ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

声なき声を聴き続ける(現代福祉学部 伊藤正子ゼミ 専門演習I)

  • 2008年10月27日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2008.10.27
体験を共有して、皆で社会福祉援助について考える

高齢化社会をはじめとした近年顕著な社会構造の変質を背景に、保健・医療福祉が大きな注目を浴びています。医療ソーシャルワーカーから教員に転身した経歴を持つ若き研究者である伊藤准教授のゼミでは、保健・医療・福祉の各領域における問題の研究や実践的な社会福祉援助活動に取り組んでいます。

毎週のゼミ授業は学年別に展開しており、2年生は16人が所属。「医療に関心深い学生も多く、活発に活動しています。学生には問題の本質を見極める目を持つことを求めています」と伊藤准教授。「優しく、経験豊かな伊藤先生と気心の知れた仲間と一緒に、社会福祉をしっかり学べます」と玉虫信貴さんは話します。

10月初めに行われたゼミ授業では、夏休みに厚生労働省医政局指導課で2週間のインターンシップ(体験就業)を体験した土肥由紀恵さんのパワーポイントを用いた報告が行われました。

政策立案に関わる検討会や大臣会見の見学、事務や調査サポートなど貴重な体験を得た土肥さんの目に映ったのは「とても大きな組織」でした。たとえば、政府が進める『療養病床削減』をとっても、医政局の『医療計画』のほかに3部局の計画や構想がからんできます。客観的な学生の目で「いっそうの(省内)組織的連携の必要性を感じた」と話します。一方、どんな質問にもていねいに答えてくれた職員の方々への強い感謝を抱きました。

土肥さんは理解を深めた二次医療圏構成や在宅医療についても行政用語をわかりやすい言葉に変えながら説明。ゼミ生たちは土肥さんの体験を共有し、率直な感想や、政策に対する意見を交わしました。現在、医療紛争の仲介役として注目を浴びる“医療メディエーター”という新職種についても論議は弾みました。

  • 優しい伊藤先生を中心にまとまった伊藤ゼミ
  • 厚労省でのインターン報告とディスカッションを行った授業

実践的なフィールドワークが広い視野を培う

薬害・医療被害をなくすための交渉現場にもオブザーバーとして参加(右側後列がゼミ生たち)

薬害・医療被害をなくすための交渉現場にもオブザーバーとして参加(右側後列がゼミ生たち)

ゼミでは、保健・医療制度が不充分な領域や、福祉サービスから漏れた人々の実態を理解するために、医療被害者と厚生労働省の交渉現場へのオブザーバー参加や、工場などで働くアジア系の外国人労働者の健康診断のサポート、中小企業の労働現場や労災の実態把握など、年間を通して多様で活発な学外フィールドワークを行っています。「最近では学生のアルバイト先も飲食店や販売職などが多い。福祉対象者の多様な労働・生活問題を理解するために、国内外を問わず社会に対して広い視野を持ってもらいたい。その1つの機会として、実践現場や当事者と出会うフィールドワークへの積極的な参加をすすめています」と伊藤准教授。

「厚労省交渉への参加など貴重な体験ができる伊藤ゼミに入って本当に良かった」と話すのは石川愛奈さん。現代福祉学部は、さまざまな福祉系サークルに参加する学生が多いのも特徴ですが、石川さんも多摩キャンパス近くの、めじろ台地区での高齢者への福祉活動に熱心に取り組んでいる行動派です。

生涯を通した友情を築くこともできるのが学生時代。“絆”を大切にする伊藤ゼミでは懇親行事も豊富です。顔合わせも兼ねた恒例の春のバーベキューは毎年、大いに盛り上がります。また、9月に河口湖で実施した夏合宿では、伊藤先生が腕を振るった特製の“辛?い”カレーが大好評だったといいます。ゼミ長の山口義法さんは「楽しむ時と、まじめに学ぶときと、メリハリがあるゼミです」と結束の強さを強調します。

学生たちは、3年次にはさらに専門へのアプローチを深め国内外の事例研究や当事者への社会福祉援助のあり方などの理解を進めていきます。4年次には、個々のテーマで卒業論文を作成します。学生たちはゼミ活動を通じて、福祉へのそれぞれの熱き心を培っていきます。