳川美術館》で、さまざまな源氏絵を鑑賞しました。宿舎では、ゼミ生それぞれが調査してまとめたレポートの合評会を行いました。このほか、東京都内で開催される博物館や美術館などの展示にも、みんなでよく出かけるそうです。

「高校生の時から、『源氏物語』を学びたいと思って法政に入学しました」という出口聡美さん(3年)は「熱意と優しさのある先生ですね」と話します。そんな“源氏愛”にあふれる加藤准教授は、学生に、「『源氏物語』全巻を“大人買い”してボロボロになるまで読みなさい」と、勧めるのだといいます。「自分の『源氏物語』を持っていれば、その折々の思いを書き込むこともできます。また、何度も何度も読み返すのが『源氏物語』の楽しみ。若いころには気付かなかった奥深さを、歳を経て発見できることもあります」と話します。

2年間のゼミを経た4年生は、卒業論文の制作に取り組んでいます。なかには、「平安時代は太っている女性の方が美人だった」という通説に疑問を抱いて再調査し反論するなど、ユニークな着眼点で『源氏物語』に取り組んでいる学生もいるそうです。