ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

人と環境(人間環境学部 西城戸誠ゼミ)

  • 2009年08月10日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2009.08.10
市民による実践に着目

西城戸准教授ゼミでは、社会調査の基本的な方法論を学ぶために積極的なフィールド調査を実施しています。「ゼミの最終的な目標は、学生が自らの関心をもとに『自分で調べて、考え、論文を書く』ことです」と西城戸准教授。「論文にまとめることを常に意識しながら、フィールドワークを通じて、企画力、実行力、プレゼンテーション能力、仲間との協調性、責任感などを養ってほしい」と期待をかけます。

2~3年生は本学が事業協力協定を結んでいる東京都日野市や、多摩川流域を研究フィールドに、“人”と“環境”とのかかわり方を見つめ直し、その関係性の再構築を目指すために、特に市民による実践(市民活動・NPO・ボランティア)に着目した各種調査研究を実施しています。

このうち日野市では数グループに分かれテーマ別に調査を行っています。幾島野枝さん(3年)と嶋田有紀子さん(2年)は“仲田の森”(旧・養蚕試験場跡地)と呼ばれ保存と開発で揺れている緑豊かな地域で活動する諸団体を調査対象としています。前年に引き続き調査を行う幾島さんは「人に話を聞くのはとても勉強になります。複数の団体のかかわりにも着目しています」と話します。一方、嶋田さんは「文献を読むだけでなく、現地を訪ねて初めて分かることは多いですね」と後期からの本格的な調査に期待を膨らませます。普段は土日を活用して調査していますが、フィールドを多角的に見る西城戸准教授の教えは、学生にも大きな刺激を与えています。

前期授業ではまた、関連文献として環境社会学者の嘉田由紀子滋賀県知事の著書などを輪読しました。ゼミ生たちは仲が良く、環境問題を学ぶ上で欠かせない環境政策などにも高い関心を持っています。

  • 日野市内の調査の様子(09年4月)
  • 2年生と3年生の合同授業

論文作成と身近な実践

より深い討議を行う4年生の授業

より深い討議を行う4年生の授業

4年生のゼミ授業では、それぞれのテーマに基づいた「研究会修了論文」の準備・検討のほか、社会学的資料の輪読を行っています。7月初旬の授業では行政と市民とのコミュニティーとパートナーシップに関する論文を輪読しました。担当者がレジュメを発表、西城戸先生が補足説明などを行い、みんなの理解を確認してから問題についてディスカッションする流れは、2・3年生のゼミと同様ですが内容はより深いものになっています。

個人的なボランティア活動などを通じ、自治体の職員などと接した経験のある学生などからも、コミュニケーションの理想と現実などについて幅広い意見が出されました。西城戸先生は1970年代ごろからの歴史的経緯や、都市部の自治体と地方の自治体の実態などについて学生に説明、「表面的な解釈だけではなく、深く関心を持ったうえで、自分で調べ考えなさい」とゼミ生を励ましました。

貴島ゆう香さん(4年)も「本当に頭を使うゼミです。先生はするどく、発言にすきがあると指摘を受けることもあります」と授業中の心地よい緊張感を説明します。一方、新潟県上越市出身の近藤健太さん(4年)は、新潟市西蒲区(旧巻町)のワイン農家に着目し、現地調査や資料収集などを行い論文作成を進めています。「国内他産地との比較をまじえ、ワイン産業を社会学的に考察したいと考えています」と話します。

社会における環境問題への関心は日々高まっていますが、「実践こそ大切。大きな理想を語るだけでなく、例えば、身の回りのことからでも、自ら汗をかいて実践してほしい」と西城戸准教授は強調します。多彩なフィールドで東奔西走する先生をお手本に、ゼミ生たちは意識を高め、実践的な活動を行っています。