ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

食料問題に向き合う(社会学部 島本美保子ゼミ「演習I」)

  • 2009年09月29日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2009.09.29
学部研究発表会に向けグループで討議

島本教授ゼミでは「世界の食料問題」を大きなテーマに学年別(2~4年)にゼミ授業を行っています。このうち2年生の「演習I」では、食料問題の現実や社会的背景を把握し、各々が問題意識を培っています。入ゼミしたばかりの前期は、政治経済学者で社会運動家のスーザン・ジョージ氏の著書『なぜ世界の半分が飢えるのか』を毎週全員がレジュメを作成しながら輪読しました。「ゼミ生には、社会を俯瞰(ふかん)しつつ問題の本質をとらえ、理解する力を身につけてほしいと思っています」と島本教授。発展途上国の食料問題を訴えた同書を読んだ学生たちは、さまざまな課題や疑問を抱きました。

夏休み明けの9月下旬の授業では、12月に行われる社会学部の学部研究発表会に向けてのグループワークを行いました。2~5人ほどの小グループに分かれ、テーマ研究を進める作業です。事前に集め、目を通してきた文献を持ち寄り、諸問題を理解し提言していく方向性などを語り合いました。社会学部ではこの発表会に力を入れており、各ゼミが日々の研究成果を発表し、学部中で盛り上がる一大イベントとなっています。

安達亮太さんと松本進さんは食料貿易に着目。「WTO(世界貿易機関)やFTA(自由貿易協定)などを中心に考察し、貿易から食料問題を論じてみたい」と熱い思いを胸に話し合いました。一方、アフリカの食料問題をテーマに掲げるグループの小野将樹さんは「(問題を)知らない人にどう伝えるかを意識しながら取り組みたい」と意欲的です。得意の英語を活かした英文資料の読解などでは仲間たちから大いに頼りにされています。

島本教授は、各グループの討議を優しく見つめながら、日本の農業や、学生たちがよく利用するファストフードのハンバーグ用の輸入牛肉の背景などの雑談を交えながら、さまざまなアドバイスを行っていました。

  • 互いに高めあうグループワーク
  • ゼミ授業の様子

仲良くも硬派なゼミ活動

初めての稲刈り体験

初めての稲刈り体験

「先生は温厚で、食料問題をわかりやすく説明してくれます」と話すのは田中和輝さん。問題の複雑さや根深さを理解するには、社会制度や歴史からのアプローチも重要。資本主義や社会主義にも興味を抱き学んでいるそうです。女子学生にとっては島本教授の知性や美意識の高さも憧れだといいます。岡村亜紀さんは「ゼミで学べば学ぶほど、社会を変えていくために、自ら何か行動したくなります」と口にします。

9月中旬には、夏合宿で尾瀬を訪れました。地元の農家の協力を得て、春にも田植えを手伝った田んぼで稲刈りを体験しました。ゼミ生のほとんどは都会育ちで土に触った経験はありませんでしたが、豊かな稲の実りを実感しつつ、初めての作業で心地よい汗を流してきました。このほかにも、採りたての野菜を味わうなど収穫の喜びを実感したことは、日本の農業を理解するうえでも役立ったはずです。

3年生の「演習II」では、より専門的な複数の研究書をハイペースで読み込みながら、個々の学生がテーマを見つけ論文を作成します。さらに4年生の「演習III」では、ゼミ活動の集大成として、学術的な論文の体裁を整えた卒業論文(2万4000字以上)を書き上げます。食料問題だけでなく、島本教授の専門である林業や林産物をテーマに論文を作成する者もいるといいます。

「ゼミは一人ではできない学習をする場。仲よく楽しく意義のある研究をしてもらいたいと思っています。キャリアこそ違いますが、私も一人の人間としてゼミ生に向き合っています」と島本教授。目指しているのは社会と自ら向き合える知性や論理性を、信頼で結ばれた仲間と楽しく養うゼミ活動です。