ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

イギリスと日本の政治をみつめる(法学部 寺尾方孝ゼミ)

  • 2009年09月07日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2009.09.07
政策はどう決定されているのか

寺尾教授の専門はイギリス政治。イギリスでは日本と同じ議院内閣制をとっており、ゼミでは両国の抱えるさまざまな政治問題・課題を比較しながら研究しています。「イギリスは議院内閣制が生まれた国。(それぞれ違いはあるので)日本と比較してどちらがいいとは言えませんが、時代を経て成熟したイギリスのシステムや政策決定過程に学ぶことは多いと思います」と小田敏成さん(3年)は話します。

ゼミでは2年生と3年生が一緒に学んでいますので、例年、前期はイギリス政治に関する日本語文献を輪読することから始め、制度に理解を深め、問題を認識します。後期はイギリス政治を論じた英文テキストを翻訳しながら、同時に各人がそれぞれのテーマでゼミ論文(8千字?1万2千字程度)の作成を進めていきます。

「同じ議院内閣制をとっていても、イギリスでは内閣委員会(Cabinet Committee)が政策決定に大きく機能しています。両国の官僚の在り方などにも着目してほしい」と寺尾教授。本学で30年余の長きにわたり、和やかに学生と接し続けてきた寺尾教授は学生たちからも「優しい」「寛容」と評判です。「最近の学生は、ちょっとおとなしいかな」と微笑みながらも、学生の積極性を引き出すべく、授業中さまざまな議論を投げかけます。時には、映画を見て、それを議論の素材にすることもあるそうです。

ゼミ生たちは皆、仲が良く、合宿などのイベントにも熱心です。今年5月には寺尾教授の自宅でバーベキューを行い、盛り上がりました。合宿も年に数回開催。6月の合宿ではディベートなどで活発に活動。8月に三浦セミナーハウスで行った合宿では、先生を囲んで、いつも以上に夢中になって語らいました。

  • 夏合宿での討議風景(今年8月)
  • バーベキューで記念撮影

政権交代に関した多様な問題を討議

意見が飛び交う授業風景

意見が飛び交う授業風景

前期の輪読テキストに取り上げたのは『イギリスの政治 日本の政治』(98年発行)と『政権交代論』(09年発行)の2冊の新書。いずれも政治学者の山口二郎氏の著書です。担当者がレジュメを発表し、全員で討論する一般的なスタイルですが、素朴な疑問もざっくばらんに、かつ学術的に討議できるのが寺尾ゼミの特徴です。両書の発行間の約10年は、学生たちが物心つき、日常生活を通じ法や政治に興味を培ってきた時代と重なります。ここ数年の自民党政権の混迷、民主党の政権担当能力、国政と地方行政の在り方、財源・・・、多様な観点からゼミ生たちの意見交換が行われ、寺尾教授の補足説明にうなずきながら納得する姿が見られました。

政権交代がたびたびあり、官僚は新政権に忠実に仕えるといわれるイギリスにおいても、「マンダリン・パワー」(官僚の権力)がしばしば語られます。政党の政策能力が乏しく官僚支配の強い日本において、はたして民主党への政権交代では、官僚権力の打破が可能となるのでしょうか。

後期には選挙キャンペーンや政府・政党の宣伝活動とメディアの関係を、英書を使って議論する予定です。毎年、ゼミ生は和訳に必死になって取り組みます。周囲から積極的な発言が多いと評判の鈴木彰康さん(2年)は「イギリスに興味があり寺尾ゼミを志望しました。いろいろなものを共有できるのがゼミの良さですね。総選挙では政策の具体性やマニフェストの内容を判断材料にしっかり見つめました」と力強く話します。

授業中は、司会進行役としてみんなをリードするゼミ長の石坂喜和さん(3年)は「ゼミは心地よい居場所ですね。個性豊かな仲間と理解ある先生に囲まれています」と話します。政治などにも興味が高く、学生の立場ながらさまざまな“橋渡し役”として社会コミュニケーションを図っているそうです。「大学生の4年間は、人生においてもとても貴重な時間です。学生には、自覚と高い意識を持って勉強してもらいたい」と寺尾教授も学生に大いに期待しています。