ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

若者のチカラ(社会学部 樋口明彦ゼミ)

  • 2008年11月24日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2008.11.24
インタビューと地域調査が意識を高める

コミュニティ社会学を大きなテーマに掲げる樋口准教授のゼミでは、地域や若者問題をはじめ、コミュニティが内包するさまざまな課題や社会問題に注目し、多角的に研究しています。

2年次の課題は「インタビュー集」の作成。NPOの方などを招き年間数回インタビューを行い、それを共同でまとめます。「最初は(録音した会話を文章にする)テープ起こしが苦痛だった」という菅原崇さん(2年)ですが、作業を通じ、効果的な質問の仕方や校正の大切さが理解できたと話します。「都市部におけるアートを用いた振興や、人口流入増を意識した施策への興味が膨らんできました」と意識も深まりました。

3年次になると、各自が思い思いのテーマで学外の地域調査(フィールドワーク)を実施します。今年の調査地は横浜。その横浜に住んでいるという萩田薫さん(3年)は“農”に着目しました。「農業をめぐる今の日本の現状は極端すぎると感じています。フードマイレージなども考慮し都市化と農業、市民コミュニティが両立する形を探ってみたい」と調査を進めています。一方、「子ども好き」を自負する篠崎隆道さん(3年)はいじめやひきこもり、ニートなどの考察に継続的に取り組んでいます。「現場の声は対象者に直接、自分で聞いてこそ分かるもの。インターネットなどでは伝わってはきません」と精力的に足を運び続けます。

時に失敗しつつも自ら考えることに真摯に挑むゼミ生たちを、喋り好きで気さくな樋口准教授は、励ましながら、優しく見守っています。授業は基本的に学年別に展開しますが合宿などは一緒。学年の隔てなく仲がよく、学ぶときは学び、遊ぶときは遊ぶのがゼミのモットーです。

  • 横浜市市民活動支援センターの訪問調査(3年生)
  • ゲストを招いたインタビュー(2年生)

仲間、そして誠意を持つ大切さ

今年9月に行った北海道のゼミ合宿で(2・3・4年生合同)

今年9月に行った北海道のゼミ合宿で(2・3・4年生合同)

「データを集め論証する経験は大学でしか出来ないこと。生きている限り必要な“批判する力”をゼミで培ってもらいたい」と樋口准教授は話します。そして、社会の協力を得て、完成した学生たちのインタビュー集や論文など研究の成果もゼミのホームページなどで積極的に公開しています。

毎週行われるゼミ授業で、月に数度回ってくる各々のテーマの中間報告発表は学生たちの地道なトレーニングの場。レジュメをまとめ、決められた持ち時間内で説得力のある発表を行い、先生やゼミの仲間たちからさまざまな指摘や質問を受け、きちんと答えていく過程でゼミ生たちは成長し、論文の方向性を固めていきます。オリジナリティを持ちながらも、“人に読んでもらえる文章”を書く意識にも目覚めます。

年度末に提出するゼミ論文は学年を経るごとに文字数が増え、集大成の卒業論文では最低3万字が求められます。高橋香さん(4年)は、ひきこもっていた若者が再び社会参加する過程での“就労”に焦点をあてた卒論の作成中です。「ゼミでは外部の多くの人とも出会い、刺激を受けることで成長できました。常に誠意を持ってあたることの大切さも学びました」と話します。

ゼミ授業以外でも夏休みなどを利用してNPOや行政機関などのインターンシップに参加する活動的なゼミ生も少なくありません。高橋さんも2年生の時に子どもを対象としたケニアでの国際NPOボランティア活動に参加しました。4年生たちは一般企業に就職が決まっていますが、将来的にはゼミの関係者でNPOを立ち上げたいといった夢を語ることもあるそうです。社会支援の意識も確実に育まれています。