ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

炎とエネルギーの未来(理工学部 川上忠重研究室)

  • 2009年06月22日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2009.06.22
燃焼を追求し、環境にも貢献

<理工学部は2008年に開設。4年生の所属は工学部機械工学科、院生の所属は工学研究科機械工学専攻>


川上教授の「エネルギー変換工学研究室」ではガソリン機関やディーゼル機関をはじめとする各種内燃機関の燃焼生成物(二酸化炭素、一酸化炭素や窒素酸化物、未燃炭化水素など)の低減に関する研究や、燃焼方法改善による超希薄燃焼(通常では燃焼の継続的な維持が困難な状態での燃焼)を実現するために燃焼の能動的制御(燃料を超微粒化した液滴燃焼や微小重力環境などを積極的に利用)に関した研究を行っています。

「責任感を培うため研究は1人1テーマ。悩むこともあるでしょうが、リーダーとして取り組み、自己提案できる人材に成長してほしいと願っています」と川上教授。紅一点の丹治香奈子さん(修士1年)はCHEMKIN(ケムキン)というソフトを使いエンジンを動かす際の化学反応シミュレーションに取り組んでいます。「排気ガスを低減させるべく、数値を変えながら化学反応を解析し、データを収集しています」と声を弾ませます。

海外学会参加にも積極的です。6月下旬にポーランドで開かれる学会で、乳化植物油と軽油燃料を用いた『小型ディーゼル機関の燃焼生成物低減に関する研究』について発表する中島良太さん(修士2年)は「研究の7割はエンジンを回しての実験でした。論文作成にも力が入りました。世界の研究者を前にした英語での20分の論文発表が楽しみです」と意欲満々です。

研究室には、自動車メーカーなどで技術開発に携わっているOB・OGが技術交流で訪れることも多く、外にも広く開かれています。また、海外からの留学生も参加。中国・上海出身で現在研修生の袁承さんは「川上教授の論文を読み、機械、エネルギー、燃焼、環境意識などを学びたいと来日しました」と早くも習得した日本語で流ちょうに話します。修士課程に入ることを目指し、すでに研究にも携わっています。

  • 超希薄メタン‐空気混合気の多様な火炎挙動
  • 燃焼実験に用いる対向型急速圧縮装置

開発・研究に打ち込む若き情熱

08年のHondaエコノパワー燃費競技大会の様子

08年のHondaエコノパワー燃費競技大会の様子

和気あいあいとした雰囲気と皆が口をそろえる川上研究室ですが、研究に関連したディスカッションとなると、川上教授を含めて、がぜんヒートアップします。現在、環境への配慮が地球規模で叫ばれていますが、高いプライドと強い意志で効率的な燃焼、有害排出物の低減などの課題に挑んでいる学生たちのアプローチによる、次世代型の内燃機関開発への貢献が期待されています。

機械と燃焼といえば、まず思い浮かぶのがエンジン。川上研究室では毎年、「Hondaエコノパワー燃費競技大会」(エコラン)に、院生と4年生が組んで参加します。エンジンや車体を開発しながらチームマネージャーとして活躍する4年生にとっては、燃料消費率に挑むこの実践的な取り組みが卒業研究の一環となります。

08年度のエコランに4年生として参加し、エンジン開発にあたった田中直樹さん(修士1年)は「希薄燃焼では点火させるのも一苦労。細かい調整や電装系のセッティングに知恵を絞りました」と話します。一方、車体開発を担当した茂木卓さん(修士1年)は「丈夫で硬いカーボン車体の加工が大変でした。レース直前は毎日皆で遅くまでディスカッションしながら作業に熱中しました」と話します。ノウハウを後輩に伝え、今年度は、エンジンのさらなる燃焼効率化やカーボン車体の車高調整など改良を施し、より上位を目指すそうです。

一言で炎といっても、燃料の性状や濃度、圧力によって、形状や伝ぱ速度はさまざまだといいます。乱れがあったほうが燃えやすいなど興味深い事象もあります。日々、各種原動機や実験機器の炎を見つめている学生たち、その目に宿る若き情熱の炎も負けず劣らず煌々と輝いています。