ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

古代ロマンと真実(文学部 史学科 小口雅史ゼミ)

  • 2009年06月29日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2009.06.29
日本の原点を探り、訪ねる

小口教授ゼミでは主に「日本の北方史」「正倉院に残されている農民や末端役人が記した古文書の解読」「中国の律令制度が東(日本)と西(トルファン)でどのように波及・受容されていったのか」の3テーマから日本の原点を探る研究を進めています。学生たちが歴史に魅せられた理由はさまざまですが、「千年以上前の史料を読むのは興味深いですし、それを読むことによって現代に生きていることを実感します」と話すのは桑村知佳さん(3年)。学生たちを優しく見守る小口教授は「歴史を解き語るには、古い時代であればあるほど、史料の少なさを補う想像力のみならず論理的思考や頭の回転が求められます。毎朝起きたら仮説を立てるぐらい夢中になり、古代史のロマンに浸ってほしい」と熱く語ります。

授業は事前に予習・準備したリポーターが発表し、先生が質問をかぶせ皆で討論するスタイルです。発表レジュメは電子データで提出され、それを大画面に投影し小口教授がペンタッチ可能なパソコンで即座に赤ペンを入れていきます。読み下し方や辞典の引用などにも厳しくチェックが入ります。この日(6月中旬)の授業でも古代律令制下における農村の租税システムや、衣服令について真剣なやり取りが行われました。「先生から厳しく指摘されることもありますが、原典や写本にあたるのは楽しい作業です」と新里ひとみさん(3年)。「ひとつの単語も調べていけば、とても奥深さを感じるのが歴史の魅力です」と鶴岡真衣さん(3年)も話します。

普段は机上の討論が中心ですが、夏休みにはフィールドワークを兼ねた合宿旅行を行います。昨年は北海道の末期古墳や史跡などを回りました。

  • 08年に訪れた北海道式古墳(千歳市)で
  • 充実した発表と討議が行われるゼミ授業

歴史は日独の学生を魅了

ベルリンの日本食レストランでドイツの学生と語り合う

ベルリンの日本食レストランでドイツの学生と語り合う

ゼミ授業は週1度ですが、それ以外に大学院生がまとめ役となったサブゼミと呼ばれる勉強会を週に2度行っています。効率的な史料検索の方法や、説得力があり分かりやすい論文の書き方などを身に付け、専門性を高める場ともなっています。「院生の方々のアドバイスは的確です。受験では『歴史は覚えるもの』でしたが、学べば学ぶほど、さらに真実を知りたくなるのが古代ロマンです」とゼミ長の松村尚さん(3年)は目を輝かせます。

個人的なテーマを追求している院生たちも、週に一度夜の授業で集まり、小口教授を囲んでいます。今年度のテキストは『令集解』と『トルファン文書』の講読。古代蝦夷について研究を進めている永田一さん(博士後期課程)は、「社会人院生の方も多く、それぞれの着眼点は興味深いものです。討論の質も高いのが特徴です」と話します。

小口教授は、ベルリン・フンボルト大学の客員教授として、毎年秋に現地で日本史の講義を行っています。ドイツの意欲的な学生たちにも日本の古代中世史の魅力を伝えるとともに、ドイツに収蔵されているトルファン文書の研究にもあたっています。

このほか、研究室では小口教授が中心となって北方史に関する文献のデータベースも作成し、本学国際日本学研究所サイトで公開しています。また17万件以上をカバーした日本古代史の汎用データベースも試験的に運用、学生の研究サポートに大いに役立っています。