ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

医薬品につながる物質の有機合成を効率化し同時に、環境負荷の少ない「グリーンケミストリー」の実現をめざす(生命科学部 佐藤耕一准教授研究室)

  • 2009年01月20日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

自由な雰囲気の中で個々の研究テーマを追求

佐藤耕一准教授を囲む研究室のメンバー。このほかに、就職活動中の大学院1年生が2人所属している。

佐藤耕一准教授を囲む研究室のメンバー。このほかに、就職活動中の大学院1年生が2人所属している。

研究室が追求するテーマは大きく2つあります。1つは、医薬用アズレン誘導体の合成です。アズレンは、抗炎症・抗潰瘍などの穏やかな薬理作用を持つ物質で、うがい薬などに用いられています。カモミールなどの植物精油に含まれ、その存在自体は古くから知られていましたが、構造が確定したのは戦後のことです。さまざまな薬理作用をもつアズレン誘導体の合成は、従来の方法では副生成物が多く、収率が悪いのが欠点でした。「そこで、何段階も必要だった合成プロセスを、1つの反応容器で1回で済ませる研究を進めています。特殊な触媒を発見できたことが大きいですね」と佐藤耕一准教授は語ります。

実験を指導する佐藤准教授。アズレン誘導体の合成では、合成が進むにつれて色が変化していくのが特徴だ。

実験を指導する佐藤准教授。アズレン誘導体の合成では、合成が進むにつれて色が変化していくのが特徴だ。

研究に携わる4年生からも、「触媒や溶媒などをさまざまに変化させながら、生理活性作用が予測される目的物質の収率を高める合成実験を続けており、日々、化学の研究をしているという実感があります」(池谷英太郎さん)と、意欲的な声が聞かれます。

もう1つの研究テーマは、有機合成のグリーンケミストリー化です。グリーンケミストリーとは、有害な化合物を作ったり廃棄しないようにできるだけ環境負荷が少ない化学合成を意味します。アズレン誘導体の合成は、一般に有機溶媒中で行われますが、佐藤研究室ではそれを水中で行おうとしています。

「合成にはアズレンのほかに2、3の成分が必要ですが、それらの水に対する溶解性の有無が、水中での生成物質や収率の変化にどんな影響を与えるのかを研究しています。これがグリーンケミストリーの進展に貢献できればうれしいですね」(小津匠さん)とのことです。


 
装置はいずれも机に乗るような大きさで大丈夫。小規模施設で、大量の合成を行うマイクロリアクターの夢も膨らむ。

装置はいずれも机に乗るような大きさで大丈夫。小規模施設で、大量の合成を行うマイクロリアクターの夢も膨らむ。

佐藤研究室には現在、大学院生3人、4年生7人が所属しており、和気あいあいとした自由な雰囲気が漂っています。「実験の過程で、想定しうる可能性の検証を怠ったりすると、厳しく指導されますが、それ以外では佐藤先生はとてもフレンドリー。そのためか、ゼミ生の一人ひとりがそれぞれに個性を発揮しています。この人たちに出会えて、本当によかったと感謝しています」と語るのは寺田美沙さんです。

この雰囲気は脈々と受け継がれているようで、OB・OGとの交流も盛んです。春、夏の合宿には多くのOBが参加するといいます。「4年生の卒業研究は、大学院の先輩からのアドバイスで進めていますが、その先輩たちも、現在のOB・OGの方たちから指導を受けてきました。こうしたOB・OGの方たちも含めた先輩たちと、就職や恋愛のことなども含めてフランクに話せる環境が、最大の魅力だと思います」と、ゼミ長の松葉祐和さんは語っています。

(雑誌「法政」2009年1・2月号より)